満州国馬賊討伐飛行隊

日本の女子高

あこがれが、現実だわ。

　リンリーは、日本陸軍の空母あきつ丸で、日本本土の土を踏んだ。　港には陸軍の士官がクルマで迎えにきていた。　「歓迎しますぞ、リンリー女子。」　「わざわざ、ありがとうございます。」　おお、満州なまり無しで、応答できた、出来る子ね、あたしは。　まあ、船内で、繰り返し練習した成果だが。　そして、出来たばかりの女子寮へ。　なんと、新築の今風のマンションだ。　べランダまである。　6階建てで、エレベーターは当然だ。　まあ、寮母のパット見、永年独身婆さんに眉をひそめたくらいだ。　「あす、陸軍省にお願いします。」と送迎の士官は帰っていった。　さて、と玄関に入るリンリーだ。　玄関の隣に寮母の部屋があり、受付がある。　呼び鈴が置かれていた。　なんか、映画で観たホテルの様だ。　そこで、「リリンン。」とベルを鳴らす。　「いらっしゃいまし。」と割ぽう着の寮母がでてきた。　「このほど、入校するリンリーです。」　と挨拶だ。　「え、え、聞いてますよ。」　「私は寮母の円城寺です、よろしくね。」　なんか、貴族の成れの果てみたいな名前だ。　「こちらこそ、よろしくです。」　とお辞儀するリンリーだ。　寮母は、なんか満州からの留学だから、アルネ、アルネの連発かと思っていたが、リンリーはそうでもないようだ。　これは、なかなかと構える没落公家の円城寺だった。　そう、円城寺はお察しのとうり公家の出だ。　しかし、主家は没落して、嫁ぐ機会もなく、この有様だが、陸軍が拾ってくれたのだ。　まあ、満州娘の監視が任務だ。　陸軍情報部のババアである。リンリーが　二重スパイかもしれないからだ。　しかし、リンリーは倉田飛曹の推薦もあり、警戒レベルは１だ。　5が最高の警戒である。　寮母に案内されて、6階のワンルームへ。　「え、ここが、そう。」　もうビックリのリンリーだ。　6階のワンルームが寮の私室なのだ。　どれだけ待遇がいいんだ陸軍は。　なお、エレベーターの6階はボタンにリンリーとしか書かれてなかった。　こうして、リンリーの憧れのＪＫ生活がはじまったのだ。　まあ、この段階で、リンリーは陸軍から逃げられなくなっていたが。　契約書の下の段に米粒より小さな文字で、陸軍へ入隊しなかった場合の条項があるのだ。　女優への推薦は陸軍が後援するが、情報部への忠誠が条件であった。　約束を守らなかったら、寮の経費や学費が借財となり降りかかるのだ。　まあ、リンリーは寮のベランダからの眺めを堪能していて、それどころではなかったが。　そうして、寮はいつしか満州娘で、満杯となった。　陸軍が女性士官を入隊させるのは、シナや半島の女スパイ対策もあったが、馬賊対策でもある。　半島から満州へ子女を誘拐にくるヤカラは絶えないからだ。　統計では、1日に3人くらいの割合で、満州で行方しれずの子女がでるのだ。　満州官吏が捜査してるが、手が足りない。　そして、ひとり、ひとりでは討伐隊の出動とはならなかった。　たんなる家出か、事故でかも知れないのだ。　ある程度の人数でないと官憲は動かないのだ。