大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

強行突破と限界突破

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『いやぁ…レィアくんもなんだかんだ言って、やっぱり《勇者》なんだなぁ、って。おにーさん嬉しくって嬉しくって…』
『バカレイヴァー、お前その《勇者》にルビ振ってねぇか?脳筋とかそんな感じのルビ。っつーか今代の、本気か?』
何の話か一部分からんが、まぁそれなりに本気だ。
さっき誰にも気付かれずに出たいと言ったが、音もなく出る必要は無いと気づいただけだ。
誰かが出ても誰が出たか分からなければ問題は無い。だったら単純に、壁をぶち抜いて誰にも見つからなければ問題は無いし、キッチリ証拠を隠滅しておけば足が着くことも無いだろう。
『本音は?』
考えるのが面倒になった。
『やっぱりじゃねぇか』
『血は争えないってやつだねぇ。もしかして昔から?』
『そうだよ。結局こいつは詰めのところでゴリ押しを始めやがる。タチが悪いのはそれでもどうにかなることが多いってのだな』
お褒めに預かり恐悦至極、と。
腰に差したまま、待機状態になっているマキナにの表面を指でなぞり、文字として今から俺がやろうとしていることを伝える。
すると、マキナは俺の要望に『了解』と文字を浮き上がらせて返し、行動を開始する。
『おい待て、なに始めてんだお前』
何ってそりゃお前決まってる。
今からこの壁を丸ごと吹き飛ばす。
『はぁ?』
『おーいいぞ、やれやれ』
『いやいや馬鹿馬鹿、無理だろ。どうやってやるつもりだよ』
極限まで重くしたマキナを右腕に装着して、全力で壁をぶっ叩いて、衝撃で壁を全部消し飛ばす。これぐらいしか方法ないでしょ。
『はぁん?お前…』
『あっはっはっは!!いいねレィア君!最高に俺好みだわ!…えーっと、血界どこまで使えたっけ?』
一応第六まで全部だな。第三とか第五は少し相性悪いけど…
『………ふーん。なら今回の脱出で必要な血界、好きな風に使っていいよ』
マジで?
『ちょっ、レイヴァー!?』
『いいよいいよ。俺が許可する』
右の口の端が少しだけ上に上がる。それなら遠慮なく。
マキナに貯蔵した血の約二割を引き出し、そのうち四分の三を第二血界の血呪に回し、身体能力を爆発的に飛躍させ、さらに部屋の端まで一度下がる。
マキナの変形はとうの昔に終わっており、血呪と髪を使用しなければビクともしないような、無骨な金属の塊が俺の右腕についていた。
『…おい今代の?出した血が多すぎるだろ。若干余ってんじゃねぇか』
今から使うさ。
『は?』『ほう?』
第六血界──
血呪の力を引き出し、もはや自身の力のみではどうしても持ち上げられない右腕を持ち上げ、腰だめに構える。
『ちょ!?やめろバ──』
──血瞬!!
血呪の効果は身体強化。
絶大とまで言える強化を自身にかけ、筋力、スタミナ、瞬発力、ありとあらゆる肉体の面で、その能力を伸ばす血界。
血瞬の効果は瞬間加速。
血を消費し、自身の速度を限界を超えて強化するため、使用者ですら振り回されることがある究極の速度を求める血界。
この二つを併用した時、使用者は「身体強化された身体が前提にある上で」──加えて、現在は筋力なども血呪及び自身の髪で強化されている
つまり。
何の比喩でも誇張でもなく、文字通り力一杯、限界を超えての一撃を叩き込んだ瞬間、壁はまるで紙切れのように引き裂かれ、余波で壁が消し飛び、起こされた風で散らばっていた部屋のあれこれが倒れ、巻き上がり、見るも無惨なことになっていた。
『………。』
『………。』
………。
『やり過ぎだ馬鹿』
……とりあえずトンズラこくか。
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