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本編
黒山羊と緋眼騎士2
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仕掛けるのはやはり俺。
対する魔獣は警戒心を顕にしつつ睨めつけるのみ。
「オオオオッ!!」
装填するのは炎の魔法。
夜闇の中でも、いや、だからこそ煌々と燃え上がる炎は、剣の形をした瞬間により一層強く輝く。
狙いは奴の腕。先程切りつけた箇所だ。
「!!」
それを察したのか、魔獣が即座に後ろへ下がる。
その巨体に見合わないバックステップはあっという間に俺の間合いから離れてしまう。
「くっ!そっ!」
魔獣は大きく下がった後、ぐっと姿勢を低くする──いや、あの動きは姿勢を低くしているのではない。突進の予備動作だ。
ガリガリと荒野に指を立て、踏ん張って力を貯める魔獣。
一体どれほどの速度が出るのか分からないが、普通に受けて良いものでは無い。
そして突進攻撃の嫌な所は、一度勢いづけば止めるのは容易ではないという事だ。もちろん、それは相手の質量に比例して難易度も跳ね上がる。
だから俺に取れる行動はただ一つだけだった。
「がああああああ!!」
マキナに貯蔵してあった血のストックを解放、約一割を消費して第二血界、血呪を発動。
これにより身体能力を爆発的に上昇させ、今まさに身体を撓めて力を貯めている魔獣に一瞬で追いつく。
「!?」
下段に構えた炎の剣が地面と触れて石を焼き、砂利を溶かし、赤の線を引きつつ魔獣に肉薄する。
「お、お、おお、おおおお、オオオオオオオオ!」
最初の一撃の傷跡をなぞり、焼き抉るように炎剣が走る。
炎は先から魔獣の中へと滑り込んでいき、内側からその腕を焼き尽くす。
飛び上がりながら振り抜く頃には剣の炎は消え、剣の柄だけが残っていた。
「ヴェエエアアアアアアアア!!」
「まだだ!!」
左腕からマキナを鞭のように伸ばし、空中でヤギ魔獣の角に巻き付けて飛び上がる。
本来ならそのまま首の辺りに降りるはずだったが、流石にそこまではさせてもらえない。
途中で振り回され、上空に放り投げられる形になる。
「くっ!」
下を緋眼で見ると、魔獣が恐ろしいまでの憎悪を燃やしながら睨みつけていた。
「ヴェエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアああああああああああああ!!」
魔獣がまた、吼えた。
一瞬身体が鈍くなりかけるが、止まることも無く、鈍くなった感覚はコンマ一秒と経たずに元に戻る。
『解析完了。聴覚情報から・全身に・異常をきたす・特殊な咆哮であると・断定。ノイズキャンセリングの・応用で・打ち消しました』
「よくやった!」
よく分からんがマキナが対処したらしい。
一方、相手も上空で俺が固まらなかったのを見て気づいたらしく、首をゆるゆると二度横に振った。
すると、額にあったヤギの角が鋭く尖り、鬼のような角へと変貌した。
なんの魔獣なのかという疑問が再び鎌首をもたげかけたが、その思考を振り切って剣の柄を大きく振りかぶった。
選んだのは残った水の聖弾と土の聖弾の混合聖弾。一度使った二色混合聖弾の中では最も一撃の重さが高かった物だ。
二種類の聖弾が混ざり合い、黒い巨大な刃を形成。
まるで黒曜石をくり抜いて作ったような見た目だが、よく見ると刃には波紋が生まれており、その刃が液体で出来ていることが分かるだろう。
そして、この刃の一撃に、俺の戦技を乗せる。
「《破断》!」
赤いオーラが身体を包み、大上段から大剣を振りかぶった。
魔獣は絶叫しながら落ちてくる俺を迎え撃つ。
下から上へ突き上げる勢いは、腕を一本失ってもなお凄まじく、真正面から受ければマキナを貫いて俺の腹に風穴を開けるだろう。
だが──こちらの方が早いし長い。
「ッ、ラァッ!!」
──その黒刃は水のように姿を崩し、音も肉も裂いて魔獣を真っ二つにした。
対する魔獣は警戒心を顕にしつつ睨めつけるのみ。
「オオオオッ!!」
装填するのは炎の魔法。
夜闇の中でも、いや、だからこそ煌々と燃え上がる炎は、剣の形をした瞬間により一層強く輝く。
狙いは奴の腕。先程切りつけた箇所だ。
「!!」
それを察したのか、魔獣が即座に後ろへ下がる。
その巨体に見合わないバックステップはあっという間に俺の間合いから離れてしまう。
「くっ!そっ!」
魔獣は大きく下がった後、ぐっと姿勢を低くする──いや、あの動きは姿勢を低くしているのではない。突進の予備動作だ。
ガリガリと荒野に指を立て、踏ん張って力を貯める魔獣。
一体どれほどの速度が出るのか分からないが、普通に受けて良いものでは無い。
そして突進攻撃の嫌な所は、一度勢いづけば止めるのは容易ではないという事だ。もちろん、それは相手の質量に比例して難易度も跳ね上がる。
だから俺に取れる行動はただ一つだけだった。
「がああああああ!!」
マキナに貯蔵してあった血のストックを解放、約一割を消費して第二血界、血呪を発動。
これにより身体能力を爆発的に上昇させ、今まさに身体を撓めて力を貯めている魔獣に一瞬で追いつく。
「!?」
下段に構えた炎の剣が地面と触れて石を焼き、砂利を溶かし、赤の線を引きつつ魔獣に肉薄する。
「お、お、おお、おおおお、オオオオオオオオ!」
最初の一撃の傷跡をなぞり、焼き抉るように炎剣が走る。
炎は先から魔獣の中へと滑り込んでいき、内側からその腕を焼き尽くす。
飛び上がりながら振り抜く頃には剣の炎は消え、剣の柄だけが残っていた。
「ヴェエエアアアアアアアア!!」
「まだだ!!」
左腕からマキナを鞭のように伸ばし、空中でヤギ魔獣の角に巻き付けて飛び上がる。
本来ならそのまま首の辺りに降りるはずだったが、流石にそこまではさせてもらえない。
途中で振り回され、上空に放り投げられる形になる。
「くっ!」
下を緋眼で見ると、魔獣が恐ろしいまでの憎悪を燃やしながら睨みつけていた。
「ヴェエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアああああああああああああ!!」
魔獣がまた、吼えた。
一瞬身体が鈍くなりかけるが、止まることも無く、鈍くなった感覚はコンマ一秒と経たずに元に戻る。
『解析完了。聴覚情報から・全身に・異常をきたす・特殊な咆哮であると・断定。ノイズキャンセリングの・応用で・打ち消しました』
「よくやった!」
よく分からんがマキナが対処したらしい。
一方、相手も上空で俺が固まらなかったのを見て気づいたらしく、首をゆるゆると二度横に振った。
すると、額にあったヤギの角が鋭く尖り、鬼のような角へと変貌した。
なんの魔獣なのかという疑問が再び鎌首をもたげかけたが、その思考を振り切って剣の柄を大きく振りかぶった。
選んだのは残った水の聖弾と土の聖弾の混合聖弾。一度使った二色混合聖弾の中では最も一撃の重さが高かった物だ。
二種類の聖弾が混ざり合い、黒い巨大な刃を形成。
まるで黒曜石をくり抜いて作ったような見た目だが、よく見ると刃には波紋が生まれており、その刃が液体で出来ていることが分かるだろう。
そして、この刃の一撃に、俺の戦技を乗せる。
「《破断》!」
赤いオーラが身体を包み、大上段から大剣を振りかぶった。
魔獣は絶叫しながら落ちてくる俺を迎え撃つ。
下から上へ突き上げる勢いは、腕を一本失ってもなお凄まじく、真正面から受ければマキナを貫いて俺の腹に風穴を開けるだろう。
だが──こちらの方が早いし長い。
「ッ、ラァッ!!」
──その黒刃は水のように姿を崩し、音も肉も裂いて魔獣を真っ二つにした。
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