大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

援護と被爆

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「新手!?」
しまった、シャルが居ないのすっかり忘れてた。最近あいつに頼りきりだったから気を抜いていた。
空に飛んでいたのは全長十メートルを優に超える巨大な鳥…らしき何か。目が三対で足…と言うか鉤爪が四本、翼が二対のわかりやすく魔獣の姿をした化け物。一目見てヤバい類のものだと直感した。
それがこちらを見下ろして──突っ込んできた。
「クソッタレ!!」
俺が嫌いなものでもかなりトップにくる「空を飛ぶ敵」の登場だ。理由は単純、攻撃がまず当たらないから。
せめてもう少し早く来ていれば煌覇で叩き落とせただろうに、銀剣はたった今抜いたばかりで落とす手段がない。
『────』
怪鳥は歯噛みする俺を嘲笑うかのように空中で一回転し、そのまま急降下してくる。着地点には当然俺──ではなく。
「馬車か!!」
させるか!と叫んで飛び上がり、屋根の上で迎撃するために構えようとするが、それを地上の雑魚魔獣共が謀ったように邪魔してくる。
「退けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
斬って払って蹴散らして。それでも目の前に見える五メートルの距離が異様に遠い。
急降下してきた怪鳥の周りに、赤紫の膜のようなものが見えた。恐らく魔力のコーティングだろう。
並の攻撃じゃあ傷一つつかない馬車の装甲をしっかり見ていたらしい。あれで馬車を消し飛ばす気か。
させねぇよ、絶対にさせるかよ。
「第一血界──」
背中の紋が熱を持つ。意識を集中させた右手も同様に熱を持ち、そこにヒトならざる異様な力が集う。
「《血──」
その時。
もう一度空を、影が覆い。
無数の炎刃が空から降り注いだ。
「ぐっおおおおおおお!?」
予想外の攻撃に、血界が発動する直前で手の中で霧散する。
魔法返しが反応しない。炎刃は容赦なく俺も含めて焼き切らんと降り注ぐ。
つまりこれは魔法で作られた炎ではなく、技術やスキルで生み出された炎だという事だ。
髪で握った金剣と銀盾で可能な限り弾くが、膨大すぎる量の炎刃を防ぎきることは不可能。数発身体を掠め、血が飛沫く前に蒸発していく。 
「痛ってぇなぁ糞!!」
ヒトの大きさで防御を固めても充分痛手を負ったのだ。俺より何倍も大きく、防御もロクにしていなかった魔獣達は見るも無惨な姿へと大変貌を遂げていた。もちろんあの怪鳥もだ。
「お、お待たせしました!」
「遅ェ!だが速ぇ!ナイスだ先生!」
上から落ちてきた先生が華麗に着地するのを見て、即座に俺は「返事は!?」と聞く。
「学校長からのお返事です!『わかりました。呑みましょう』以上です!」
「全部か!?全て条件を呑んだのか!?」
「無論じゃ。でなければ我輩がこんな辺境まで来るわけがなかろう」
声は先生の顔よりも低い位置から聞こえた。
「助かる。だがまさかお前が来るとはな《臨界点》」
俺が学校長に要求したのは三つ。
一つ目は二つ名持ち一人以上の援護。じゃなきゃ外じゃ危なっかしくて確保なんて出来やしない。二つ目は魔呼びの媚薬や結界を出入りするための札など、その辺の必需品全て。そして三つ目が医者。つまりはアーネ達を治したり出来る奴。
「こっちが要求のアイテムですね。あとは──」
「医者は?」
「私です。──あとは学校長から以下の手紙を預かってます。どうぞ」
「は?あんたが?大丈夫なのか?」
ともかく渡された手紙を受け取り、ご丁寧に押された封蝋をむしり取って開く。しかしあの学校長が手紙か。珍しいこともあったもんだ。
「時間が惜しい。外に向かうがよいな?《緋眼騎士》」
「あぁ頼む。多分出られても長時間はないからな……先生はアーネ達の看病たのむ」
「はぁい」
ペラリと便箋を開くと几帳面な文字が綺麗に並んでいた。
…………なるほど。なるほど?なるほど…
「…おーけー《臨界点》、喜べ。俺を頼ったこうなった以上、学校長殿は何がなんでもノルマを達成させるようご命令だ。つまるところ物理が効きにくい奴も魔法が効きにくい奴も全部とっ捕まえてこいとよ」
「知っとったわ貴様。なんとも面倒なことに我輩を巻き込みおって。後で覚えておれよ」
そう言った《臨界点》の口元は、本当に嫌そうに曲がっていた。
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