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新型の増槽。
どうして、山奥村へパトロールに?
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時間は、数日もどる。 倉田飛曹が、自身の97式の風防を磨いていた時だ。 「よっこいしょ。」 と整備係長がタンクを運んできた。 「あれ、なんですか?」 と、なにげなく聞いた。 「あ、あ、これは新型の増槽だよ。」 「ずいぶん、おおきいですね。」 「そうだな、97式に入る燃料の半分はいるからな。」 「いままでは、安全面などから作れなかったんだ。」 「ヘーっ。」 「なんせ、燃料切り替えの電磁弁が信頼性がなかったが、あらたな方式で安全性が確保されたから作れたんだ。」 「では、かなり飛行距離が取れますね。」 「そうだな、ざっと2000キロが3000キロに増えるんだから。」 「そんなにですか?」 「らしいよ、試したわけではない。」 「試験飛行が必要だな。」 「それを、オレにやらせてはくれないですか。」 「いいよ、隊長に進言してみよう。」 倉田は先日、感謝の歌を歌いに来訪した山奥村の娘らに、返礼がしたかったのだ。 山奥村までは距離があった。 山脈の関係で回り道となり、いままで飛ばなかったんだ。 鉄道も高所だから、開通していないのだ。 (登山電車など、まだ開発されていない。) 山奥村の彼女らも、遠路を宿泊して、はるばる来てくれたのだ。 まあ、奉天観光も兼ねてだが。 こうして、倉田飛曹の思い付きで、新型増槽の試験飛行という名目で、山奥村までのパトロールとなったのだ。 しかし、さすがに疲れた倉田飛曹だ。 いくら、新型で操縦席の自由度が増したとはいえ、自動操縦装置なぞ、97式は装備されていないのだ。 操縦幹を離すことはできない。 それに、高度計や羅針儀の目盛りと、まわりの観察で、疲れ目の倉田飛曹だった。 「これは、なんらかの措置をしないと、つい居眠りで墜落の危険がありそうだ。」 オロナミンCなぞ無い時代だ。 「コーヒーの濃いやつが欲しいな。」 つい、独り言がでてしまうのだ。 もう、ここまでくると無線は飛ばない。 だから、話す相手もいないのだ。 「そうだ、後ろに、だれか乗せればいいんだ。 それと、交代も、新型ならできそうだ。 操縦幹を数分離せれば可能だ。 カンタンな自動操縦装置でもできないかな。 なんて、都合がいいことを考えていたが・・・ 山間を飛んで、次の山脈を超えた。 眼下に細い道だ。 「あ、あ、あれが通学路だな。」 「よし、馬車をさがそう。」 道沿いに97式を飛ばす。 「ん、なんだ、あれは?」 道の先に丸太がふさいでいる。 落石ではないようだ。 倉田は、97式を上昇させて、コースをとり、再度みるために旋回上昇だ。 ・・・ここで、時間が同じになるのだ。 馬車の御者がギョとした時間だ。 「馬賊だ。」 「どこだ、見えないぞ。」 退役兵が銃を構えて、あたりをうかがう。 「後ろよ。」 黄色い声だ。 「しまった、回り込まれた。」 御者はあせる。 あわてて、馬車の後ろへ移動する退役兵だ。 「いいか、頭を出すんじゃないぞ。」 娘らに言いながら、馬車の後ろをみた。
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