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 翌日の昼近く。私の姿はリベッタさんの工房にあった。
 本当はもっと早く来たかったんだけれど、久しぶりの熟睡が気持ちよすぎた。気づいたら朝というか、太陽はとても高く昇っていて、慌てて着替えて出かけることになった。
 とはいえ、昨日までと違って調子は悪くない。ちゃんと寝れたし。

「すいません。二日続けて突然やってきてしまって」

「いいのよ。あなたのことだから、きっとすぐ来ると思っていたもの」

 朗らかに笑いながら、リベッタさんはお茶を淹れてくれた。

「それで、どうだったのかしら?」

 向かいに座ると好奇心を一杯にして、身を乗り出さんばかりの勢いでそう聞かれた。この人はこの人で、私がどうなるか気になっていたらしい。

「えっと……驚かないでくださいね……。というか、ちょっと困ってるんですけれど」

「大丈夫よ。この歳だもの、少しくらいじゃ動じないわ」

 リベッタさんのそんな言葉を聞きながら、私は鞄の中から持って来た錬金具を次々に取り出していく。
 机の上に並んだのは、昨日作った各種錬金水と球だ。

「これだけ、できました。その、複数の属性が作れたんですけど」

「あらあらまあまあ」

 頬に手をあてて感心したように言うリベッタさん。多分、驚いているんだろうけど、想像より反応が薄い。

「もしかして、よくあることなんですか?」

「まさか。錬金術師は一人一属性よ。私だったら水の属性しか扱えない。これは驚いたわね」

「試しに全部の錬金水を飲んだらこうなったんです。なにかまずいことが起きてるんじゃないかと思って……」

「そうよね。複数の属性を扱えるなんて聞いたことないわよね。不安になるのも当然だわ」
 
 私の感情を受け止めるようにリベッタさんは穏やかな口調で言うと、優雅な動作でカップに手を付けた。

「本当に、驚いているわ。ねぇ、ハンナ?」

『ええ、まさかの全属性とは思いませんでした。これは非常に特殊な例ですね』

「……!?」

 いきなり、室内に聞き覚えのある声が響いた。
 『錬金術の塔』の副学長にして私の師匠、ハンナ先生の声だ。

「その鏡、錬金具だったんですか!」

 見れば、私のすぐ右側にかかっている四角い鏡の中にハンナ先生の姿があった。
 相変わらず若々しい先生は私と目線を合わせると、にこにこと笑いながら手を振ってきた。

『久しぶりですね。イルマさん。驚かせてごめんなさいね』

「えっと。どういうことか説明をして貰えるんですよね?」

 今わかるのはリベッタさんがハンナ先生と知り合いだったこと。それと、私の起こしたことに驚きつつも二人がある程度納得していることだ。
 作為的なものを感じる。説明して貰わなければ。

『もちろん、説明をします。落ち着いて席についてください。イルマ・ティンカーレ。あ、それとリベッタ先輩。鏡をテーブルの上にお願いできますか?』

「ええ、ようやく三人でお話しできるわね」
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