日本ワインに酔いしれて

三枝 優

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第2章

安心院ワイン イモリ谷シャルドネ2019

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「いらしゃ~い」

 土曜日の夕方、”いい天気”の扉が開いた。
 入って来たのは、常連の早乙女健司と三崎海斗であった。
 まぁ、最近は来店する頻度が減って、元常連と言ってもいいくらいなのであるが。

「カウンターでよろしいでしょうか~?」
「ああ、大丈夫だよ」

 案内された席の隣には、柏木洋子がパスタを食べている最中であった。

 健司は白ワインを、海斗はウーロン茶を注文した。

「こんにちわ、最近よく会うね。まさか毎日来てるわけじゃないんだろ?」
「う・・・毎日・・・じゃないわよ」

 実際は、”ほとんど”毎日来ている。

「確か、一人暮らしだったよね。自炊とかしないの?」
「・・・うちにはフライパンも鍋もないから・・・」
「え”?」

 おどろく健司と海斗。

「だってだって、もともとは3か月だけの異動ってことだったから。そしたら、延期になっちゃったのよ~」

 頬を膨らませる洋子。

「だいたい、忙しくて料理を作る気にもならないわよ」
「はあ、大変だねえ。IT関係だっけ?」
「うん、そんなところよ」

 ため息をつく。


「ところで、先週は伊豆にツーリングに行ったんだけどよかったわよ。中伊豆ワイナリーにも行ったわ」
「へえ、あそこは行ったことは無いんだよ。どうだった?」
「なんか、すごかった。ワインも美味しかったわよ」
「へえ、いいねえ」
 
 白ワインを飲みながら、健司は今度行って見ようと思った。

 注文したワインは

 大分県宇佐市安心院町 安心院(あじむ)ワイン シャルドネ イモリ谷 2019

 切れのある酸味が料理にもよく合う。


「そういえば、あなたはバイクの免許とか取らないの?」

 洋子が海斗に聞いてきた。

「あ・・バイクの免許じゃないですが、車の免許をとりに教習所に通い始めました」
「へえ、そうなんだ」

 健司も初耳であった。

「それで、免許が取れたら父親から原付をもらうことになってます」
「へえ、いいわね。スクーター?。最近は原付も結構高いからもらえるならいいわね」
「いえ、古いバイクなので、そんなに高くはないと思いますよ」
「なんていうバイクなの?」
「ホンダのモンキーっていう、ちっちゃなバイクです」

「「え!?」」

 その瞬間、健司も洋子もびっくりした顔で海斗の方を向いた。

「え?どうしたんですか?」

 二人の表情に、引き気味の海斗。

 健司は、スマホで検索し画面を海斗に見せた。
 バイクの中古のサイトである。

「え・・・こんなに高いんですか・・・?」

 そこに表示されていたの値段は、どれも数十万円の値がついている。
 かなり古い年式でも、高値がついている。

「50ccのモンキーは絶版なうえに人気があるバイクだからね」
「最近、特に人気は高いわよ~。値段がどんどん上がってるわ。ただで手に入るなんてラッキーだわ」
「せっかくのモンキーならメットやグローブをバイクに合わせてコーディネートしないと」
「その前に、ちゃんと整備してから乗らないと駄目よ」

 健司も洋子も、興奮気味に話してくる。

「はぁ・・・」

 全くの無自覚だった海斗としては、どれほどすごい事かわかっていなかった。
 
 
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