大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

馬と鍵

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と、言う訳で、聖学特製の高性能な馬車を一人でせっせか用意し、積み込む荷物も見直して準備は完了。ちなみにアーネは何やら用事があるとフラフラどこかへ行き、丁度俺が最後の荷物を積んだタイミングで戻って来た。
その後、しばらくして《雷光》が先生を連れて来たのだが。
「『ん?』」
《雷光》が誰かをおぶってゆっくり歩いてくる。
おぶられている人物を緋眼でじっと見ると、ついさっき会ったばかりの人物であることに気づいた。
「…トゥーラ?」
「はい?誰ですの?」
「あー、聖学行きの時に乗ってきた龍種の人、だな」
しかし…なんでまたあんなにぐったりとしてるんだ?
「ま………待たせたな、《緋眼騎士》。用意は出来ているか?」
「お、おう。とりあえずトゥーラ……先生が引率なのか?」
「あぁ。ひとまず……その、なんだ、私も一応女の身なんだが……」
「?」
『…今代の、つまり《雷光》はそこのトゥーラを下ろしたいんだと』
あぁ、重いから。別に《雷光》が小柄だとか非力すぎるとか、そう言うんじゃなくてトゥーラ先生が普通に大きいのか。体格的にも身体の部位的にも。
ちなみに《雷光》は体格的に言えば俺以上アーネ未満ぐらい。凹凸と言うか起伏は少ないがな。
って、そんな事言ってる場合じゃなくて。
「とりあえず先生を馬車の中に入れろよ。………確認するが、本人に許諾は取ってるんだよな?」
「もちろんだ。…と、待て。スレイプニルは使わないのか?」
《雷光》がさらりと口に出したのは、前に何度かお世話になっている八本足の馬型魔獣の事。
「あー、誰が鍵もってんだっけ?」
「双子の先生のどちらかだろう。確か魔獣の飼育はあの二人の管轄だからな」
『どうする、探すのか?』
仕方ないだろ。と言うか、よくよく考えたらスレイプニルじゃないと危険すぎる。普通の馬だと魔獣の餌にしかならんが、スレイプニルなら自衛も出来るはずだし……よし。
「ちょい待ってろ。探してくる」
「どちらがどちらか忘れたが、職員室に一人いたぞ」
すぐに走って探しに行くが、いたのはオードラル先生。鍵を持っているかどうか聞くと、面倒くさそうな顔をして「予備のヤツ貸してやる」と渡してくれた。
「クードラル先生は元気?」
「あぁ元気だ。今は王都の方にいるがな」
ふーん。向こうで何かやることがあるんだろうな。
それはともかく、オードラル先生に「さんきゅー」と適当に礼を言い、走って戻る。
「戻ったか。鍵は?」
「借りてきたよ」
急いで荷物をスレイプニル用の馬車に移す。
「時間も無いから出してくれ」
「へーへー」
とりあえず適当に馬の尻を叩く。随分とまぁ雑な扱いだが、これでもちゃんと馬は動いてくれる。賢い馬達だな。基本的に南へずっと下っていくだけだから、判断も簡単だし…さて。
「おい《雷光》、とりあえずそこに転がってる先生について説明してくれ」
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