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11 紫仙山での修行
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麒一が呼び寄せた結界師たちがそろうまで、柳と保見はゆったりと体を休めることができた。日を追うたびに、各地から一人、また一人と結界師達が増えていく。麒一の小屋には入りきらなくなってくると、柳は即席で掘建て小屋を拵えた。
紫仙山には指折りの結界師達が集結した。全国各地から「麒一殿の頼みとあらば」と五十名ばかりがはるばるやって来た。
「手順は話した通りだ。柳、保見、いいか?」
「はい。では、行ってまいります」
「行ってまいります」
柳と保見は山へ入って行った。奥深くへと進んでいくと、急に木々が生えていない、開けた場所へ出た。
「保見。ここで始めよう」
柳は背負っていた荷物を地面に置くと、腰から下げていた法螺貝を持ち上げて、吹き鳴らした。その音は山中へ響き渡り、山の麓に待機する結界師達の耳にも届いた。
「合図だ! 結界始め!」
麒一の声に応えて、結界師達は一斉に術を施した。山を丸ごと囲むように結界が張られていく。準備は整った。いよいよ保見の封印を解放する。
「いくぞ、保見。できるだけ、心を落ち着かせるんだ、いいな?」
「はい、師匠」
「少しずつ保見の霊力をおさえている封印を弱くしていく。段階を踏んで、保見が制御できる霊力の量を増やしていくんだ」
保見は黙って頷いた。そして深呼吸をした。
柳は保見の額に薬指を当て、何かを描くかのように動かした。すると、なぞった部分がキラキラと光り始め、浮き上がってきた。そうすると柳は和紙を保見の額に宛がって、何かを唱えた。キラキラしたものがほんのりと和紙に染み込むのを確認すると、唱えるのをやめて和紙を剥がし取った。
「さぁ、少し結界を弱めたが、どうだ?」
最初は何が起きたのか分からず、保見は首をかしげていたが、しばらく大人しくしていると、霊圧がふつふつと体の底から湧きおこってくる感覚がした。
「柳さん! 霊力の感じがする!」
「よし」
柳は保見の目の前で胡坐をかいた。保見にも同じようにするように言うと、二人は向き合って座った。
「いいか? 霊力が完全に封じられている、無の状態の感覚はおぼえているだろ?」
保見は、うん、と頷く。修行中は「はい」で返事をしろ、と柳に言われ、保見は「はい!」と言いなおした。
「その無の状態の感覚を決して忘れないことだ。これからは、保見自身が、今の霊力がある『有の状態』から、霊力の無い『無の状態』に持っていかなければならない」
はい! と保見は返事をする。
「まずは、やってみろ。霊力を無にしてみるんだ」
柳に言われるまま、保見は意識を集中させた。無くなれ、無くなれ、と念じながら力んでみたが、何も変わらない。力みすぎて、最後には霊力が増えてしまった。
「よし。いいだろう。まぁ、何も知らないとそうなる。では、今度はやり方を教える。いいか、想像するんだ」
柳は保見に目を閉じるよう促した。
「まず、自分の体内は、『泉』だ。きれいな新鮮な水で満たされた、『泉』だ」
保見は、自分の体内が水で満たされている光景を想像した。透き通った、きれいな水で満ち溢れている。
「その『泉』の水は、止めどなく湧き出しては、『泉』を満たしている。どこから湧き出ているかというと……」
とんっと、柳は保見の丹田に触れた。
「ここだ」
保見は、臍の下からわき水が全身へ広がる光景を思い描いた。ふつふつと勢い良く水は湧き上がる。
「いいか? そうしたら、そこからとんでもない量の水が思い切り沸き起こってくる。まるで火山が噴火するみたいに……」
保見は言われた通りに想像した。今まで穏やかに湧き上がっていた泉が一変して、爆発的な噴射を始める。その想像を始めると、自分自身の霊力放出が増えたのを感じた。一気にグンッと霊力が大きくなったので、保見はとっさに怖くなり想像を止めて、
「柳さん! 駄目だよ! 霊力が増えちゃった!」
と、柳に訴えた。柳は静かに頷くと、
「それでいい」
と言った。
「霊力の増やし方は分かっただろ? では、霊力を減らすには……無くす為には、どうしたら良いと思う?」
柳は保見の反応を楽しむかのように、少し笑みながらそう言った。
「反対……のことを、すればいいの?」
やってみろ、という柳の言葉に、保見は再び目を閉じ、体内の泉に集中した。
こんこんと湧き上がる水……それが少しずつ弱く、少なくなっていく……。内側へ、内側へ……水が保見の臍の下へ集まっていく。湧き出た場所へ、逆に入り込んでいく。ぐんぐん水は減っていき、保見の泉はからっぽになった。その瞬間、
「今! 柳さん、今、『無の状態』になった!」
よし! と柳は微笑んだ。
「いいぞ、保見。飲み込みが早い。しばらくは、この霊力が最大の状態から無の状態へ、無の状態から最大の状態へ、という霊力の加減調節をひたすら反復練習する。同じことの繰り返しだが、より素早く確実に制御できるように集中しろ。さぁ、もう一度だ」
保見は何度も泉が湧き上がっては引いていく様を想像し、霊力の扱いに少しずつ慣れていった。回を重ねるごとに、より素早く霊力を上げ下げできるようになっていった。
「よし。今日はここまでだ」
保見は今まで閉じっぱなしにしていた目をゆっくりと開いて柳を見た。辺りはすっかり紅に染まっており、山の上から夕日が見下ろせた。
「良く集中を切らさずに続けたな……大したものだ」
「柳さん! 私、夢中で……時間を忘れてた。あっという間だったの。私、霊力が調節できるようになってきたみたい!」
柳は優しく微笑むと、保見の頭を撫でてやった。
「あぁ、初日にしては上々だ。だが、思い上がりは禁物だ。保見の霊力はまだまだ大きい。今はそのほとんどを封印してあるから制御できるが、封印の力をもっと弱めれば、霊力は大量に溢れだし、思うように操れなくなってくる」
保見はそれを聞いて、少し表情を曇らせたが、すぐに笑顔に戻り、
「でも、修行を積めばできるようになる……そうでしょ? 私、明日も頑張るから、柳さん、もっと色々教えて!」
目をキラキラ輝かせてそう言った。
「あぁ」
柳は優しく笑うと、荷物から硯と水晶を取り出し、かつて常葉が保見にしたように硯で水晶を研ぎ、左手の薬指で保見の額に光の粉を塗りつけた。すぅっと保見の体から霊力が消えて、『無の状態』になった。
「稽古以外の時は、今まで通り、保見の霊力は封じておく。いいな?」
「はい!」
柳が腰の法螺貝を吹き鳴らすと、それが合図となり、山の麓の結界師達は結界を解いた。柳と保見は早足で山を下り、なんとか日が完全に沈む前に麒一の家へ帰り着いた。麒一はいつものように夕食の用意をして待っていてくれた。
「お疲れさん。さあ、飯にしよう。とっておきの鍋ができてる」
その日の夕食は賑やかなものとなった。何十といる結界師達はこぞって飯を何杯も御変りしたし、上機嫌な麒一は柳に酒を飲め飲めと酌ばかりしていた。保見も沢山食べ、沢山話した。結界師達は皆気さくに保見に話しかけてくれた。「俺たちが結界を張ってるから、安心して稽古しな」「なかなか筋がいいそうだね。将来は退治屋になれるんじゃないかな」「ここいいるやつらは、霊力があるがゆえに皆同じような辛い過去を持ってる。保見ちゃん、一人じゃないんだよ」様々な人と言葉を交わしたが、保見は今までにないほど、何度も「ありがとう」と口にしていた。
人と関わることが、こんなに嬉しくて楽しいとは、知らなかった。今まで自分が生きていた世界は、なんてちっぽけで貧しいものだったんだろう……。世界はこんなにも広い。様々な人が、色んな過去を抱えて、生きている。そんなことにも気付かないで、私は私の世界に閉じこもって、勝手に他人を恨んでいたんだ……。
ぽろり……と涙がこぼれた。保見は自分でも驚いた。「悲しい」というには暗すぎてしまうし、「悔しい」というには心穏やかすぎる今の自分の気持ちが、なんとも言い表せないが、しっかりと分かる。「やっと」という言葉が一番近いかもしれない。保見はやっと、本当は人間が嫌いではないことに、気づけたのだ。
柳と保見の修行初日はあっという間に過ぎ去った。これから毎日、厳しい修練を続け、保見は成長していく。
それは、人としても、霊力者としても、間違いなく成長していくのである。
南の果て朱厳山。常葉はずっと山に籠って、体内の神羅との静かな戦いを続けていた。柳と雷獣の戦いが終わってから、神羅はすっかり大人しくなり、今ではもう常葉の口がひとりでに発することは無くなった。しかし、だからと言って安心してはいられなかった。もっと霊力を高めて、二度と神羅の好きにはさせない……常葉はそう心に決めて、厳しい修行に打ち込んでいた。
まだ日が昇らない早朝に起きだして、真っ暗な山道を頂上まで駆けあがる。そして日の出を拝んだ後、冷たい滝に打たれ、心を無にして邪念を祓う。そのあとは、食糧の調達をし、食事が済むと術の巻物を片っ端から広げ、基本に立ち戻って全てを復習する。それが終わるころには太陽は最も高い位置にくる。ここで昼食をとり、午後からは自ら編み出した術を修練する。時には、式神を使い、相手役に見立てて戦闘訓練などもする。そして、日が沈む頃には、体中の霊力を充実させ、神羅にさらなる封印を施す。これが常葉の日常だった。
山に籠って五年たった頃、常葉はある者と再会する。その者は朝方やってきた。
「あの……」
滝に打たれている最中に、女の声を聞いた気がした。それは小さな声だったので、滝の音にかき消され、普通であれば聞こえるはずがないが、常葉は鋭く反応した。また自分の口が意に反して言葉を発したのかと思ったのだ。
バシャッと滝から飛び出て、岩の上へ降り立ち辺りを見回すと、滝壺のほとりに淡い緑色の着物を着た女が一人立っており、こちらを見ていた。こんな山奥に女一人でいるなんて明らかに不審だったが、その姿を一目見た瞬間、他人とは思えなかった。常葉は女の元までバシャバシャと泳いで近づくと、水から上がりながら、
「箕狐じゃないか! 何してるんだ? こんなところで!」
そう叫んで嬉しそうに笑った。
「あぁ! やっぱり常葉はんでしたかぁ……よかったわぁ……ご無事でらしたんねぇ」
泣きそうな笑顔でそういうと、がばっと常葉に抱きついた。
「心配しとりました……常葉はんに何かあったんじゃないかって……姉さんも、それは大層嘆いておられでぇ……」
「心配掛けてすまなかった……。今はだいぶ落ち着いたんだが……色々あってな。でも、どうしてここに? それに、箕狐、耳はどうしたんだ? 妖気も全く感じないが……」
いつもなら、狐耳が2つ生えているはずの箕狐の頭には何も生えていない。
「うち、今は人間とかわりあらしまへんの。うちらの決まり事がありますのよ。人間界へ出る時は、人間に完全に化けて行かなければならんのよ。霊力も封じて、人間に正体がバレないように徹底しとるんよ」
そうなのかい、と常葉は感心する。全く人間そのものだ。妖怪が化けているとは誰も気づかないだろう。
「良くここが分かったな」
常葉は濡れた着物のまま、箕狐の隣の地面へ腰を下ろした。箕狐も常葉の隣に座ると、
「探しましたよ……大変でしたわぁ」
そう言って、大きな溜息をついた。
「常葉はんの居所がさっぱりなもんでぇ、柳さんと保見ちゃんに会えれば何か分かる思うて探してたんですぅ。二人の気を追って、途中までは順調だったんよ? でもある日ぱたっと二人の気が感じられなくなってしまって……きっと霊山にこもったんやわぁ思うて。しらみつぶしに霊山を渡り歩いてたんよ……。五年間……長かったわぁ……」
「五年間も各地を渡り歩いてたのか!? 人の姿で?」
箕狐は疲れた笑顔でふふっと微笑むと頷いた。
「これでやっと姉さんに報告できますぅ。きっと喜びなはるわぁ」
「いや」
常葉はするどく言った。
「オレの居場所は誰にも教えないでくれ。正直、箕狐に見つけられたのも驚きなんだ。詳しくは話せないが、オレは今とても油断ならない状況にある……」
そう話しながら常葉はおもむろに右手を箕狐にかざした。それを見て箕狐はばっと後ろへ飛びのいた。
「いややわ! 常葉はんっ! うちに術かける気なんね? 忘れさす気なんね? あんまりやわっ!」
「すまない……箕狐。しかし……そうするのが一番いいんだ。忘れてしまえば楽になる。オレのことなんて、忘れてしまえば……」
「馬鹿! 常葉はんの馬鹿っ! 何にも知らんで……うちの気持ちも……何も分かろうとせんのに……ずるいわぁ……どれだけ……うちがどれだけ常葉はんのことを……」
箕狐はぽろぽろと涙をこぼしながら常葉に背を向けて走りだした。今の箕狐はただの人間と同じく霊力がない状態だった。逃げることしかできなかった。木の根につまずき、崖を転げ落ち、箕狐はがむしゃらに逃げた。泥だらけに汚れながら、必死に自分の記憶を守ろうとしていた。常葉に会いたくて、五年間ずっと常葉のことを想い続けていた。やっと会えたと思ったらこんな仕打ち、あんまりだった。
「危険に巻き込んでしまうかもしれない! オレに関わらないほうがいいんだ。箕狐! 分かってくれ!」
逃げる箕狐の左腕を常葉がつかんだ。
「いややぁっ!」
常葉が右手を箕狐にかざす。常葉と箕狐の目があった。箕狐の目は悲しみから恐れの色へ変化し、常葉が呪文をつぶやこうと唇を動かした瞬間、怒りの色を帯びた。その時、
──憎いだろ?──
箕狐の脳裏にぱっと浮かんだ。言葉とも声とも映像とも分からないこの問いかけは、ぐんぐんと大きさを増して箕狐の心に迫ってきた。
──憎いよなぁ? わかるぜ? 憎いさ──
問いかけは深い闇になって箕狐の心を飲み混んでいった。
気がつくと箕狐は暗い空間に一人立っていた。見渡すかぎり真っ暗な空間。ここはどこだろう? そう思うが早いか、目の前にぼんやりと灰色の映像が浮かんだ。これは箕狐自身の記憶なのだと、箕狐にはなんとなく分かっていた。
「姉さん、今日も来てはりますよ、常葉とかいう人間」
箕狐の目の前には白狐嬢がだるそうに横たわっている。
「追い返しな。何度も言わせるんじゃあないよ、あんたには会わないって、そう伝えな」
箕狐は「はい」と返事をすると踵を返して立ち去る。次の瞬間、ぎゅぎゅぎゅと映像が早送りされ、地面から常葉がにゅるりと目の前に現れる。
「あの……常葉はん? 姉さんは会わない言うてます」
「まいったなぁ」
そう言いながら頭をかく常葉は無邪気な少年のように笑っていた。
「なぁ、あんた名はなんていうの?」
「箕狐です」
「箕狐かぁ。なぁ、箕狐。どうしたら白狐嬢はオレに会ってくれると思う?」
箕狐をまっすぐ見つめる常葉の眼差し。箕狐の心の奥がぽっと熱くなる。
今度は水色の映像が浮かんできた。
「常葉はんをお連れしました」
箕狐は白狐嬢の部屋に常葉を通した。
「あぁ、御苦労。箕狐はもう下がって良い。二人にさせておくれ」
そう言う白狐嬢の瞳は、ただ常葉を見つめて微笑んでいた。常葉は箕狐を悪いな、という表情で見送る。その表情が何とも優しく、温かかった。その瞬間だけは、常葉の視線は箕狐のものだった。
今度は桃色の映像。
「ねぇ箕狐、聞いとくれよ! 常葉のやつがさ……」
にこにこしながら無邪気に話す姉さんの話を聞きながら、どこか悲しいような虚しい様な、箕狐はただ愛想よく微笑むように心がけた。
「まったく、常葉はんは困った方ですねぇ……」
常葉が好きだ。紛れもなく、それは確かだった。しかし誰にも打ち明けられなかった。常葉は姉さんのもの。常葉はねえさんのもの。私のものじゃあ、ない。
──できるなら、うちにだって。姉さんみたいに、うちだって常葉はんを──
「独り占めしたい」
ぱんっと映像が弾けた。箕狐ははっと我に返る。常葉が箕狐の左腕をつかんで右手をかざしていた。あぁ……もう逃げ切れない。そう思い目を閉じた瞬間、常葉の掌が優しく頭上に降ってきた。
常葉は箕狐を抱き寄せ、そっと箕狐の頭を撫でた。そして言った。
「オレを、独り占めしたいんだろ? いいぜ。叶えてやるよ。そのかわり……」
常葉は箕狐の耳元で何やらひそひそと呟いた。箕狐は一度だけゆっくりと頷いた。
紫仙山には指折りの結界師達が集結した。全国各地から「麒一殿の頼みとあらば」と五十名ばかりがはるばるやって来た。
「手順は話した通りだ。柳、保見、いいか?」
「はい。では、行ってまいります」
「行ってまいります」
柳と保見は山へ入って行った。奥深くへと進んでいくと、急に木々が生えていない、開けた場所へ出た。
「保見。ここで始めよう」
柳は背負っていた荷物を地面に置くと、腰から下げていた法螺貝を持ち上げて、吹き鳴らした。その音は山中へ響き渡り、山の麓に待機する結界師達の耳にも届いた。
「合図だ! 結界始め!」
麒一の声に応えて、結界師達は一斉に術を施した。山を丸ごと囲むように結界が張られていく。準備は整った。いよいよ保見の封印を解放する。
「いくぞ、保見。できるだけ、心を落ち着かせるんだ、いいな?」
「はい、師匠」
「少しずつ保見の霊力をおさえている封印を弱くしていく。段階を踏んで、保見が制御できる霊力の量を増やしていくんだ」
保見は黙って頷いた。そして深呼吸をした。
柳は保見の額に薬指を当て、何かを描くかのように動かした。すると、なぞった部分がキラキラと光り始め、浮き上がってきた。そうすると柳は和紙を保見の額に宛がって、何かを唱えた。キラキラしたものがほんのりと和紙に染み込むのを確認すると、唱えるのをやめて和紙を剥がし取った。
「さぁ、少し結界を弱めたが、どうだ?」
最初は何が起きたのか分からず、保見は首をかしげていたが、しばらく大人しくしていると、霊圧がふつふつと体の底から湧きおこってくる感覚がした。
「柳さん! 霊力の感じがする!」
「よし」
柳は保見の目の前で胡坐をかいた。保見にも同じようにするように言うと、二人は向き合って座った。
「いいか? 霊力が完全に封じられている、無の状態の感覚はおぼえているだろ?」
保見は、うん、と頷く。修行中は「はい」で返事をしろ、と柳に言われ、保見は「はい!」と言いなおした。
「その無の状態の感覚を決して忘れないことだ。これからは、保見自身が、今の霊力がある『有の状態』から、霊力の無い『無の状態』に持っていかなければならない」
はい! と保見は返事をする。
「まずは、やってみろ。霊力を無にしてみるんだ」
柳に言われるまま、保見は意識を集中させた。無くなれ、無くなれ、と念じながら力んでみたが、何も変わらない。力みすぎて、最後には霊力が増えてしまった。
「よし。いいだろう。まぁ、何も知らないとそうなる。では、今度はやり方を教える。いいか、想像するんだ」
柳は保見に目を閉じるよう促した。
「まず、自分の体内は、『泉』だ。きれいな新鮮な水で満たされた、『泉』だ」
保見は、自分の体内が水で満たされている光景を想像した。透き通った、きれいな水で満ち溢れている。
「その『泉』の水は、止めどなく湧き出しては、『泉』を満たしている。どこから湧き出ているかというと……」
とんっと、柳は保見の丹田に触れた。
「ここだ」
保見は、臍の下からわき水が全身へ広がる光景を思い描いた。ふつふつと勢い良く水は湧き上がる。
「いいか? そうしたら、そこからとんでもない量の水が思い切り沸き起こってくる。まるで火山が噴火するみたいに……」
保見は言われた通りに想像した。今まで穏やかに湧き上がっていた泉が一変して、爆発的な噴射を始める。その想像を始めると、自分自身の霊力放出が増えたのを感じた。一気にグンッと霊力が大きくなったので、保見はとっさに怖くなり想像を止めて、
「柳さん! 駄目だよ! 霊力が増えちゃった!」
と、柳に訴えた。柳は静かに頷くと、
「それでいい」
と言った。
「霊力の増やし方は分かっただろ? では、霊力を減らすには……無くす為には、どうしたら良いと思う?」
柳は保見の反応を楽しむかのように、少し笑みながらそう言った。
「反対……のことを、すればいいの?」
やってみろ、という柳の言葉に、保見は再び目を閉じ、体内の泉に集中した。
こんこんと湧き上がる水……それが少しずつ弱く、少なくなっていく……。内側へ、内側へ……水が保見の臍の下へ集まっていく。湧き出た場所へ、逆に入り込んでいく。ぐんぐん水は減っていき、保見の泉はからっぽになった。その瞬間、
「今! 柳さん、今、『無の状態』になった!」
よし! と柳は微笑んだ。
「いいぞ、保見。飲み込みが早い。しばらくは、この霊力が最大の状態から無の状態へ、無の状態から最大の状態へ、という霊力の加減調節をひたすら反復練習する。同じことの繰り返しだが、より素早く確実に制御できるように集中しろ。さぁ、もう一度だ」
保見は何度も泉が湧き上がっては引いていく様を想像し、霊力の扱いに少しずつ慣れていった。回を重ねるごとに、より素早く霊力を上げ下げできるようになっていった。
「よし。今日はここまでだ」
保見は今まで閉じっぱなしにしていた目をゆっくりと開いて柳を見た。辺りはすっかり紅に染まっており、山の上から夕日が見下ろせた。
「良く集中を切らさずに続けたな……大したものだ」
「柳さん! 私、夢中で……時間を忘れてた。あっという間だったの。私、霊力が調節できるようになってきたみたい!」
柳は優しく微笑むと、保見の頭を撫でてやった。
「あぁ、初日にしては上々だ。だが、思い上がりは禁物だ。保見の霊力はまだまだ大きい。今はそのほとんどを封印してあるから制御できるが、封印の力をもっと弱めれば、霊力は大量に溢れだし、思うように操れなくなってくる」
保見はそれを聞いて、少し表情を曇らせたが、すぐに笑顔に戻り、
「でも、修行を積めばできるようになる……そうでしょ? 私、明日も頑張るから、柳さん、もっと色々教えて!」
目をキラキラ輝かせてそう言った。
「あぁ」
柳は優しく笑うと、荷物から硯と水晶を取り出し、かつて常葉が保見にしたように硯で水晶を研ぎ、左手の薬指で保見の額に光の粉を塗りつけた。すぅっと保見の体から霊力が消えて、『無の状態』になった。
「稽古以外の時は、今まで通り、保見の霊力は封じておく。いいな?」
「はい!」
柳が腰の法螺貝を吹き鳴らすと、それが合図となり、山の麓の結界師達は結界を解いた。柳と保見は早足で山を下り、なんとか日が完全に沈む前に麒一の家へ帰り着いた。麒一はいつものように夕食の用意をして待っていてくれた。
「お疲れさん。さあ、飯にしよう。とっておきの鍋ができてる」
その日の夕食は賑やかなものとなった。何十といる結界師達はこぞって飯を何杯も御変りしたし、上機嫌な麒一は柳に酒を飲め飲めと酌ばかりしていた。保見も沢山食べ、沢山話した。結界師達は皆気さくに保見に話しかけてくれた。「俺たちが結界を張ってるから、安心して稽古しな」「なかなか筋がいいそうだね。将来は退治屋になれるんじゃないかな」「ここいいるやつらは、霊力があるがゆえに皆同じような辛い過去を持ってる。保見ちゃん、一人じゃないんだよ」様々な人と言葉を交わしたが、保見は今までにないほど、何度も「ありがとう」と口にしていた。
人と関わることが、こんなに嬉しくて楽しいとは、知らなかった。今まで自分が生きていた世界は、なんてちっぽけで貧しいものだったんだろう……。世界はこんなにも広い。様々な人が、色んな過去を抱えて、生きている。そんなことにも気付かないで、私は私の世界に閉じこもって、勝手に他人を恨んでいたんだ……。
ぽろり……と涙がこぼれた。保見は自分でも驚いた。「悲しい」というには暗すぎてしまうし、「悔しい」というには心穏やかすぎる今の自分の気持ちが、なんとも言い表せないが、しっかりと分かる。「やっと」という言葉が一番近いかもしれない。保見はやっと、本当は人間が嫌いではないことに、気づけたのだ。
柳と保見の修行初日はあっという間に過ぎ去った。これから毎日、厳しい修練を続け、保見は成長していく。
それは、人としても、霊力者としても、間違いなく成長していくのである。
南の果て朱厳山。常葉はずっと山に籠って、体内の神羅との静かな戦いを続けていた。柳と雷獣の戦いが終わってから、神羅はすっかり大人しくなり、今ではもう常葉の口がひとりでに発することは無くなった。しかし、だからと言って安心してはいられなかった。もっと霊力を高めて、二度と神羅の好きにはさせない……常葉はそう心に決めて、厳しい修行に打ち込んでいた。
まだ日が昇らない早朝に起きだして、真っ暗な山道を頂上まで駆けあがる。そして日の出を拝んだ後、冷たい滝に打たれ、心を無にして邪念を祓う。そのあとは、食糧の調達をし、食事が済むと術の巻物を片っ端から広げ、基本に立ち戻って全てを復習する。それが終わるころには太陽は最も高い位置にくる。ここで昼食をとり、午後からは自ら編み出した術を修練する。時には、式神を使い、相手役に見立てて戦闘訓練などもする。そして、日が沈む頃には、体中の霊力を充実させ、神羅にさらなる封印を施す。これが常葉の日常だった。
山に籠って五年たった頃、常葉はある者と再会する。その者は朝方やってきた。
「あの……」
滝に打たれている最中に、女の声を聞いた気がした。それは小さな声だったので、滝の音にかき消され、普通であれば聞こえるはずがないが、常葉は鋭く反応した。また自分の口が意に反して言葉を発したのかと思ったのだ。
バシャッと滝から飛び出て、岩の上へ降り立ち辺りを見回すと、滝壺のほとりに淡い緑色の着物を着た女が一人立っており、こちらを見ていた。こんな山奥に女一人でいるなんて明らかに不審だったが、その姿を一目見た瞬間、他人とは思えなかった。常葉は女の元までバシャバシャと泳いで近づくと、水から上がりながら、
「箕狐じゃないか! 何してるんだ? こんなところで!」
そう叫んで嬉しそうに笑った。
「あぁ! やっぱり常葉はんでしたかぁ……よかったわぁ……ご無事でらしたんねぇ」
泣きそうな笑顔でそういうと、がばっと常葉に抱きついた。
「心配しとりました……常葉はんに何かあったんじゃないかって……姉さんも、それは大層嘆いておられでぇ……」
「心配掛けてすまなかった……。今はだいぶ落ち着いたんだが……色々あってな。でも、どうしてここに? それに、箕狐、耳はどうしたんだ? 妖気も全く感じないが……」
いつもなら、狐耳が2つ生えているはずの箕狐の頭には何も生えていない。
「うち、今は人間とかわりあらしまへんの。うちらの決まり事がありますのよ。人間界へ出る時は、人間に完全に化けて行かなければならんのよ。霊力も封じて、人間に正体がバレないように徹底しとるんよ」
そうなのかい、と常葉は感心する。全く人間そのものだ。妖怪が化けているとは誰も気づかないだろう。
「良くここが分かったな」
常葉は濡れた着物のまま、箕狐の隣の地面へ腰を下ろした。箕狐も常葉の隣に座ると、
「探しましたよ……大変でしたわぁ」
そう言って、大きな溜息をついた。
「常葉はんの居所がさっぱりなもんでぇ、柳さんと保見ちゃんに会えれば何か分かる思うて探してたんですぅ。二人の気を追って、途中までは順調だったんよ? でもある日ぱたっと二人の気が感じられなくなってしまって……きっと霊山にこもったんやわぁ思うて。しらみつぶしに霊山を渡り歩いてたんよ……。五年間……長かったわぁ……」
「五年間も各地を渡り歩いてたのか!? 人の姿で?」
箕狐は疲れた笑顔でふふっと微笑むと頷いた。
「これでやっと姉さんに報告できますぅ。きっと喜びなはるわぁ」
「いや」
常葉はするどく言った。
「オレの居場所は誰にも教えないでくれ。正直、箕狐に見つけられたのも驚きなんだ。詳しくは話せないが、オレは今とても油断ならない状況にある……」
そう話しながら常葉はおもむろに右手を箕狐にかざした。それを見て箕狐はばっと後ろへ飛びのいた。
「いややわ! 常葉はんっ! うちに術かける気なんね? 忘れさす気なんね? あんまりやわっ!」
「すまない……箕狐。しかし……そうするのが一番いいんだ。忘れてしまえば楽になる。オレのことなんて、忘れてしまえば……」
「馬鹿! 常葉はんの馬鹿っ! 何にも知らんで……うちの気持ちも……何も分かろうとせんのに……ずるいわぁ……どれだけ……うちがどれだけ常葉はんのことを……」
箕狐はぽろぽろと涙をこぼしながら常葉に背を向けて走りだした。今の箕狐はただの人間と同じく霊力がない状態だった。逃げることしかできなかった。木の根につまずき、崖を転げ落ち、箕狐はがむしゃらに逃げた。泥だらけに汚れながら、必死に自分の記憶を守ろうとしていた。常葉に会いたくて、五年間ずっと常葉のことを想い続けていた。やっと会えたと思ったらこんな仕打ち、あんまりだった。
「危険に巻き込んでしまうかもしれない! オレに関わらないほうがいいんだ。箕狐! 分かってくれ!」
逃げる箕狐の左腕を常葉がつかんだ。
「いややぁっ!」
常葉が右手を箕狐にかざす。常葉と箕狐の目があった。箕狐の目は悲しみから恐れの色へ変化し、常葉が呪文をつぶやこうと唇を動かした瞬間、怒りの色を帯びた。その時、
──憎いだろ?──
箕狐の脳裏にぱっと浮かんだ。言葉とも声とも映像とも分からないこの問いかけは、ぐんぐんと大きさを増して箕狐の心に迫ってきた。
──憎いよなぁ? わかるぜ? 憎いさ──
問いかけは深い闇になって箕狐の心を飲み混んでいった。
気がつくと箕狐は暗い空間に一人立っていた。見渡すかぎり真っ暗な空間。ここはどこだろう? そう思うが早いか、目の前にぼんやりと灰色の映像が浮かんだ。これは箕狐自身の記憶なのだと、箕狐にはなんとなく分かっていた。
「姉さん、今日も来てはりますよ、常葉とかいう人間」
箕狐の目の前には白狐嬢がだるそうに横たわっている。
「追い返しな。何度も言わせるんじゃあないよ、あんたには会わないって、そう伝えな」
箕狐は「はい」と返事をすると踵を返して立ち去る。次の瞬間、ぎゅぎゅぎゅと映像が早送りされ、地面から常葉がにゅるりと目の前に現れる。
「あの……常葉はん? 姉さんは会わない言うてます」
「まいったなぁ」
そう言いながら頭をかく常葉は無邪気な少年のように笑っていた。
「なぁ、あんた名はなんていうの?」
「箕狐です」
「箕狐かぁ。なぁ、箕狐。どうしたら白狐嬢はオレに会ってくれると思う?」
箕狐をまっすぐ見つめる常葉の眼差し。箕狐の心の奥がぽっと熱くなる。
今度は水色の映像が浮かんできた。
「常葉はんをお連れしました」
箕狐は白狐嬢の部屋に常葉を通した。
「あぁ、御苦労。箕狐はもう下がって良い。二人にさせておくれ」
そう言う白狐嬢の瞳は、ただ常葉を見つめて微笑んでいた。常葉は箕狐を悪いな、という表情で見送る。その表情が何とも優しく、温かかった。その瞬間だけは、常葉の視線は箕狐のものだった。
今度は桃色の映像。
「ねぇ箕狐、聞いとくれよ! 常葉のやつがさ……」
にこにこしながら無邪気に話す姉さんの話を聞きながら、どこか悲しいような虚しい様な、箕狐はただ愛想よく微笑むように心がけた。
「まったく、常葉はんは困った方ですねぇ……」
常葉が好きだ。紛れもなく、それは確かだった。しかし誰にも打ち明けられなかった。常葉は姉さんのもの。常葉はねえさんのもの。私のものじゃあ、ない。
──できるなら、うちにだって。姉さんみたいに、うちだって常葉はんを──
「独り占めしたい」
ぱんっと映像が弾けた。箕狐ははっと我に返る。常葉が箕狐の左腕をつかんで右手をかざしていた。あぁ……もう逃げ切れない。そう思い目を閉じた瞬間、常葉の掌が優しく頭上に降ってきた。
常葉は箕狐を抱き寄せ、そっと箕狐の頭を撫でた。そして言った。
「オレを、独り占めしたいんだろ? いいぜ。叶えてやるよ。そのかわり……」
常葉は箕狐の耳元で何やらひそひそと呟いた。箕狐は一度だけゆっくりと頷いた。
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