(完結)やりなおし人生～錬金術師になって生き抜いてみせます～

誰も信じない

「ーーっ!?」

起き上がるとわたくしの部屋のベッドにいた。

あれは夢だと言うの？いいえ、痛みもあったし夢とは思えないわ。

それに手をみると小さくなってる。

ーー愛し子よ。そなたはこのように死ぬべきではない。時間を巻き戻そう。

意識がなくなる前の言葉を思い出した。

聞いた事のない声。それが頭の中に響いた。

「お嬢様、お目覚めですか？」
「いやああーー!!」

入ってきた侍女を見て悲鳴をあげる。この専属侍女はわたくしを裏切った。

「お嬢様、どうしたのですか？」
「来ないで、来ないでよ！」

枕を投げつけて侍女を追い出す。

巻き戻ったのはいいけど、ここにはわたくしのことを捨てた人しかいないわ。その中で生きるなんて苦痛しかない。

そう思った瞬間、知らない人の人生の記憶が流れてきた。魔法ではなく化学が発展してた世界。そこで30歳まで生きて馬のない乗り物に轢かれて死んだ記憶。

「これって異世界転生？」

アレクシア・バートンって高校生の時にやった乙女ゲームの悪役令嬢じゃない。王子の名前もヒロイン名前も一緒だ。

それじゃ物語にそって断罪されたってこと？

でも、わたくしは虐めなんてしてないわ。

それに愛し子なんて設定もなかったと思う。

似た世界ってことなのかしら？ 現実に生きてるもの。ゲームの世界だと思うのはいけないわね。

「お嬢様、失礼します」

侍女長のマーサが入ってきた。

「お嬢様、アンリが何か粗相をしたのでしょうか？」

何もしてないわ、まだ。

「マーサ、わたくしの専属侍女を変えてくださらない？ 今まで我慢していたけどわたくしとアンリは合わないわ」

裏切ったという事実がわたくしの中ではある。それなのに、これからも側にいられるのは精神的にきついわ。

「かしこまりました。別の方を付けますね。それまでの間は私でお許しくださいませ」
「ええ。よろしくね」
「それにしてもお嬢様、ずいぶんと大人びた感じがいたします」

今のわたくしって何歳なのかしら？

「そう？ 今までは無理に子供ぽくしてたの。これからは止めるわ」
「左様ですか。お嬢様も淑女になられるのですね。それでは準備いたしましょう」
「準備？」
「お忘れですか？ 今日はお嬢様の洗礼の日ですよ」

洗礼は貴族が５歳の時に神殿で行うものだ。５歳まで巻き戻ったのね。

子供用のドレスが運ばれてくる。

「お嬢様、どちらのドレスになさいますか？」
「そうね。水色で金の刺繍がしてあるドレスでお願い」

前はピンクやら赤のドレスが好きだったが、前世の記憶の影響か水色とか薄い緑色のドレスの方が着たい。

ドレスを着せられ髪をハーフアップにしてもらう。

「化粧はいいわ」

化粧をされそうになり止めた。まだ５歳なんだから必要ないし、今から化粧なんてしてたら早いうちにお肌がボロボロになってしまう。

マーサに連れられて玄関に行くと父と母がいた。

この２人もわたくしを捨てた。何もしてないわたくしを。

そう思うと体に力が入った。

「アレクシア、可愛いわ」
「アレクシアは私の天使だな」

嘘つき。

「ありがとうございます」

わたくしはもうあなたたちを信じないわ。