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個人依頼という珍しい出来事が起きてから五日後、私とトラヤは冒険者組合の中にいた。
セラさんと会ったのがきっかけというわけではないけれど、組合からの依頼にも魔境調査隊がやって来た影響が出始めたらしく、なにやら忙しくなって来たためだ。
「二人とも連日ありがとうね。いつも以上に依頼が増えてて大変なのよー」
「いえ、簡単な採取依頼しか受けれなくて申し訳ないです」
「普段の仕事に修行もあるからねー」
そんな会話をしながら受付のお姉さんから依頼のリストを渡して貰う。私達は明らかに増えた薬草なんかの簡単な素材採取依頼を連日請け負っていた。これなら依頼を受けてすぐ『四節の森』に入って、即日完了することができる。
「それが大助かりなのよ-。調査隊に乗っかるみたいに魔境の奥に行く冒険者も増えてるから、採取の人手が足りなくて」
「外から来た冒険者も増えてるみたいですけど、駄目ですか」
「そういう人達は魔境の奥目当てなのよ。もっと人が入ってくれば話も変わるんだろうけど」
「賑やかにはなってるけど、色々あるんだねぇ」
言いながら私達は受付から見える食堂になっている場所を見渡す。
そこでは十名ほどの冒険者達が依頼を吟味したり、お酒を飲んだりと騒がしくしている。見かけない顔も多い。たしかに私がこの町に来た時より冒険者は増えている。
「調査隊の進捗はどうなんですか? セラさんって人がうちの工房に注文してくれるんですけど、具体的な話は聞けなくて」
「それはまだ話せないわね。もう少し調査が進んだら、組合で地図を発行するからすぐ教えるわ」
どうやら、地図ができる程度には調査は進んでるみたいだ。
「地図! 見てみたいね、イルマ!」
トラヤの瞳が好奇心で一杯になった。きっと一緒に出かけることになるだろう。
「とりあえず、ポーション用の採取依頼を受けておきますね。トラヤ、ご飯食べてから出かけましょ」
自分で使える分も確保しやすいポーション用素材採取をいくつか受注する。
時刻はまだ朝、そして私達は何も食べていない。連日の依頼報酬のおかげで懐に余裕もあるのでここで朝食をとってから採取に行くのが最近の流れになっている。
「うん。ここの食堂、美味しいから好きだよ!」
いつも通り明るいトラヤを伴って私達は食堂スペースへと向かった。
セラさんと会ったのがきっかけというわけではないけれど、組合からの依頼にも魔境調査隊がやって来た影響が出始めたらしく、なにやら忙しくなって来たためだ。
「二人とも連日ありがとうね。いつも以上に依頼が増えてて大変なのよー」
「いえ、簡単な採取依頼しか受けれなくて申し訳ないです」
「普段の仕事に修行もあるからねー」
そんな会話をしながら受付のお姉さんから依頼のリストを渡して貰う。私達は明らかに増えた薬草なんかの簡単な素材採取依頼を連日請け負っていた。これなら依頼を受けてすぐ『四節の森』に入って、即日完了することができる。
「それが大助かりなのよ-。調査隊に乗っかるみたいに魔境の奥に行く冒険者も増えてるから、採取の人手が足りなくて」
「外から来た冒険者も増えてるみたいですけど、駄目ですか」
「そういう人達は魔境の奥目当てなのよ。もっと人が入ってくれば話も変わるんだろうけど」
「賑やかにはなってるけど、色々あるんだねぇ」
言いながら私達は受付から見える食堂になっている場所を見渡す。
そこでは十名ほどの冒険者達が依頼を吟味したり、お酒を飲んだりと騒がしくしている。見かけない顔も多い。たしかに私がこの町に来た時より冒険者は増えている。
「調査隊の進捗はどうなんですか? セラさんって人がうちの工房に注文してくれるんですけど、具体的な話は聞けなくて」
「それはまだ話せないわね。もう少し調査が進んだら、組合で地図を発行するからすぐ教えるわ」
どうやら、地図ができる程度には調査は進んでるみたいだ。
「地図! 見てみたいね、イルマ!」
トラヤの瞳が好奇心で一杯になった。きっと一緒に出かけることになるだろう。
「とりあえず、ポーション用の採取依頼を受けておきますね。トラヤ、ご飯食べてから出かけましょ」
自分で使える分も確保しやすいポーション用素材採取をいくつか受注する。
時刻はまだ朝、そして私達は何も食べていない。連日の依頼報酬のおかげで懐に余裕もあるのでここで朝食をとってから採取に行くのが最近の流れになっている。
「うん。ここの食堂、美味しいから好きだよ!」
いつも通り明るいトラヤを伴って私達は食堂スペースへと向かった。
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