大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

蛇と親玉

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結界の外へ出た途端、と言ったが、本当にその瞬間って訳じゃ無かった。
俺達の馬車が通り抜け、十メートルほど進んだ時。
まるで、誰もいない事を確認してから襲ったみたいな間があってから、馬車は何者かに襲われた。
とんでもない衝撃と共に、壁が急に近くなり、逆に床が遠く…あぁ、ひっくり返されたのか。
「襲撃!?」
ラウクムくんの叫び声が馬車の中で反響する。
「だな。どれ、ちょっと様子を見るか」
そう言いながら俺は髪を使って床を登りつつ扉を開く。
ガチ、バタン。
「あっぶねぇ…」
「いいいいいい今のは!?」
開けると同時に閉めた。というか、開けかけて閉じた。
ギリ見えてなかったかと思ってたけど、クアイちゃんのリアクション見る限り、見えちゃったかー。
「多分ナーガの子供、幼体かな。…あんな数は見た事無いけど」
扉を開けて見えたのは、体長約三十センチ、太さは二センチ程度の蛇。
それが見えた限りウジャウジャと。
扉を閉めなかったら、恐らくあの小さな蛇が雪崩のように突っ込んで来ていただろう。
「レィア、どうする?流石に小さな蛇となると私の槍は正直役に立たないよ?」
リーザの槍は確かに地を這う蛇とは相性が悪い。既にひとりはほぼ使い物にならないか。
「というか、こういうのは魔法使いの出番だな。私の剣も当然使えないし、クアイのナイフもほとんど意味を成さないだろうしなぁ…強いて言うならラウクムか?レィアの剣は…面で叩き潰せば戦えないことも無いだろうか…?」
ユーリアもほぼ打つ手がないと言う答えか。
えーっと、コイツらが森に攻めてきた時、どうやって倒したっけ…?
「?この音、なんだ?」
ラウクムくんが何かに気づいたらしい。
音、か。耳を澄ませると、ズルズルと蛇が馬車を這い回る音に隠れて、あちこちからギッ、ギシッ、ミシッ、と音が鳴っている。
「まさかこれ!」
「この馬車を締めつけて砕く気か!」
リーザとユーリアが同時に気づき、慌てるが…正直どうしようもない。
待て、思い出せ…あの時は確か…。
「…子供?母体が…リーダー…?そうだ!」
思い出した!
「どどどどどうしたんでしゅか?レィアさん!」
「話は後!一旦馬車を起こす!」
「そんな!起こすったってどうやってです!?」
こうやって!そう言いながら髪を、今や床となった壁、その壁に取り付けてあった窓やもう一つの扉、そこにどうしても出来てしまう隙間へとのばす。
蛇には狭すぎて通り抜けられず、それでいて髪の毛が通り抜けるには大きすぎる隙間。
そこを通り抜け、俺の髪が地面につく。
ぐっ、と力を込めると、馬車が最初はゆっくりと持ち上がり、一瞬だけ斜めで釣り合う。しかし、中の皆が床へと転がると同時に、その反動で馬車が完全に立て直す。
「おし!クアイ!ラウクムと一緒に外に出てくれ!外にいるナーガの幼体を蹴散らしてくれ!ただし、出来るだけ殺すなよ!」
そう俺が指示を出すと、ラウクムくんとクアイちゃんは勢いよく扉を開き、外の蛇を蹴散らし始めた。
上手くいくといいんだが…。
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