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本編
剣戟と返し
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ユーリアが一歩踏み込み左下からの右の切り上げ。
それを銀剣の側面で軽く弾いて俺がさらに踏み込む。
限りなく零になった距離でユーリアが慌てたようにバックステップ。同時に彼女が左に握る剣に魔力が集まるのが見える。
あの量なら回避は不要。踏み込みをキャンセルすることなく進む。
「土弾!!」
俺に魔法は効かない。それをよくよく理解しているからこそ、ユーリアは威力に頼らなかった。
詠唱を破棄して撃ち出された魔法に本来の威力はない。ユーリア曰く、どれだけ凄い魔法使いでも、詠唱無しでは本来の七割程度の威力しか出ないらしい。
それもユーリアが今使った魔法は魔法のランクとして見ても下から二番目相当の魔法。仮に万全であっても俺にかすり傷ひとつ付けることは出来なかっただろう。
だから。
彼女はそれを目くらましとして使った。
俺の顔に当たる寸前でもう一発隠していた魔法を今の土弾にぶつけ、俺の眼前で破壊、一瞬立ちのぼる土煙で俺の視界を遮った。
「いい判断だな!」
「そりゃどう──もッ!!」
声は後ろから。
そう、判断はよかった。
俺じゃなければ正解だっただろう。
「だが不正解だ」
俺の後ろ。それはつまり俺の死角である──ということではなく、髪が最も近いという事だ。
双剣を両方横に寝かせるように構え、真下から切り上げるようにして跳ねようとするユーリアの身体を拘束。たわめた膝を縛ってしまえばそれだけで充分だ。
「ほいこれで終わ──」
「それも知ってる!」
「んぁ?」
ビッ!!と空気を裂くように鋭く投げられたのはユーリアが持っていた剣の片方。
それが俺の眼へと投擲された。
「あっぶねぇ!!」
魔法は弾けても流石に金属で出来た剣を眼で受け止めることは出来ない。ましてや至近距離。全力で仰け反った瞬間、思わずユーリアを縛っていた髪が僅かに緩んでしまった。
「ちっ!」
「しまっ!」
片方だけになった剣を両手で握り、体勢を崩した俺にさらにラッシュを仕掛けるユーリア。
「おっ、えっ、ほっ、ちょっ、いやっ、はっ、とっととぉ!?」
「えぇいクソ!!ちょこまかと君は本当に!!」
「はっはっは、詰めで焦るなよユーリア。剣筋が読みやすいのなんのって」
とはいえ結構危なかったのだが、なんとか回避し、既に体勢は立て直す事が出来た。
「ほーら、そんなお前に──」
身体を両手で支え、逆立ちの形。しかし足は開き、両手でさらに身体を回して蹴りを放つ。
俺が取った突飛な行動に、ユーリアが一瞬たじろいだ。
ちょうどその時落ちてきたのはユーリアが今さっき投げた剣。それを底の厚いブーツが軽く切っ先を弾き半回転。柄尻を俺の方に向けた所で流れるように身体を起こす。
「──忘れ物だ」
起こした身体は既に右拳を引き絞った形で、その手には髪で強化された武拳が形成されている。
「うえっ!?」
慌ててユーリアが回避しようとするが、半瞬遅い。
スパァン!!と拳が振り抜かれ、剣の柄尻を綺麗にとらえた。
そして拳の勢いを殺すこと無く十全に剣へと伝え、ユーリアが投げた時の数倍早く剣がすっ飛ぶ。
剣はユーリアの顔の真横、もっと言えば目のすぐ隣を通り過ぎた。
「──よし、今日はこれで終わり。投げるっつー発想は悪かないが、投げたら利用されるってのも忘れないようにな」
…ん?ユーリアから返事がない。
「ユーリア?どうした」
「は、ははは、はは…」
そう不気味に笑っているのはもちろんユーリア。ただし位置はかなり下の方から。
「どうした?珍しくへたりこんで。疲れた訳じゃあるまいに」
仕方の無い奴、と思って手を差し伸べてやると、手を掴んでは来たものの、かなり弱々しい。おまけに震えている。
「レィア、申し訳ないのだが」
「うん?」
「今ので腰が抜けた。部屋まで運んでくれないか?」
「………。」
そんな怖かったかね?一応怪我はないようにしたんだが…あぁ、もしかしたら最後のやつで産毛が多少切れたかもしれんが。
まぁ、言っていても仕方ないので今日は鍛錬を早めに終わらせ、ユーリアを送って寝た。
それを銀剣の側面で軽く弾いて俺がさらに踏み込む。
限りなく零になった距離でユーリアが慌てたようにバックステップ。同時に彼女が左に握る剣に魔力が集まるのが見える。
あの量なら回避は不要。踏み込みをキャンセルすることなく進む。
「土弾!!」
俺に魔法は効かない。それをよくよく理解しているからこそ、ユーリアは威力に頼らなかった。
詠唱を破棄して撃ち出された魔法に本来の威力はない。ユーリア曰く、どれだけ凄い魔法使いでも、詠唱無しでは本来の七割程度の威力しか出ないらしい。
それもユーリアが今使った魔法は魔法のランクとして見ても下から二番目相当の魔法。仮に万全であっても俺にかすり傷ひとつ付けることは出来なかっただろう。
だから。
彼女はそれを目くらましとして使った。
俺の顔に当たる寸前でもう一発隠していた魔法を今の土弾にぶつけ、俺の眼前で破壊、一瞬立ちのぼる土煙で俺の視界を遮った。
「いい判断だな!」
「そりゃどう──もッ!!」
声は後ろから。
そう、判断はよかった。
俺じゃなければ正解だっただろう。
「だが不正解だ」
俺の後ろ。それはつまり俺の死角である──ということではなく、髪が最も近いという事だ。
双剣を両方横に寝かせるように構え、真下から切り上げるようにして跳ねようとするユーリアの身体を拘束。たわめた膝を縛ってしまえばそれだけで充分だ。
「ほいこれで終わ──」
「それも知ってる!」
「んぁ?」
ビッ!!と空気を裂くように鋭く投げられたのはユーリアが持っていた剣の片方。
それが俺の眼へと投擲された。
「あっぶねぇ!!」
魔法は弾けても流石に金属で出来た剣を眼で受け止めることは出来ない。ましてや至近距離。全力で仰け反った瞬間、思わずユーリアを縛っていた髪が僅かに緩んでしまった。
「ちっ!」
「しまっ!」
片方だけになった剣を両手で握り、体勢を崩した俺にさらにラッシュを仕掛けるユーリア。
「おっ、えっ、ほっ、ちょっ、いやっ、はっ、とっととぉ!?」
「えぇいクソ!!ちょこまかと君は本当に!!」
「はっはっは、詰めで焦るなよユーリア。剣筋が読みやすいのなんのって」
とはいえ結構危なかったのだが、なんとか回避し、既に体勢は立て直す事が出来た。
「ほーら、そんなお前に──」
身体を両手で支え、逆立ちの形。しかし足は開き、両手でさらに身体を回して蹴りを放つ。
俺が取った突飛な行動に、ユーリアが一瞬たじろいだ。
ちょうどその時落ちてきたのはユーリアが今さっき投げた剣。それを底の厚いブーツが軽く切っ先を弾き半回転。柄尻を俺の方に向けた所で流れるように身体を起こす。
「──忘れ物だ」
起こした身体は既に右拳を引き絞った形で、その手には髪で強化された武拳が形成されている。
「うえっ!?」
慌ててユーリアが回避しようとするが、半瞬遅い。
スパァン!!と拳が振り抜かれ、剣の柄尻を綺麗にとらえた。
そして拳の勢いを殺すこと無く十全に剣へと伝え、ユーリアが投げた時の数倍早く剣がすっ飛ぶ。
剣はユーリアの顔の真横、もっと言えば目のすぐ隣を通り過ぎた。
「──よし、今日はこれで終わり。投げるっつー発想は悪かないが、投げたら利用されるってのも忘れないようにな」
…ん?ユーリアから返事がない。
「ユーリア?どうした」
「は、ははは、はは…」
そう不気味に笑っているのはもちろんユーリア。ただし位置はかなり下の方から。
「どうした?珍しくへたりこんで。疲れた訳じゃあるまいに」
仕方の無い奴、と思って手を差し伸べてやると、手を掴んでは来たものの、かなり弱々しい。おまけに震えている。
「レィア、申し訳ないのだが」
「うん?」
「今ので腰が抜けた。部屋まで運んでくれないか?」
「………。」
そんな怖かったかね?一応怪我はないようにしたんだが…あぁ、もしかしたら最後のやつで産毛が多少切れたかもしれんが。
まぁ、言っていても仕方ないので今日は鍛錬を早めに終わらせ、ユーリアを送って寝た。
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