大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

銀刃と魔本2

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シエルの額に叩き込まれた光魔法《レイ》は二人から聞いた所、魔力を収束させて放つだけの簡単な魔法らしい。
「しかしな、これがまた意外と奥が深いんだ」
ユーリアが何故か生き生きとした表情で続ける。
「魔力を収束させて放つだけの魔法だが、実はこれに攻撃力はほとんどない。せいぜいが少し押された程度の感覚があるぐらいだな。なんせ元々、この魔法は使
「は?いや、でも……」
「言いたいことは分かりますわ。でも事実ですの」
「というか、レィアは魔法については本当に何も知らないのだな。《レイ》ぐらいは常識だろうに」
ほっとけ。育てた側も育てられた側も魔法を全く使えない体質だったんだよ。
『俺はナナキになってからは一応使えるはずだぞ。一緒にすんな』
「…ひでぇ裏切りを聞いた」
「ん?何か言ったか?」
「いや、なんでもない。続けてくれ」
そう言うと、ユーリアが人差し指を立ててくるくると指を回す。するとそこに白く輝く光の玉が生まれる。
「魔力には無数の属性があり、それに応じた魔法が存在する。しかしヒトは限られた属性の魔力しか持たず、それは生まれた時に決まっている。これは知ってるな?」
初耳。だけど黙って頷いとく。
「しかし例外として、生まれ持った属性とは別に一属性だけ存在する属性があり、ヒトであるなら必ず使える属性がある。それが魔力そのものの属性、光属性だ。例を挙げるなら、明かりをつけるライトやメッセージ、才能がなければ使えないとは言え、念力系の魔法もこれに属するな」
生み出しはしたものの、光球に意味はなかったらしい。そのまま消すユーリア。
「回復系の魔法もそうですわ。このフィールドも分類するのなら光属性になりますわね」
「なるほど?つまり簡単に分類出来そうにない魔法は全部光属性だと?」
「非常に雑なまとめ方だが、まぁあながち間違いじゃない。で、これには共通の性質があって──」
「その辺はまた今度聞くわ。それどころじゃないんでね」
俺の目の前で繰り広げられているのは、学校長がその《レイ》とかいう魔法だけでシエルと戦っている──いや、訂正だ。弄んでいる。そう形容する方が正しい光景だった。
学校長の周りに浮いている光球。大きさは大体握り拳一つ分ぐらいのそれが、絶えず《レイ》を放ち続け、逃げるシエルを追い続ける。
そんな光球が十八個。当然避けきる事は出来ず、少しずつ被弾が増え始める。
シエルの攻撃は一度、少しでも掠った時点で終わる。スキルによって大量の血を抜かれ、そのまま戦闘不能となるのだ。
それを学校長もよく分かっているのだろう、決してシエルを近づかせず、確実で安心できる位置から延々と魔法を撃ち続けている。
確かにそれは最適解だろう。実際、シエルの得物のリーチは極短い。懐に飛び込ませさえしなければどうしようもないし、どうとでもなる。
しかしそれはシエルにとっても同じ。懐に飛び込めさえすれば──確実に一撃を狙える。
「ッ、………!!」
ついにシエルの方からもガラスが砕けるような音がし、同時にフィールドの作用とレイによって付けられた赤い跡が消える。
「終わりです」
十八個の光球から一度に魔法が放たれ、シエルに襲いかかる。
「………、ッ!!」
瞬間、シエルが高速でステップを刻む。
撃ち下ろされる魔法を紙一重で避ける、避ける、避ける。
しかし魔法は間断無く、シエルを追い詰めるように迫ってくる。
学校長もシエルの動きに慣れてきているのか、シエルが逃げそうなところを潰すようにして魔法を放っている。
「……詰んだな。ああなったら彼女ではどうしようもないだろう」
「まぁ、な」
学校長とシエルの距離はどれほど近づいても三メートル程。これではシエルのナイフが届きようがない。
しかも学校長はどう見ても本気を出していない。ナメていると見るべきか、はたまた単に余裕なのか。
光球の攻撃が収束を始める。シエルの姿を覆い尽くすようにして。
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