大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

馬頭と火力

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結構離れてたから、往復するとソコソコの時間にはなってたけど、同じ場所にいた。
さっき見つけたところから大して離れていなかったそいつは、三又の槍を手にウロウロと周りを歩き回ってる。
「何してんだろ?あの馬頭」
「知るか。魔獣がやろうとしてることわかる奴なんて、まぁいねぇよ」
昔っから魔獣の行動ってのは意味不明極まるものばかりだ。
農村に出て、家畜を食い荒らしたかと思えば、人には見向きもせずに帰っていき、次の日には村を何の躊躇もなく滅ぼした、という話はかなり有名な話だ。
「あ、アタイは疲れたしパスで。なんとかやっちゃってね?」
…ナタリさんは仕方ないな。いい働きっぷりだったらしいし。
まぁ、一発しか撃てないのは問題だが。
「なら、どうする?自分とナナキで片付けるか?」
「いや、一班と四班だけでやるよ。無理そうだったら…レィアさん、お願いね」
隣から声がしたと思えば、ラウクムくんだった。
「大丈夫か?アイツにはちょっと火力が足りないと思うが」
「私もいるし、大丈夫ですわ!」
お前に関しては不安しかねぇよ。
「なら、頑張ってくれ」
その一言で、ラウクムくんが頷き、何かを口に含んだ。
ちょうど親指一本ほどの大きさの赤黒いそれは、すぐに口の中に入り、見えなくなった。
「…なんかヤバイもん食った?」
「ダいじョウぶだよ。レぃアさん」
明らかに大丈夫じゃないんだが!?
身体的にも、脚と腕、あとは胸筋が一気に膨れ上がり、次の瞬間、ギュッと締まった。
そして。
ぼゥ、という聞いたこともない音を地面に鳴らせ、ラウクムくんが一人で馬頭を相手取り始めた。
「…ラウクム、なんかめっちゃ強くなってねぇ?」
タイマン張ってるんだけど。
槌で相手の槍を弾き、いなし、叩き落とす。
それも、両手で持っていた槌を片手で振るいながら。
「あらぁ?もしかして貴女わからないのでぇ?」
「うっさい。テメェは早く馬頭を倒せ」
「昨日辺りから私の扱い酷くありませんの!?」
そう叫びながらも氷の魔法を練り始めるアーネ。
そして、ラウクムくんが馬頭と戦っている後ろから四班の攻撃が炸裂する。
炸裂してるんだが…。
「火力足りてねぇな。剣士の女の子がまだマシって程度。かと言ってラウクムくんの役回りさせたら、一発ダメージ受けただけで崩れそうだな」
「うーん。彼女らの班?ってあのクズ男を中心に回してたらしいんだよ。アイツ、腹立たしい事にそれが出来るぐらい強かったらしいんだよ」
…ああ、そりゃそうか。ナナキの義手の一本を壊す程度のことは普通してたもんな。
ちなみにあの義手義足、三メートルほどの筋肉の塊みたいな大鬼オーガと昔殴りあっても、手の甲にヒビが少し入った程度だった。
武器とかの関係もあっただろうけど、腕一本を完膚なきまでに壊したヴォルテールくんは凄かった。
…ナイフって、そんなに強いイメージないんだけど、そこは戦技アーツとかスキルの関係だろうか。
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