大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

本編

勇者と王

『さてレィアくん、そもそも《勇者》ってなんだと思う？』
「はぁん？レイヴァー、質問がヘタクソ過ぎるぞ。もうちょい絞って聞いてくれねぇか？」
唐突にそう聞かれれば、困惑してこう返すしかない。
のに。
口が勝手に答えを言っていた。
「神一人につき一種類までの身を削って創る特殊ユニット、だろ？」
『正解。よく出来ました』
「──え？あれ、今、俺…」
完全に知らないことをペラペラと喋っていた。
俺が知ってることは前にシャルから聞いた「神が創った特殊ユニット」ってことぐらいだ。
なのに──
『やっぱり、少なくとも五つ目は開いてんなぁコレ。しかも、無意識に記憶に封をしたってことが、結果的に記憶が勝手に紛れ込むって結果になったらしいな。今レィアくんが言った事は、封憶門の五つ目あたりの事だ。…じゃあ次』
「…次は何だ」
『一番最初の特殊ユニットってなーんだ？』
「あぁ？そりゃもちろん俺達《勇者》────じゃねぇ」
直前でわかった。本当の最初の特殊ユニットは──
「グルーマルがベースの特殊ユニット《王》」
『正解。うん、やっぱり間違いないな。少なくとも五つ目は開いてる』
レイヴァーが話を続ける。
『ヒト種が信仰し、ヒト種に加護を与える神は、ヴェナム、グルーマル、システナ。この三人。そしてまた、この三人によって三種の特殊ユニットが創られる』
それが──
「《王》、《勇者》、《聖女》の三種って事か？」
『正解。特殊ユニットは、神の血肉を使って創るからか、それぞれ親神にあたる存在の性質を強く受けて創られる。一番わかりやすいのは《聖女》だな。守りと信仰にやたら特化してるってのは、システナの影響をモロに受けてっからだ』
確かにシステナも結界のようなものを張っていたような気がする。アレが本家なのだろうが。
『逆に、分かりにくいのが俺達《勇者》だ』
「え？そうなのか？」
『今代の、俺達の親神のヴェナムってのはどんな神様だったか分かるか？あぁいや、想像でいい』
急にシャルが横から口を挟む。心なしか声が弾んでいるように感じる。
にしても戦闘特化の俺達《勇者》だから…そうだな。
「破壊とか殺戮とかその辺じゃねぇの？」
『『大ハズレ』』
声をそろえて言わんでもいい。
『答えは何の神でもない、だ。強いて言うなら、身体が弱いせいでよく血を吐いていたらしいぜ』
そうレイヴァーが教えてくれたが、あまりにも意外な答えだったせいでリアクションがしにくい。
と言うか、神の癖に身体が強い弱いなんてあるのか。神なら何とかしろよ。
『で、ここからが本題だ。グルーマルはどんな神様かってーと、実はよくわかってねぇんだ。ただ、《王》の能力は分かってる。なんの捻りもなくそのまま、国を作り、治める能力だ』
「ほー。有能なヒトがいれば、すり変わってしまってもなんとでもなりそうな能力だな」
『ところがどっこい。違うんだなぁ、これが。《王》の能力は、まずヒトという存在を創る』
「………は？」
『そして、ヒトは《王》に逆らうことは出来ない。ヒトが考えていることや持っている感情、知っていること全てを《王》は心の中で要求した時点で知ることが出来る。この土地のこの辺りの地域の人口が多くなりすぎると感じれば、意識するだけで人口は程よく減り、労働力が足りないと感じれば増やすことが出来る。つまり、言い換えるなら──ヒト種は全て《王》の手中にあり、その存在は《王》が根源にあると言っても過言じゃない』