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97戦の窓
胴体の窓
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97戦には、操縦席の後ろに1人か2人の乗れるスペースがあった。 だが、窓がない。 まあ、ガマンすればいいのだが、外が見えないのは不安だ。 丸い小さい窓をあけて、アクリルガラスをはめ込んだ。 そして、脱出口を内部や外部から開けられるように改造したのである。 操縦者の座席の後ろにひとり座れた。 体格が大きい男子ならひとりが精一杯だ。 そして小柄な人間なら2人詰め込める。 担架に乗せて尾翼までの胴体に詰め込むのだ。 そして、もうひとりが看病ができるのだ。 補助燃料タンクが空なら重量もOKだ。 まず、病人を乗せるのは帰りが多いからである。 整備士の早川が、窓や担架を固定する工夫をしていて、ヒラメイタことがあった。 この窓を胴体下部につければ、爆弾投下の計測ができるはずだ。 爆弾は小型の手榴弾をつめこんだものでOKのはずだ。 なんせ、馬賊相手の爆弾だ。 広範囲を五月雨のように小爆弾で爆破すれば、へたな機関銃より効果的ではないか。 そう早川君は考えたのだ。 建物を破壊する爆弾は250キロはあるのだ。 それが、馬賊用なら30キロで可能だ。 手榴弾10発も詰め込めば、効果は十分だ。 それに、馬賊を威嚇して追い払うことにも使えそうだ。 爆弾投下用の窓は操縦者の足元に窓がついて、簡単な計測器が目盛りをつけて配置された。 速度と高度から放物線を描いて落ちる五月雨爆弾用である。 陸軍には手榴弾がたくさんあった。 手榴弾にも使用期限があり、あまり古いと不発弾になりやすい。 それで、古い手榴弾を集めて筒につめて信管は遅延信管として、地面の上3メートルくらいで、爆発するように調整したのである。 重さは30キロで、遅延信管に戸惑ったが、なんとか使えるように調整ができた。 早川君、実験用の人型案山子を10体ほど木で作り、試験をすることとなる。 「この窓から下が見えます。」 「あ、あ、見えるぞ。」 「目盛りがあります、そこに速度と高度をあわせて赤い針が重なったら投下です。」 「ほう、意外と簡単だな。」 「まあ、馬賊用ですから、建物や戦車なんかには効果ありませんので。」 「まあ、満州国では、戦車は無いからな。」 「そうですが、爆弾はあくまで人間用ですから。」 「わかった、では試験だ。」 実験用爆弾を吊り下げた97戦が飛びあがる。 軽い爆弾であるから運動性能に変化はなかった。 約200キロくらいの速度で、高度100メートルで、爆弾投下だ。 あっという間に、爆発した。 手榴弾の破片が飛び散り案山子の板を破壊した。 見るところ10枚をバラけて立てていたが、すべてに破片が刺さり、それなりのキズを負わせられた。 「おう、使えるな。」 本郷隊長は見学していて、採用を決めた。 安い、たくさん出来る、致命傷までは与えない。 まさに、馬賊用の爆弾が完成したのである。
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