大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

毒蛇と捕獲 終

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地面が凍った。言葉として、それ以上でもそれ以下でもない。霜がおりたなどというちゃちな冷気ではなく、文字通りの氷結。それがバジリスクへ向けて手を伸ばしたかのように縦長に伸びていた。
しかしそれでいて《臨界点》の放った謎の凍結攻撃は、バジリスクを直に氷らせることは無く、その足元の地面を綺麗に凍りつかせていた。
「寒っ」
落下地点と馬車との距離は少なくとも数メートルは離れているというのに、その冷気がこちらまで流れてきた。
「なんっだ今の」
「秘密じゃ。技の手の内をひけらかすのは馬鹿だけじゃぞ」
あとはお前がやれと言わんばかりに「しっ!しっ!」と手を振る《臨界点》。
『だがチャンスだ。今代の』
「っ、と。助かった!」
跳ね起き、金剣と銀剣を再び握る。
いくら強大な魔獣と言えど、蛇だのトカゲだの、そう言った爬虫類と変わりはないらしい。明らかに動きが鈍っていた。
喉の奥に溜まっていた血をもう一度吐き出しダッシュ。
「今度はこっちから行くぞ……!」
一際強く踏み込み右斜め前へ跳躍。バジリスクの左側面に金剣を地面に突き立てながら入り込んだ。
『シャロロロロロ…!!』
俺に気づいたバジリスクが視線を向けようと動くが、明らかに遅い。 
「ふっ!」
さらにもう一度跳躍。腹の下をくぐり抜け、まだ無事な方の手へと向かって跳んだ。
「オオオオッ!!」
ガリガリと凍った地面を金剣で削る感覚。敵はまだ左側を向いたままだ。
「喰らえッ………!!」
金剣を地面に突き刺したまま、銀剣を担いで髪を両腕に集中させ、戦技アーツを放つ。
「《破断》!!」
凍った地面を踏みしだき、縦振りの一撃を叩きつける。
『シャハアアアアアア!!』
流石にこれだけでは切れない。筋肉繊維の途中で止められたようだ。
まぁいい。ある程度は想定出来ていた。
バジリスクがこちらへぐるん、と首を回してこちらを向く寸前、身体の硬直が解けた。
俺は即座に真上へ跳躍。バジリスクがこちらへ完全に向き直る前に横っ面を思い切り蹴飛ばして着地。
バジリスクがもう一度こちらを向くより早く──戦技アーツを放つ。
戦技アーツ
今ならきっと
着地するより前に引き抜いた黒剣を構え、目標である右前脚に狙いを定める。
「《音狩り》!!」
剣を振った瞬間、恐ろしく重い手ごたえ。
だがそれでも。
「斬ィ……れろォ!!」
両の剣を振り抜いた。
響いた音は一度だけ。けれど重なる音は何十か。はたまた何百か。
宙に舞ったのはバジリスクの指先──、右前脚の手首あたりから先全て。
「しまった…………やりすぎた」
凍り付いた大地にバジリスクの巨体が音を立てて倒れる、戦技アーツの衝撃が大きすぎたらしい。黒剣で叩き込んだのだから当然といえば当然だが。
即座に起き上がろうとするも、それよりも俺の行動の方が早い。
音もなく顔に近づき、黒剣を素早くバジリスクの左目に突き刺した。
『シャハアアアアアアアアアアアアアア!!』
片目を確実に潰す程度に突き、サッと引き抜く。剣先の肉片を払い飛ばし、手持ちの檻を全部バジリスクの額に叩きつける。
「これで終いだ」
自分でも驚くほど疲れ切った声が出た。
「ほう?それが貴様の切り札か?恐ろしい技じゃのう、《緋眼騎士》」
「あん?《臨界点》か」
振り返ると、いつの間にかそこに《臨界点》がいた。
「………。」
「どうかしたのかのう?」
疲れて反応するのも億劫だ。もう無視しよう。
あぁそうだ、サボってやがったんだから、あとはもう全部《臨界点》に任せよう。
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