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第24話:知らないイベント
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冒険者ギルドに行ったら、疑問は氷解した。
ミレスの町の東端には旧大聖堂と呼ばれる建物がある。大昔は墓地も兼ねていた古代建築で、人口の増加と共に手狭になって引っ越した場所だ。
建築物として歴史的価値のあるこの旧大聖堂では地下にアンデッドが発生する。そもそもミレスの始まりが、聖職者達がアンデッドの王を倒したことにあり、その名残が今もあるとのことだ。
冒険者ギルドで確認したところ、ここ数ヶ月、旧大聖堂のアンデッド報告数が増えており、それに対応するため神聖騎士団による掃討及び浄化が行われるという。
冒険者向けにも依頼が出ており、主に騎士団の援護や補助のための予備部隊への参加が依頼されていた。
「つまり、主役は神聖騎士団だから大人しくしてろってことなのはわかった。なら、自分達だけでやればいいのにな」
「騎士団は精鋭ですけど、人数が多くないんです。冒険者の方が対応の幅があるし、荷物を運べる上に戦闘までできるからこういう依頼は珍しくないんですよ」
旧大聖堂の近くには街中にしては大きな芝生と木々に囲われた公園がある。モンスターの出現する場所だからと、安全のために塀で囲って家を建てないようにしてあるそうだ。
そこに、神聖騎士団の臨時駐屯地が作られていた。
ギルドで依頼を受けたオレ達はその片隅で仕事内容を聞いて、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
「今回は冒険者はあくまで脇役でいろってことはよくわかった」
オレ達冒険者の役割は、騎士団の支援だ。荷物持ちも含めて。それに対して文句をいったところ、帰ってきたのが先ほどのフォミナの説明だった。考えてみれば、彼らは彼らで大変だ、領主の直属部隊で町の治安を守る身なんだから、失敗が許されない。責任重大だ。
「依頼の報酬が少なめなのも理解した。戦うのを任せられると思うと、ちょっと気楽だな。フォミナは姉さんに挨拶しなくていいのか?」
「アンデッドの相手は慣れている人達ですから、そこは信頼できます。セアラ姉さんは、下手に話しかけると面倒なところがあるので……」
「たしかに……」
姉を心配して参加を決めたフォミナだけど、顔を合わせたいわけではないようだ。わかる。今回、彼女が気にしているのは、討伐が急に組まれたことだ。アンデッドの増加なんかは、結構予測できるらしく、こういうのは珍しいらしい。
それもあってか、駐屯地の準備も慌ただしい。オレ達も書類を見て備品の確認をしたけれど、まだ揃っていないのが多くて、慌てて事務官が手配をしていた。
今は端の方に座って小休止。食事まで用意してくれるのでとても有り難い。
「ごめんなさい、マイス君。活躍すれば、騎士団の人と顔見知りになれるかもしれないかなって考えもあったんだけれど」
「そこまで都合よくいくとは思ってないよ。珍しいことだし、フォミナの心配もわかるし、たまには冒険者らしく依頼を受けておかないとね」
「受付の人、普通の依頼を受けたら凄い驚いてましたもんね」
どうやら、オレ達は強力なモンスターを狩って、換金するのが専門の冒険者だと
思われていたらしい。普通に依頼を受けたら受付の人がびっくりしてた。
「マイス君、今回はあんまり変わったこと言い出しませんね」
「この状況で、オレになにをしろって言うんだ……」
きっと今まで想像の外みたいな行動ばかりとってたんだろうな、オレ。ゲーム知識を使って最適化すると、異常行動になりがちなのはよくわかる。
だが、今回のような話はゲームにはなかった。この世界がゲームとは離れた場所である証拠みたいな出来事だ。オレにできるのは回復アイテムを用意したり、アンデッド対策の装備品を用意しておくことくらいだ。
「失礼します。こちら、明日からの予定表です。不明点があれば事務局までお願いします」
クレリックらしい男性がやってくると、オレ達に書類を一枚ずつ渡していった。
見れば旧大聖堂討伐の予定が、記されている。冒険者は騎士団の後についていって、撃ち漏らしを片づける。基本は輸送隊の護衛になるみたいだ。
「明日の朝一番に指揮官からの訓示。そのままアンデッドを倒しながら一気に最下層の五階まで、か」
「寄り道はしないようですから、一日で終わるはずです。旧大聖堂の地下が巨大といっても、道もわかっている場所ですから」
旧大聖堂の地下は巨大な墓地になっている。アンデッドがひしめくちょっとした迷宮なんだが、騎士団と冒険者の集団が進軍すればすぐに制圧できる程度の広さではある。
今回の戦力は、神聖騎士団が五〇、冒険者が三〇。これでもミレスの町にいる神聖騎士団の三割近くにあたるそうだ。結構思い切った作戦である。
「案外、国境付近で帝国が怪しい動きをしてるから、国内の不安を断つために早めに動いたのかもな」
「マイス君の事情を知っていると、説得力がありますね。騎士団の上層部なら、現在の戦況について知っているでしょうし」
どうにかして、その辺の情報を得られないかな。この分だと、神聖騎士団の活躍を見物して帰ることになりそうだ。とはいえ、無駄に前に出て戦ったら怒られそうだし……。
「マイス君、なにを考えてるんですか?」
「今回は無難に過ごすしかなさそうだなーって思ってる」
「マイス君が無難という言葉を知っていたのに驚きです」
「なかなか言うようになったね……」
これといった手立ても思いつかなかったオレは、フォミナと楽しく雑談して、その日を過ごした。
ミレスの町の東端には旧大聖堂と呼ばれる建物がある。大昔は墓地も兼ねていた古代建築で、人口の増加と共に手狭になって引っ越した場所だ。
建築物として歴史的価値のあるこの旧大聖堂では地下にアンデッドが発生する。そもそもミレスの始まりが、聖職者達がアンデッドの王を倒したことにあり、その名残が今もあるとのことだ。
冒険者ギルドで確認したところ、ここ数ヶ月、旧大聖堂のアンデッド報告数が増えており、それに対応するため神聖騎士団による掃討及び浄化が行われるという。
冒険者向けにも依頼が出ており、主に騎士団の援護や補助のための予備部隊への参加が依頼されていた。
「つまり、主役は神聖騎士団だから大人しくしてろってことなのはわかった。なら、自分達だけでやればいいのにな」
「騎士団は精鋭ですけど、人数が多くないんです。冒険者の方が対応の幅があるし、荷物を運べる上に戦闘までできるからこういう依頼は珍しくないんですよ」
旧大聖堂の近くには街中にしては大きな芝生と木々に囲われた公園がある。モンスターの出現する場所だからと、安全のために塀で囲って家を建てないようにしてあるそうだ。
そこに、神聖騎士団の臨時駐屯地が作られていた。
ギルドで依頼を受けたオレ達はその片隅で仕事内容を聞いて、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
「今回は冒険者はあくまで脇役でいろってことはよくわかった」
オレ達冒険者の役割は、騎士団の支援だ。荷物持ちも含めて。それに対して文句をいったところ、帰ってきたのが先ほどのフォミナの説明だった。考えてみれば、彼らは彼らで大変だ、領主の直属部隊で町の治安を守る身なんだから、失敗が許されない。責任重大だ。
「依頼の報酬が少なめなのも理解した。戦うのを任せられると思うと、ちょっと気楽だな。フォミナは姉さんに挨拶しなくていいのか?」
「アンデッドの相手は慣れている人達ですから、そこは信頼できます。セアラ姉さんは、下手に話しかけると面倒なところがあるので……」
「たしかに……」
姉を心配して参加を決めたフォミナだけど、顔を合わせたいわけではないようだ。わかる。今回、彼女が気にしているのは、討伐が急に組まれたことだ。アンデッドの増加なんかは、結構予測できるらしく、こういうのは珍しいらしい。
それもあってか、駐屯地の準備も慌ただしい。オレ達も書類を見て備品の確認をしたけれど、まだ揃っていないのが多くて、慌てて事務官が手配をしていた。
今は端の方に座って小休止。食事まで用意してくれるのでとても有り難い。
「ごめんなさい、マイス君。活躍すれば、騎士団の人と顔見知りになれるかもしれないかなって考えもあったんだけれど」
「そこまで都合よくいくとは思ってないよ。珍しいことだし、フォミナの心配もわかるし、たまには冒険者らしく依頼を受けておかないとね」
「受付の人、普通の依頼を受けたら凄い驚いてましたもんね」
どうやら、オレ達は強力なモンスターを狩って、換金するのが専門の冒険者だと
思われていたらしい。普通に依頼を受けたら受付の人がびっくりしてた。
「マイス君、今回はあんまり変わったこと言い出しませんね」
「この状況で、オレになにをしろって言うんだ……」
きっと今まで想像の外みたいな行動ばかりとってたんだろうな、オレ。ゲーム知識を使って最適化すると、異常行動になりがちなのはよくわかる。
だが、今回のような話はゲームにはなかった。この世界がゲームとは離れた場所である証拠みたいな出来事だ。オレにできるのは回復アイテムを用意したり、アンデッド対策の装備品を用意しておくことくらいだ。
「失礼します。こちら、明日からの予定表です。不明点があれば事務局までお願いします」
クレリックらしい男性がやってくると、オレ達に書類を一枚ずつ渡していった。
見れば旧大聖堂討伐の予定が、記されている。冒険者は騎士団の後についていって、撃ち漏らしを片づける。基本は輸送隊の護衛になるみたいだ。
「明日の朝一番に指揮官からの訓示。そのままアンデッドを倒しながら一気に最下層の五階まで、か」
「寄り道はしないようですから、一日で終わるはずです。旧大聖堂の地下が巨大といっても、道もわかっている場所ですから」
旧大聖堂の地下は巨大な墓地になっている。アンデッドがひしめくちょっとした迷宮なんだが、騎士団と冒険者の集団が進軍すればすぐに制圧できる程度の広さではある。
今回の戦力は、神聖騎士団が五〇、冒険者が三〇。これでもミレスの町にいる神聖騎士団の三割近くにあたるそうだ。結構思い切った作戦である。
「案外、国境付近で帝国が怪しい動きをしてるから、国内の不安を断つために早めに動いたのかもな」
「マイス君の事情を知っていると、説得力がありますね。騎士団の上層部なら、現在の戦況について知っているでしょうし」
どうにかして、その辺の情報を得られないかな。この分だと、神聖騎士団の活躍を見物して帰ることになりそうだ。とはいえ、無駄に前に出て戦ったら怒られそうだし……。
「マイス君、なにを考えてるんですか?」
「今回は無難に過ごすしかなさそうだなーって思ってる」
「マイス君が無難という言葉を知っていたのに驚きです」
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