大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
80 / 2,028
本編

決着と帰路

しおりを挟む
あと二体。牛頭と馬頭、一体ずつ。
ここで、やっと相手も危機を察知したらしい。それぐらいの脳みそはあるか。
闇雲に攻めていた二体は、一度、距離をとった。
「ナナキ、あいつらは魔法使うのか?」
「いや、今までは使ったことないね。近接だけの脳筋だよ」
中々の言い様だな。自分達も大差無いのに。
しかし、理解はした。
近接戦闘では、恐らくナナキは自分より強い。
そして、あの魔獣達は自分より弱い。ただ武器を振るうだけなら、自分一人でも対応できる。
「手足の方は大丈夫か?」
魔獣は地面を軽く蹴り、突進の構え。やっぱり、それぐらいしか方法がないか。
「大丈夫大丈夫。これぐらいなら余裕だよ」
なら良かった。ナナキは長時間の戦闘は耐えられないからな。
さぁ――来た!
ごっ!という音が地面を蹴り、馬頭だけが突っ込んでくる。
ふぅん、さっきの牛頭馬頭よりも速いな。
距離は一瞬で零に。そして案の定、ナナキに受け止められ。
後ろから回り込んできていた牛頭は自分が盾で押し止めるが…ナナキみたいに一切動かずに、とはいかなかったか。
あの巨体からしたら考えられないほど静かに背後に回り込んだもんだが、自分の背後は髪の毛で張ってあるセンサーが、それこそ目のようにして張り巡らせてある。
自分から背後を取るなら、自分が知覚して反応する数倍早く攻撃するとか、自分が気づかないように髪に触れないようにして近づくとか。
そのどちらも出来た者はいないけどね。
戦技アーツ…《旋風撃せんぷうげき》!」
体を捻り、横に相手の力を流すことで体制を崩して、相手の左脇腹から入り、跳ねる。
弾丸のような勢いで飛び、左脇腹から右胸へかけて、一直線に斬りこみ、普通なら抜ける。
けど、この戦技アーツは抜けずに、足と髪で相手にくっついた状態を維持し、そのまま連撃を繋げる。
縦に斬り下し、足払い。
ほぉら、眼前に驚いた相手の顔が。まぁ、牛の驚いた顔なんかわからんけどな。
ついにバランスを崩した牛頭。
ここで仕留めないとカッコ悪いよな?
「《火裂かれつ》!」
剣だけではなく、自分の体全体を使った、自分以外にはまず出来ない戦技アーツ
右の剣で左腕を斬り飛ばし、左の剣で右の脚を落とす。
盾で顎をブチ抜き、首を回して、引き戻した右の剣を腹に突き刺し、右手を離し、柄の部分を蹴り、テコのようにして内側から斬り出す。
宙を舞った剣を髪で掴み、トドメに左の剣で心臓を一突き。
「レィア終わった?その戦技アーツ長すぎだよー」
「すまんな。そっちは…聞くまでもないか」
一応目を向けると、穴だらけになった馬頭が。
…うん、あれって絶対に剣ではそうはならないよね。
「人形は?先に帰した?」
「うん。《煌覇こうは》の威力上がってたねぇ」
そんなことをいいながら、アーネを担ぐ。
コイツ、ついてくって言っときながら何かしたりしたか?
…もちろん、担ぐほど腕力がある訳では無いので髪で。非力すぎるな、自分。本気で鍛えようかな…?
本格的に日が落ちて、辺りは真っ暗。早く戻らないとみんな心配するな。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉
恋愛
魔物を倒す英雄となる運命を背負って生まれた侯爵家嫡男ルーク。 しかし、赤ん坊の時に魔獣に襲われ、顔に酷い傷を持ってしまう。 英雄の婚約者には、必ず光の魔力を持つものが求められる。そして選ばれたのは子爵家次女ジーナだった。 顔に残る傷のため、酷く冷遇された幼少期を過ごすルークに差し込んだ一筋の光がジーナなのだ。 ジーナを誰よりも大切にしてきたルークだったが、ジーナとの婚約を邪魔するものの手によって、ジーナは殺されてしまう。 誰よりも強く誰よりも心に傷を持つルークのことが死してなお気になるジーナ。 ルークに会いたくて会いたくて。 その願いは。。。。。 とても長いお話ですが、1話1話は1500文字前後で軽く読める……はず!です。 他サイト様でも公開中ですが、アルファポリス様が一番早い更新です。 本編完結しました!

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

ボッチ英雄譚

3匹の子猫
ファンタジー
辺境の村で生まれ育ったロンは15才の成人の儀で「ボッチ」という聞いたこともないジョブを神様から授けられました。 ボッチのジョブはメリットも大きいですが、デメリットも大きかったのです。 彼には3人の幼馴染みと共に冒険者になるという約束がありましたが、ボッチの特性上、共にパーティーを組むことが難しそうです。彼は選択しました。 王都でソロ冒険者になることを!! この物語はトラブルに巻き込まれやすい体質の少年ロンが、それらを乗り越え、いつの日か英雄と呼ばれるようになるまでを描いた物語です。 ロンの活躍を応援していきましょう!!

どこにでもある異世界転移~第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!

ダメ人間共同体
ファンタジー
第三部 今最後の戦いが始る!!・・・・と思う。 すべてのなぞが解決される・・・・・と思う。 碧たちは現代に帰ることが出来るのか? 茜は碧に会うことが出来るのか? 適当な物語の最終章が今始る。 第二部完結 お兄ちゃんが異世界転移へ巻き込まれてしまった!! なら、私が助けに行くしか無いじゃ無い!! 女神様にお願いして究極の力を手に入れた妹の雑な英雄譚。今ここに始る。 第一部完結 修学旅行中、事故に合ったところを女神様に救われクラスメイトと異世界へ転移することになった。優しい女神様は俺たちにチート?を授けてくれた。ある者は職業を選択。ある者はアイテムを選択。俺が選んだのは『とても便利なキッチンセット【オマケ付き】』 魔王やモンスター、悪人のいる異世界で生き残ることは出来るのか?現代に戻ることは出来るのか?

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...