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本編
死骸と勇者3
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一歩で空いた彼我の距離は、俺の一歩で瞬く間に消え去った。
「!!」
「逃がすかクソが」
貫通したままの銀剣周りの肉をもう片方のの銀剣で削ぎ落とし、残っていた方を回収。さらにマキナをアンカーとして射出、背中に突き立て、一気に駆け上がろうとする。
しかし、相手も黙ってやられはしない。
突如、反射的に耳を塞ぎたくなるような悲鳴を上げた。
すると──べりぃ、と。
いまさっき癒着したばかりの身体の境目から、完全にヒトのものと同じ腕が何本も生え、背中に乗った俺を叩き落とそうとし始める。
「!」
流石にこれを受けるのは不味いと回避を試みるが、如何せん腕の数が多すぎる。
加えて俺の持っている銀剣では、即座に叩き落とすのも難しい。
だから。
「マキナァ!!《刃》だ!」
アンカーを外し、足裏をスパイク状にすることで敵からの攻撃に対処できるようにしつつそう叫ぶ。
『了解しました』
マキナがそう言った瞬間、俺は銀剣の柄尻をカチ合わせるようにぶつける。
ただそれだけで、マキナは完成させたらしい。
『完了しました。《双銀刃》・構築完了です』
「おう!」
そう言って銀剣を上下に伸ばすようにして離す。
するとどうか。柄尻がぴたりとくっつき、以前から不自然だと思っていたナックルガードが柔らかい飴のように曲がり、伸び、双剣がひとつの槍のような姿へと変貌を遂げた。
「行くぞ!!」
裂帛の叫びを上げ、双刃を回転させる。
重さそのものは銀剣の時とほとんど変わらないが、双刃は銀剣と比べてある点で非常に優秀だ。
それは銀剣の時は必須だった力の移動がほとんど必要ないという点だ。
一度回転させ始めれば、発生したエネルギーは双刃の中のみで循環し続け、最終的には俺にすら止められない威力を叩きつけて止まる。
つまり、双刃である間は比較的自由に武器を振り回せるのだ。
もちろん、普通ならこんな雑な扱いをすれば容易く見切られるだろうが、相手は魔獣──いや、魔獣ですらない化物だ。
反射だけで生き続けているモノにはこれでも充分だろう。
「ッッ、ラァ!!」
襲ってきた手に双刃が触れると、パァン!と言う音と共に斬り飛ばされる。
何本も何本も襲いかかってくるが、一度勢いづいた双刃はこの程度では止まらない。
斬って斬って斬って斬って、加速していく双刃を、最後はヤギの身体に突き立てると、突如止めさせられたことによる反動で、俺は上へと飛んだ。
「くっ!」
「ヴェエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああ!!」
「効かねぇつってんだろが!!」
一度止まった双刃を再加速、落下しながら境目に向かって振り下ろす。
だが。
「──!!」
今までの数倍の腕が突如吹き上がるように生え、その膨大な質量で強引に俺を押し返す。
「クソっ!」
ダメージこそないが、吹き飛ばされ、ヤギのすぐ後ろに着地する。
そして着地した所に巨大な拳が上から降ってくる。ヤギの後腕だ。
回避は出来るか?出来ない?──いや!
「第六血界!《血瞬》!」
背中の紋様がまた熱を持った。
使用時間はごく僅かだったが、超速度での回避は成功し、ついでにすれ違いざまに双刃で振り下ろされた拳を滅多斬りにすることに成功した。
が──しかし。
ヤギの腕は斬り終わった時から既に再生が始まっている。
「硬ぇな。いや柔いけどさ」
『ま、そういうものだしな。コイツらってのは』
一秒の無言。
『やれるか?』
シャルが問い。
「当たり前だ」
俺が返す。
「俺を誰だと思ってやがる。お前が育てた《勇者》だぞ?こいつをやるぐらい訳ないだろ」
だからここから先は《勇者》として戦わせてもらう。
『なら任せる。思いっきりやれ』
「おう分かった、任された」
そう言って俺は、双刃を握り締めた。
「!!」
「逃がすかクソが」
貫通したままの銀剣周りの肉をもう片方のの銀剣で削ぎ落とし、残っていた方を回収。さらにマキナをアンカーとして射出、背中に突き立て、一気に駆け上がろうとする。
しかし、相手も黙ってやられはしない。
突如、反射的に耳を塞ぎたくなるような悲鳴を上げた。
すると──べりぃ、と。
いまさっき癒着したばかりの身体の境目から、完全にヒトのものと同じ腕が何本も生え、背中に乗った俺を叩き落とそうとし始める。
「!」
流石にこれを受けるのは不味いと回避を試みるが、如何せん腕の数が多すぎる。
加えて俺の持っている銀剣では、即座に叩き落とすのも難しい。
だから。
「マキナァ!!《刃》だ!」
アンカーを外し、足裏をスパイク状にすることで敵からの攻撃に対処できるようにしつつそう叫ぶ。
『了解しました』
マキナがそう言った瞬間、俺は銀剣の柄尻をカチ合わせるようにぶつける。
ただそれだけで、マキナは完成させたらしい。
『完了しました。《双銀刃》・構築完了です』
「おう!」
そう言って銀剣を上下に伸ばすようにして離す。
するとどうか。柄尻がぴたりとくっつき、以前から不自然だと思っていたナックルガードが柔らかい飴のように曲がり、伸び、双剣がひとつの槍のような姿へと変貌を遂げた。
「行くぞ!!」
裂帛の叫びを上げ、双刃を回転させる。
重さそのものは銀剣の時とほとんど変わらないが、双刃は銀剣と比べてある点で非常に優秀だ。
それは銀剣の時は必須だった力の移動がほとんど必要ないという点だ。
一度回転させ始めれば、発生したエネルギーは双刃の中のみで循環し続け、最終的には俺にすら止められない威力を叩きつけて止まる。
つまり、双刃である間は比較的自由に武器を振り回せるのだ。
もちろん、普通ならこんな雑な扱いをすれば容易く見切られるだろうが、相手は魔獣──いや、魔獣ですらない化物だ。
反射だけで生き続けているモノにはこれでも充分だろう。
「ッッ、ラァ!!」
襲ってきた手に双刃が触れると、パァン!と言う音と共に斬り飛ばされる。
何本も何本も襲いかかってくるが、一度勢いづいた双刃はこの程度では止まらない。
斬って斬って斬って斬って、加速していく双刃を、最後はヤギの身体に突き立てると、突如止めさせられたことによる反動で、俺は上へと飛んだ。
「くっ!」
「ヴェエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああ!!」
「効かねぇつってんだろが!!」
一度止まった双刃を再加速、落下しながら境目に向かって振り下ろす。
だが。
「──!!」
今までの数倍の腕が突如吹き上がるように生え、その膨大な質量で強引に俺を押し返す。
「クソっ!」
ダメージこそないが、吹き飛ばされ、ヤギのすぐ後ろに着地する。
そして着地した所に巨大な拳が上から降ってくる。ヤギの後腕だ。
回避は出来るか?出来ない?──いや!
「第六血界!《血瞬》!」
背中の紋様がまた熱を持った。
使用時間はごく僅かだったが、超速度での回避は成功し、ついでにすれ違いざまに双刃で振り下ろされた拳を滅多斬りにすることに成功した。
が──しかし。
ヤギの腕は斬り終わった時から既に再生が始まっている。
「硬ぇな。いや柔いけどさ」
『ま、そういうものだしな。コイツらってのは』
一秒の無言。
『やれるか?』
シャルが問い。
「当たり前だ」
俺が返す。
「俺を誰だと思ってやがる。お前が育てた《勇者》だぞ?こいつをやるぐらい訳ないだろ」
だからここから先は《勇者》として戦わせてもらう。
『なら任せる。思いっきりやれ』
「おう分かった、任された」
そう言って俺は、双刃を握り締めた。
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