大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

鍵決闘と鎧

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「準備はいいですの?」
フィールドの外から、アーネがそう聞く。
『あぁ、大丈夫だ』
「私はいつでも構わんぞ」
それに対し、短く返す俺とユーリア。
先ほどよりやや小さいフィールドで、それぞれ武器を構えて対峙する。
俺の手には銀剣が二振り。対するユーリアは、いつもの長さがやや中途半端に思える剣を一振り、両手で握って構えている。
互いの構えは、俺は左を逆手に持って軽く腰を落とすいつもの格好。対してユーリアはいつもなら正眼に構える剣を、なんと大上段に構えていた。
互いの距離はざっと五メートルほどか。同時に踏み込めば簡単に間合いに入る。
今回、ユーリアと戦うために俺は彼女へ決闘という形で勝負を持ち込んだ。
賭けることになったのは十五号室の居住権。
勝った方が十五号室に今年一年住むことが出来る。アーネと同棲になるがな。
ちなみにフィールドが違うのは、俺の乱入によってフィールドが壊れてしまったため、別のフィールドで戦うことになったためだ。
そして、これが二つ名持ち同士の真っ向からの衝突だと言うこともあり、このフィールドの周りは多くの生徒が集まっていた。
『マキナ、後どれぐらいかかりそうだ』
小さく口の中で呟くと、俺にしか聞こえないようにマキナが答える。
『現在・システム構築中です。進行度は・約九十・三パーセント。完了まで・およそ一分十一秒です』
『ギリギリだな…』
人が肉と骨の柔軟性を利用して行う技を、金属の塊が再現しようというのだ。時間がかかるのは仕方がない。
が…僅かに間に合わなかったか。
「それじゃ、いきますわよ…」
アーネが遠くまでよく聞こえるような拍手を一度だけ鳴らす。
それが開戦の合図だった。
『ッ!』
先にしかけたのは俺。
瞬間移動じみた最速の踏み込みで、ユーリアとの距離を一瞬で食い潰す。
「──!」
僅かに驚くユーリア。先ほどの戦闘で踏み込んだ時よりなお早い俺の動きが予想外だったのだろう。
だがもう遅い。
ユーリアが反応するよりも早く横に振り抜いた銀剣が、しっかりとした手応えを俺の手に残して彼女を切り飛ばす。
『なんだ、案外呆気ないな』
思わずそう呟いたが、直後に恐ろしい勢いで勘が警鐘を鳴らした。
その感覚に従い、思いっきり後ろに跳ぶ。
しかしそれでも足りなかった。
さっきの俺の踏み込みよりも早い速度で踏み込んだユーリアが、先程と同じ構えで俺の頭から股下までを叩き斬るような一撃を振り下ろしてきた。
『ふッ!!』
右だけなら。
片方だけなら俺一人でも辛うじてコントロール出来る。
振り抜いた時の力を循環させて迎撃に回す。
当てさえすれば銀剣の重さで剣が弾ける。
そう判断したのが甘かった。
『なっ──!?』
「おいおいレィア」
叩き落とされたのは俺の銀剣。
「私が何度君と戦ったと思ってるんだ?その剣の事は把握済みだよ」
ユーリアの剣が異常なまでに重い。まるで持っている剣が銀剣のような、そんな重さ。
「重力魔法が使えるのは君たちだけじゃない。そもそも魔法は耳長種エルフの方が向いてる。忘れてた?」
振り下ろされた一撃を防ぐ方法はもう──いや!
「!」
俺の髪を伸ばし、ユーリアの身体を掴んで剣のギリギリ真横を通るように飛び抜ける。
『ッ、アア!!』
それでも完璧には行かなかった。
ユーリアの一撃は、俺のフィールドを剥ぎ取り、左腕の装甲を吹き飛ばした。
『当たった時の衝撃波だけで全身のフィールドを砕かれたか。あの耳長種エルフ、とんでもない魔法を使ってきたな』
一方ユーリアは俺の一撃をどうやってか防いだのだろう。フィールドは万全、腹のあたりにあるはずの赤い線もない。
シャル、何か手はあるか?
『無い。と言うか必要無い』
『あ?』
「さて、次から本気で行くぞ」
剣を下段に構えたユーリアが地面を踏み締める。
来るか──!
『全工程完了。武装・《千変鎧》の形状変化を開始致します』
『!』
次の瞬間、マキナが姿を変えた。
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