大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

帰りと肉塊

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行きより長く感じる帰り道をイーノに先導されて歩きながら、レイヴァーとシャルに例の肉塊について色々聞いてみた。
『お前、前に話した時は全然聞き取れてなかったんだろうが、今なら多分結構聞き取れるだろ』
『そうだなぁ…とりあえず、レィア君はあれを肉塊とか呼んでるみたいだけど、あれに正式な名前は無くてね。シャルレーゼは確か狭間とか狭間の子って呼んでたし、他の勇者はバケモンとか不肉とか色々呼んでたな』
不肉?どういう意味でそう呼んでたんだ?
『単純に不死身の肉で不肉』
なるほどなぁ。というかそれだよそれ。レイヴァー。
『ん?どれだい?』
俺、前にあの肉塊を倒したけど、別に不死身じゃなかったと思うぞ?なんでラピュセも死なないって言ってたんだ?
『あぁ。え、シャルレーゼ、教えてない?』
『今代のが狭間の子と遭遇したのは一回きりだったし、その時は上手いこと処理出来てたから別に後ででいいかなって思った』
『いや教えとかなきゃダメでしょ。結構重要…あー、でも門開いたの割と最近だし、そもそも聞き取れなかったかもな』
二人で少し話した後、再びレイヴァーが俺に向かって話しかける。
『えーっとな。あいつらな、心臓から膨大な量の魔力と生命力を生み出し続けててな?常に自分の身体とか心臓に復元魔法とかがかかってるのと同じ状態なんだよ』
ふーん。だから不死身って?でもそれって心臓潰せば終わるじゃん。実際終わったし。
『あぁ、そりゃレィア君が《勇者》だから。あと持ってる武器が武器だしなぁ』

『常にかかってるって事は、切った瞬間からすぐに再生が始まってる訳よ。切り口から溢れるようにして新しく切られた心臓部分が生えてくる。
仮に叩き潰しても破片から蘇るし、焼いて灰にしようとしても焼けた部分だけ分離して再生される。というかそもそもあれ全然燃えないし』
でも俺の時は…
『心臓切ったら終わったんだろ?多分この世であれを殺せるのって魔法に対して絶対的な特攻を持つ勇者だけだしな』
あ…魔法返し?
『魔法返しって言うかレィア君の血そのものかな。勇者の血はその性質上あいつらにかかったりすると、自身にかけてる復元魔法とかが上手いこと働かなくなるんだよ。あと、レィア君が持ってる剣も割と理由かな』
金剣と銀剣?
『そ。どっちも「使い手に応じて最適な武器になる」って言う能力を持ってるんだが…その時の所持者って誰だった?』
所持者…あー、契約し直したのが冬だったし、多分シャル?
『あぁ、俺で合ってる』
『だったら尚更だ。シャルレーゼは生前、こいつらを狩ってたから、シャルレーゼの性質に合ったように変化してる。
つまり、あいつらを必ず殺せるようになってるはずだ』
なるほど。多分今は俺の方に契約が更新されてるからその能力は失われている可能性が高いだろうが、どの道あの肉塊を殺せるのは俺だけという事に変わりはない。
ん?でもなんでそれが封憶門に引っかかるんだ?
『あぁ、そりゃね。あの化物は本来この世界には居ないんだが、限りなく近い所に存在しててな。で、あいつらが生み出す魔力の余剰分がこっちに流れ込んでるからヒトや魔族が魔力を得て魔法を使えるんだよ。だから本来触れるのはタブーだ』
………は?
おいちょっと待てレイヴァー、そんなの今初めて聞いたぞ。
「着いたわよ。《緋眼騎士》」
「え?あ、ああ」
気づけば長い帰り道は終わり、元の訓練所へと戻っていた。
おいレイヴァー、後でその話きっちり聞かせろ。
『あいつなら言ってすぐに「じゃあね」って言って奥にすっ込んだぞ』
…逃げられたか。
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