満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ

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貴族の街

両班の座敷牢

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 夏果ら6人は両班の街に連れてこられた。 そして、また座敷牢の中だ。 「よくやった、誉めてつかわすぞ。」 「ハ、ハ、ハー。」 手下は金をもらってご機嫌だ。 今回は容易い仕事だった。 なんせ、馬車の御者のジジイを殺っただけだ。 そして、3騎で、馬車を連れて来たんだ。 貴族はいう、「あと5人は欲しい。」 「またですかい。」 「シナの大将軍様は、前回の失敗を埋め合わせるのに、献女を20人とおっしゃった。」 「そうでがすか、今は8人に6人ですから、え、え、と。」 こいつはアホかの眼で貴族が、「あと、6人だ。」 「しかし、また6人とは。」 「まあ、あと最低3人はさらってこい。」 「ヘイ、わかりやした。」 また、同じ手で・・・と考える手下だった。  「また、入ってしまったわ。」 夏果は途方にくれる。 せっかく助けてもらっても、また同じ目だ。 両班は、あと3人はと言っていた。 すこしは時間がありそうだ。 馬車から落としたメモを、だれか拾って討伐隊に知らせてはくれまいか、と思うばかりだ。 さらわれた女学生らは、カバンや持ち物までは取り上げられなかった。 凶器や刃物ではないからだ。 ・・・・その頃、鉄虎隊の装甲車が、現場に着いた。 路肩に倒れていた御者は助からなかった。 わだちの跡をつける装甲車だ。 「あれ。」 「どうしたんだ。」 「いえ、ゴミです。」 「まて、こんなところにおかしい、拾って来い。」 「わかりました。」 部下が路肩の紙くずを拾ったが、あわてて持ってきた。 「隊長、女子生徒からのメモです。」 「そうか、見せろ。」 メモには、朝鮮馬賊にさらわれた、とある。 「おい、次の分かれ目を朝鮮へだ。」 「ハイ。」 装甲車は進んだ。 やがて、国境にたどり着いた。 「くそっ、ここまでか。」 さすがに装甲車1台では、国境を越えられない。 作戦や軍総出の行動になる。 「ん、あれは。」 よく見ると、同じような紙くずだ。 「いくぞ。」 「え、ハイ、わかりました。」 装甲車は国境を越える。 紙クズは同じ書いた字だ。 おそらく、方向はあっている。 「よし、ここまでだ。」 装甲車は、朝鮮のだいたいの場所がわかり引き返す。 シナに発見されでもしたらやっかいだ。 「どうやら、ヘイジョウの街だろう。」 方向から予測がついた。 前にときは別の両班の街だった。 なかなか、女子にしては知恵の廻るヤツがいるんだな、と隊長は思った。 ・・・・ここは、座敷牢だ。 シナから早速にセーラー女子を観にきたのだ。 シナの大将軍の直々の部下だとか。 両班はへりくだってお辞儀をする。 「これは、これは、判官様、こんなむさくるしいところまで。」 「うむ、話に聞くセーラー女子がいるそうじゃが。」 「かなり苦労しました、大将軍様には、それなりに。」 「わかっておるわ、それより、あの娘か。」 「おわかりで。」 「一番、可憐で清楚だからな。」 「そうでげしょ、今回は苦労しやした。」 「わかっておるわ、それでいつ?」 「あと3人ほど。」 「まあ、まてまた満州軍が取り返しに来る前に。」 「わかりました、では馬車を。」 「うむ、3日後だ。」 「わかりました。」 「手をつけるなよ。」 「商品には手をつけません。」 「うむ、では頼んだぞ。」 どうしょう、夏果は焦る。 3日しかない。 軍は、いつかの日本の戦闘機は助けに来てくれるだろうか。 座敷牢の天井を仰いで、途方にくれるのであった。 
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