328 / 380
シュミットへの連絡
ロンメロからシュミットへ。
しおりを挟む
すこし、時間がさかのぼる、(最近よくあるパターンだ。) 独逸帝国近衛連隊本部の、とある小部屋だ。 ロンメロ将軍が、部下の子弟を激励がてら訪問とのことである。 「元気にやってるか。」とロンメロ将軍だ。 シュミットは、「ハイ、なんとか。」 とお茶を濁す。 「これは、皆で、食べてくれ。」 と手土産を渡した。 「ありがとうございます。」 と受け取るシュミットだ。 長居はしないで、ロンメロは前線基地に帰る。 さて、皆を集めてシュミットはフタを開けた。 スイーツだ。 大きな焼き菓子のクッキーが20枚入っている。 問題は上に乗せてある紙だ。 その紙には・・・総帥への手はずはOK・・・とチョコで書いてあった。 読んだシュミットは皆でチョコを紙から外して食べて、内容を隠匿した。 さすがに、フランスのシェフのスイーツはうまかった。 ロンメロ将軍の軍はフランス国境に配備されているからだ。 もちろん、スイーツは全員で堪能したのである。 軍事技術は独逸や日本だが、スイーツはフランスだな、と今さら思うシュミットであった。・・・・シュミットも新総帥の新秘書がウワサで有能とは聞いてはいたが、まさかロンメロ将軍の息のかかった者とは夢にも思わなかったのである。(このことは、ロンメロとフローラ本人しか知らない。)・・・・数日後のことだ、久々にシュミットは非番(24時間勤務を3交代で廻している。)に、ゲッペルン総帥廟に花を持参して・・・あれ、以前の総帥秘書が尼さんで、墓守になっている。 「おひさしぶりです。」 「あれ、近衛の兵隊さん?」 「そうです、墓守ごくろうさんです。」 「有能な、秘書が見つかりましたので、私はお払い箱ですわ。」 「イェ、ゲッペルン総帥閣下の守り役ごくろうさんと思います。」 「近衛の兵隊さん、ありがとうね、あのとき。」 「え、・・・・」 「私が、午後からソ連の大使館から連絡員のヒトが訪れる予定を忘れていて。」 「はあ、・・・・」 「総帥閣下は病院の慰問で不在で、待たせるのもなんだから。」 「え、え、・・・・」「お茶を入れに炊事場へ・・・・」 なんと、ソ連の連絡員がひとりだ。 「それで、お紅茶を持参したら、急にお帰りになったのよ。」 「えらく、あわてていたようだけだ、どうしてかしらね。」 「それは、誰かに・・・」 「イェ、最近になり思い出してきたのよ。」 ここで、内密にしろと墓守に言えば、墓守から拡散されそうだ。 シュミットは考えた、そして「なにも、過去のミス(連絡員をひとりにしたことだ。)を今さらになって、まあ忘れるんですね。」 と、さも軽い出来事のように誤魔化した。 「そうね、別にたいしたことじゃないし。」 「そうですよ、それで、国家から年金は?」 と話をそらした。 「まあ、普通の暮らしに困らない程度には。」 「よかったじゃないですか、時々寄らせてもらいますので。」 「そう、歓迎するわ。」 イケメンのシュミットに墓守オバサンは、まんざらでもなさそうだ・・・シュミットは近衛連隊へ帰ると、近衛連隊の総帥日誌(総帥の慰問や会談などの予定表だ。)をめくる。 忘れもしない、あの日だ。 ここだ、ソ連から連絡員のゾンゲ来訪と記入がある。 そうか、ソ連大使館の連絡員ゾンゲだな。 シュミットはソ連大使館員の名簿を独逸帝国本部で閲覧する。(近衛連隊士官ならOKなのだ。) あれ、ゾンゲの名前が無い。 シュミットは、確信した。 自身の推理が狭められていくのを。 シュミットはソ連への親善訪問のときにソ連で親しくなった、ソ連の近衛連隊士官に電話を架ける。 「おう、シュミットか元気か。」 「おう、プチャーノクスよ元気だったか。」 「あたぼうよ、最近ウオッカの飲みすぎで・・・・」 「そうか、相変わらずだな。」 つまらん話が相手の口を軽くするのだ。 「ところで、以前大使館にいたゾンゲ連絡員は元気か?」 「ん、ゾンゲか、あいつは悲劇だった。」 「え、なにが。」 「乗ってた飛行機が落ちたんだ。」 「それで?」 「全員、死亡だ。」 「それは、まさに悲劇だな、戦って死ねなかったからな。」 「そうなんだ、オレは戦って死にたい。」 軍人なら、だれもが思うことだ。 その死に意義があるからだ。 シュミットは適当に話をあわせて電話を切った。 間違いない、話しがウマすぎる。 連絡員ゾンゲは口をふさがれたのだ。
0
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる