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拉致被害者の救援
神様は近くに
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ここは、両班の街の宿舎だが、座敷牢に満州娘が拉致されて、閉じ込められていた。 最近、満州も農業が盛んになり、日本人の農業指導員が各村に、大豆などの農作物の作り方など指導して廻っていた。 そして、村の代表が組合を造り、大豆や小麦を欧州にシベリア鉄道で輸出していた。 売り上げは、満足するものであった。 その証拠に、各村は潤い、生活に余裕が出てきた。 村娘の玉紅は、奉天市で流行しているチャイナ服を買ってもらい、友人らに見せびらかしていた。 友人らも、それぞれに流行の服を比べては女子トークに花が咲いていたのだ。 村はずれの、小川の広場は、女子会の場所だ。 だれかが、「あれは、なに?」といった。 今思えば、その時に用心すべきだった。 最近は日本軍の飛行機の馬賊狩りで、治安が良くなり油断であった。 いきなりだ、馬に乗った不貞のヤカラに拉致されたのだ。 「アレーーーー。」 と叫んだが、友人らと共に拉致されてしまった。 だぶん、朝鮮馬賊だ。 ヤツラは聞くところではシナへ、娘を売るらしい。 売り物だからか、乱暴なめにはあわなかった。 しかし、シナへ売られれば、満州国も手がだせない。 朝鮮半島にはシナの軍隊がいないから、なんとか助けてくれないかな。 同じく拉致されて友人らと泣いて、助けがこないかと神様に祈る毎日だった。 座敷牢の見張りは、ひとりではない。 必ず、3人から4人だ。 これでは、逃げることもできはしない。 先日、シナの役人が満面の笑みで、ナメルように私らを観ていった。 キモ、いやイヤダ、シナではどんな目にあうか、わからない。 友人が、「玉紅ちゃん、助けはくるだろうか。」 別の友人が、「あたいらは、貴族様でもない、ただの平民だから、助けがくるとは思えないよ。」 と悲しいことをいう。 それでは、神様も仏様も孔子様もいない。 「あ、あ、どうしたら、かあさん。」 と友人とすすり泣くしかなかった。 明日にはシナからの迎えが来るらしい。 そうなれば、希望は無い。・・・ 「なんか、変な音がしない?」 「え、どんな。」 「なんか、聞いたことがないけど。」 それは、南部式拳銃の発射音だ。 「パァン、パァン。」 「どうした。」 「満州軍だ。」 「おい、逃げるな。」 「やばい、死ぬのはイヤだ。」 朝鮮馬賊の見張り、4名は宿舎から逃げ出した。 逃げるのは世界一速い朝鮮民族だ。 (朝鮮戦争で、南朝鮮は武器を放って一番に逃げ出した。) 「なんや、まだ数発しか撃っておらんのに。」 拍子抜けした討伐隊だ。 「おい、ここにいるぞ。」 拉致された娘らを発見した。 「おう、カギはあるか。」 「いま、カギは壊す。」 といって拳銃でカギを壊す。 「おい、早く出ろ。」 「ありがとう・・・」 「お礼なんかいいから速く出るんだ。」 せかす、討伐隊だ。 「こっちだ。」 脇の戸板を破り、広場への近道を造る。 村娘32名は広場へ駆け出す。 そこには、エンジンを掛けてペラが廻る戦闘機が並んでいる。 「プロペラに注意して乗り込むんだ。」 胴体の横にトビラが開いて、「そこから、2人づつ乗れ。」手で合図する討伐隊員だ。 14歳くらいの娘だ。 小さい娘は体重が35キロくらいだ。 3人でもOKだ。 とにかく、詰め込んだ。 「おい、乗ったか、こぼれたヤツはいないな。」エンジン音が五月蠅いから耳元で、確認をする。 村娘が、「みんな、います。」 と耳元で答える。 「では、トビラを閉めてカンヌキを掛けろ。」 ハッチを閉めて、カンヌキを掛けるくらいは、14歳でもできるのだ。 「1番機から行け!」 タキシングしてエンジンスロットを上げる。 ブーーーーンンからキーーーーーンとターボがうなる。 97戦は見る見る高度を上げる。 さすが、ターボエンジンだ。 以前の9気筒400馬力から12気筒ターボ1200馬力は伊達ではない。 2枚ペラから3枚となり、グングンと上昇する。 あっという間に雲の上だ。 あまり、高高度では、酸素が薄いし、寒冷だ。(乗せた娘が凍えるからだ。) それで、高度は1000までとする。 無線で、装甲車隊に、「こちら、討伐飛行隊、救助は成功だ。」 と送る。 「ガー。ガー、こちら鉄虎隊長、ご苦労さんでした、ありがとう。」 との返信だ。 感謝されて、うれしくないヤツはいない。 もう、日本陸軍97戦は、大陸で、無双の地位を得ていた。
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