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本編
戦技と新武器
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さて、ここで──何度目か忘れたが──戦技と言う物の確認をしておこう。
戦技とは、想像を絶する反復練習の結果、個人が獲得できる特殊技能だ。
たとえば、非常に有名な戦技の中で《大上段》という戦技がある。
文字通り、大上段から剣を縦に振り下ろすだけの単純な戦技だが、この戦技を会得するまでに平均半年から一年程かかるらしい。
ただ剣を縦に振り下ろすだけの戦技だが──剣筋がブレてはいけない。肘が下がってはいけない。踏み込みが浅くてはいけない。といった基本的なことから始まり、細々としたあらゆる点から「剣を縦に振り下ろす」行動が定義され始める。
歩幅、呼吸、武器の間合い、重さ、振り下ろす速さ、重心………等々。
それらが決まり、何千、何万、何千万回と繰り返された結果、「剣を縦に振り下ろす」行動に無駄が無くなり最適化された時、ようやく戦技は発現する。
そもそも戦技が何かとか、なんでそんなに繰り返したら発現するのかとか言う話はまたいつか。
その話は世界の記憶云々の話をせにゃならん。話したい話が今回に収まらなくなっちまう。
で、だ。
実は武器を変えると戦技が撃てなくなると言うのは割とよくある話だったりする。戦技と言うのはそこまで繊細なものなのだ。
ましてや単発の戦技と連撃の戦技だと後者の方が圧倒的に難易度が高い。
だがちょっと待て、お前黒剣で使ってた戦技を金剣銀剣で撃ってただろ。と思うかもしれないが待って欲しい。
武器が変わったから戦技が使えなくなると言っても、一週間か二週間もあれば矯正出来る程度のもので、集中してやれば一日で再び習得しなおせる程度のものだ。再び年単位の修練が必要な訳では無い。
そして俺のスキルは《超器用》。それぐらいなら不要の調整だ。
「だが今回は違う」
『急にどうした、今代の』
ルーシェに貰ったばかりの鍵を使い、二年の訓練所に忍び込んで鍵を閉めた俺は、シャルの疑問には答えずに胸元から銀剣が仕舞われたペンダントを引っ張り出す。
周りに誰もいないかチェックし、誰もいないことを確信してから胸元に下げたそれを引きちぎる。
キィィィィィィ──ンと、甲高い音が訓練所に響き渡り、光が収束するようにして新たな銀剣が軽く握られた俺の手の中に構築される。
明かりも付けていない上、地下二階にある訓練所では光が一切届かない。だと言うのに薄らと銀色に光って見えるということは、この剣自体が光を発しているのだろう。
『で、戦技が使えないんだっけ?何でだよ』
「何でかって?見ての通りだからだよ」
そう言うとシャルは暫く黙った後、『どの辺がどう?』と聞いてくる。
「こうすりゃ分かるか?」
俺は腰をやや落とし、もう一度聞いた。
『…何がしたいんだ?いや、何が言いたいんだ?ふざけてたいだけなのか?』
「ふざけてるつもりは微塵もないぞ。だが、ふざけてるように見えるのも仕方ない」
実際、俺のポーズはふざけているようにしか見えない。
薄く輝く銀の双剣を両手に持ち、だらんとぶら下げたまま腰をやや低くする。このポーズにどんな意味があるというのか。
いや、実際のところ、このポーズそのものに意味は無いというか、これでは意味を成さないというか。
『何をしたいのかさっぱりわからんが、戦技の練習をするなら構えろよ。じゃないと型がそもそもできな──』
そこでシャルの言葉が止まった。
『おい、まさかとは思うが。それ、構えのつもりじゃないよな』
「やっと分かったか。構えのつもりだよ。いや、構えたいんだが構えられないんだ」
基本的に戦闘中に構えをほとんど取らない俺でも、戦技の会得のためには構えが必要になってくる。
だが構えない。構えられない。何故か。
「銀剣が重すぎて持ち上がらねぇ。どうしろってんだ」
戦技とは、想像を絶する反復練習の結果、個人が獲得できる特殊技能だ。
たとえば、非常に有名な戦技の中で《大上段》という戦技がある。
文字通り、大上段から剣を縦に振り下ろすだけの単純な戦技だが、この戦技を会得するまでに平均半年から一年程かかるらしい。
ただ剣を縦に振り下ろすだけの戦技だが──剣筋がブレてはいけない。肘が下がってはいけない。踏み込みが浅くてはいけない。といった基本的なことから始まり、細々としたあらゆる点から「剣を縦に振り下ろす」行動が定義され始める。
歩幅、呼吸、武器の間合い、重さ、振り下ろす速さ、重心………等々。
それらが決まり、何千、何万、何千万回と繰り返された結果、「剣を縦に振り下ろす」行動に無駄が無くなり最適化された時、ようやく戦技は発現する。
そもそも戦技が何かとか、なんでそんなに繰り返したら発現するのかとか言う話はまたいつか。
その話は世界の記憶云々の話をせにゃならん。話したい話が今回に収まらなくなっちまう。
で、だ。
実は武器を変えると戦技が撃てなくなると言うのは割とよくある話だったりする。戦技と言うのはそこまで繊細なものなのだ。
ましてや単発の戦技と連撃の戦技だと後者の方が圧倒的に難易度が高い。
だがちょっと待て、お前黒剣で使ってた戦技を金剣銀剣で撃ってただろ。と思うかもしれないが待って欲しい。
武器が変わったから戦技が使えなくなると言っても、一週間か二週間もあれば矯正出来る程度のもので、集中してやれば一日で再び習得しなおせる程度のものだ。再び年単位の修練が必要な訳では無い。
そして俺のスキルは《超器用》。それぐらいなら不要の調整だ。
「だが今回は違う」
『急にどうした、今代の』
ルーシェに貰ったばかりの鍵を使い、二年の訓練所に忍び込んで鍵を閉めた俺は、シャルの疑問には答えずに胸元から銀剣が仕舞われたペンダントを引っ張り出す。
周りに誰もいないかチェックし、誰もいないことを確信してから胸元に下げたそれを引きちぎる。
キィィィィィィ──ンと、甲高い音が訓練所に響き渡り、光が収束するようにして新たな銀剣が軽く握られた俺の手の中に構築される。
明かりも付けていない上、地下二階にある訓練所では光が一切届かない。だと言うのに薄らと銀色に光って見えるということは、この剣自体が光を発しているのだろう。
『で、戦技が使えないんだっけ?何でだよ』
「何でかって?見ての通りだからだよ」
そう言うとシャルは暫く黙った後、『どの辺がどう?』と聞いてくる。
「こうすりゃ分かるか?」
俺は腰をやや落とし、もう一度聞いた。
『…何がしたいんだ?いや、何が言いたいんだ?ふざけてたいだけなのか?』
「ふざけてるつもりは微塵もないぞ。だが、ふざけてるように見えるのも仕方ない」
実際、俺のポーズはふざけているようにしか見えない。
薄く輝く銀の双剣を両手に持ち、だらんとぶら下げたまま腰をやや低くする。このポーズにどんな意味があるというのか。
いや、実際のところ、このポーズそのものに意味は無いというか、これでは意味を成さないというか。
『何をしたいのかさっぱりわからんが、戦技の練習をするなら構えろよ。じゃないと型がそもそもできな──』
そこでシャルの言葉が止まった。
『おい、まさかとは思うが。それ、構えのつもりじゃないよな』
「やっと分かったか。構えのつもりだよ。いや、構えたいんだが構えられないんだ」
基本的に戦闘中に構えをほとんど取らない俺でも、戦技の会得のためには構えが必要になってくる。
だが構えない。構えられない。何故か。
「銀剣が重すぎて持ち上がらねぇ。どうしろってんだ」
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