大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

走りと独り言

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太陽が空高くのぼり、日差しがかなり強く照り始めた昼頃。
何度目かの休憩を挟みつつ、丁度いいかと巾着から食糧と水を出す。
あれから暫く走っていたが、魔獣とはそこまで遭遇しなかった。俺がとんでもない速度で走っていたのと、出来るだけ避けて走っていたのもあるが。
あぁそうだ、そして問題が一点。マキナにストックしてあった血がついに無くなった。
ついこの前の山羊の狭間と戦った時に随分と使っていたから、こうなるのは予想出来ていたのだが、まさかここまで早いとは思っていなかった。
とは言え、身体の方も結構ガタが来てたから、これ以上の血界の連続使用は避けたいところだったし、丁度いいと言えば丁度よかった。強化系の血界は身体の負担が大きいからな。
「あとどのぐらいだ」
『聖学まで・およそ百十キロです』
遠いな…半分すぎたぐらいか。
……よし、行くか。
金剣を握って身体を軽く。それでも重く感じ始めた身体をスキルで引っ張るように動かす。
マキナのサポートもあって疲労は感じにくいが、それでもやはり全くとはいかない。
しかし、走るだけというのも暇だ。そのせいで頭の中でどうでもいい事ばかりが再生され、次々消えていく。
…早いところ戻りたい。最低限、夕暮れまでにメッセージの届く範囲に行きたいのだが…確か、メッセージの有効範囲は直径十五キロだったか二十キロだったかの円形のはず。となると九十キロは走らねばならない。キツ。
ふと、前にアゼロスが靴底をタイヤにして走っていたのを思い出して、マキナに出来ないか聞いてみると、無理ではないがやめておいた方がいいと言われた。
というのもこの辺りは砂が柔らかく、タイヤで走ろうものならむしろ足を取られるとのこと。重力魔法で足元を固めながら走ることも出来るが、如何せん今は魔力が足りない。
俺の血を使えばできるが、燃費も悪いし走る当人が貧血になったりすると不味い。万が一の時に血界を使えないのも不味い。
そんな訳で却下された。
こりゃ日没までに聖学へ戻るのは無理だろう。
そう思いつつ走って休んで走って休んで。純粋に身体を酷使することはほとんど無いので、恐らく翌日は筋肉痛になるだろう。
見た目通りかそれ以上に俺って筋力とか持久力無いからな。いつもは髪や装甲で誤魔化していたが…うん、これを機に少し鍛えようかと思う。ただそうなると、どこにどのぐらい筋肉をつけるか考えなきゃならんな。着手にはまだしばらくかかりそうだ。
さて、昼の休憩から数えて二時間ほど走ってからか。
何度目かの魔獣をスルーし、丁度いいとまた休憩していた時だ。
「…ん?」
遠くから土煙が昇っているのが見えた。しかも、明らかにこちらへと向かっている。
方角的には聖学から来ているようだが…はて。俺の位置を知っている奴はいないはずなのだが…用心に越したことはない、よな。
移動用にしていた鎧を戦闘用に変更、金剣を両手で握って戦闘態勢をとった。
さて、誰だ?
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