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二十四章 潜入
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踊り場を折り返す様に、五段の階段。
そしてまた小さな踊り場があって、折り返して五段……。
んな風に、階段は下へ続いていく。
ザックリとした俺の見立てじゃあ、この五段・踊り場・折り返して五段、の一括りで、大体一階層下に下がったって感じじゃねぇかな?
三階から二階へ、二階から一階へ。
ムダ話は一切せずに、ダンと共に下へ下へと下っていく。
そうして(恐らくは)一階部分と思われる所まで階段を下りた──ところで。
そこは行き止まりになった。
下った五段の階段の後は小さな踊り場。
地下の通路に繋がるなら更に折り返しの階段が必要なハズ、だと思ったんだけどな。
「……行き止まりか……?」
後ろのダンも、俺の視線の先と同じ壁を見、小さく口にする。
けど……。
ここまで凝った仕掛けをして秘密の階段までこさえてさ。
それでその先が行き止まりだなんて事があるかよ?
俺はダンへの返事の代わりに「う~ん」と思わず唸りながらランタンを掲げ、開いてる左手で目の前の石壁を探る。
他と同じく、細長い長方形の石をレンガ調に積んで出来た壁だ。
さっきの階段の入口を閉じて階段の縁を光らせたスイッチみてぇな何かが、どっかにねぇか?
思いながら触っていくが、特にこれといったモンは見当たらねぇ。
……っかしいなぁ……。
思いつつ、大した考えもなく左手で石壁をグッと向こうへ押してみる──と。
押した石壁の一部が僅かに向こう側へ押し出される。
動いた石壁の大きさは、丁度トルスの旧市街にある俺の家の玄関戸と同じくらいか?
ただしこっちはキッチリ長方形に切り取られてるんじゃなく、レンガ調に積まれたそのレンガ石の形に沿って切り抜いた様な感じだ。
押し出した石壁の淵がくっきり見える。
石壁の向こうからの強い光が、こっち側に差し込んでいるからだ。
てぇ事は、だぜ。
この向こうは、どっかの室内とかそういうんじゃなく……。
外に通じてんのか……?
疑問に思いつつも俺は今度は慎重にその石壁に手をかけ、更に向こう側へ押し出す。
すると、ほんの少し動いた先で、止まった。
そのまま──直感の向くまま石壁を左方向へスライドさせてやると、まるで重たい引き戸を引いた様にゆっくりと、切り抜かれた石壁が横に開いていく。
開いた部分から眩しい陽の光が差し込んできた。
ピーヒロロ、と丁度どこかから鳥の鳴き声が聞こえてくる。
風がざわざわと木の葉を揺らす音も、風の流れも肌に感じる。
そう──石壁を開いた先は、外だった。
移動した距離と向かった方向からして、建物のすぐ裏手だろう。
俺は外の空気に誘われる様に、ゆっくりとそこへ足を踏み出した。
外に出るとすぐ目の前に、俺やダンの背丈を遥かに上回る高さまで生い茂った木々が並んでいる。
それも隙間なく、俺達が今出てきた石壁に沿って平行にずっと先まで、だ。
並んだ木々と石壁の間はちょっとした小道みてぇになっている。
外から隠された小道だ。
ダンが俺の後に続いて外に出てきて、眩しそうに目を細め辺りに顔を巡らせる。
その反応から見るに、どうやらこの光景はダンにとっても予想外だったらしい。
もちろん俺だってそうだ。
俺はてっきり隠し通路は全部地下に繋がってるモンだと思ってたからよ。
こんな、建物の外に出るよーなルートがあるってぇのはちょっと予想外だった。
さて問題はここからどうやって抜け出すのかって事だが……。
俺はランプの灯りを一度消してダンに目配せし、壁際に沿って続く小道の先をそっと歩き始めた。
小道はすっかり周りから隠されてっからうっかり安心感を持っちまいそうになるが、姿は見えなくたって音だけは誤魔化せねぇ。
うっかり無神経に話し声や足音を立てて、万が一にも近くを通りがかった誰かに訝しがられちまうのはバカらしいからな。
ここは念には念を押して慎重に……っと。
思いながら少し進んだ先に、ある変わった目印みてぇなもんがあった。
木の根元に、小さな白い立札。
立札には特に何も書かれちゃいねぇがここに一ヶ所だけ立ってんだから、何か意味があるんだろう。
別に木に細工がしてある様にも見えねぇけど……。
思いながらそっと立札の後ろに植わってる木に触れてみる──と。
その枝が柔らかい事に気がついた。
いや、柔らかいってぇか妙にしなるってぇか。
手で軽く枝を押しのけたら、あっさり従ってくれそうだ。
試しに立札の付いてない隣の木の枝に触れてみると、こっちはしっかりとしていてる。
見た目はよく似てるが、実は木の種類が違うのか──?
思いながら立札の木に手を戻し、そのままそっと横に掻き分けたら、思った通りすんなりと木の枝を掻き分けることが出来た。
つまりはここが本当の出口って訳だ。
俺は辺りに人の気配がない事を確認してから、木の枝を掻き分け木の向こう側へ出る。
ダンも俺の後から出てくる。
ダンが木の枝から手を離すと、木の枝は何事もなかったかの様に元に戻っていく。
こっちから見ると、もうどこがその木の部分だったのかパッと見には全く分からなくなっていた。
ダンが辺りを見渡し、ようやくここで口を開いた。
「──建物の裏側の様だな。
この辺りはまず人が通る事はない。
衛兵も建物の前方にしか配置していないし。
出入り口としては最適だ」
「──ああ」
並んだ木々は手入れがされてっから、庭師とかが触る事はあるかもしれねぇ。
木の種類が一ヶ所だけ違う事も気づいてんだろうが、例え木の向こうに人一人通れそうな道があるとしても、何とも思わねぇだろ。
普通建物の壁と木の塀はべったりくっつけて配置はしねぇからな。
それにまさかその建物の石壁に秘密の出入り口があるなんてフツー誰も思わねぇよ。
そしてまた小さな踊り場があって、折り返して五段……。
んな風に、階段は下へ続いていく。
ザックリとした俺の見立てじゃあ、この五段・踊り場・折り返して五段、の一括りで、大体一階層下に下がったって感じじゃねぇかな?
三階から二階へ、二階から一階へ。
ムダ話は一切せずに、ダンと共に下へ下へと下っていく。
そうして(恐らくは)一階部分と思われる所まで階段を下りた──ところで。
そこは行き止まりになった。
下った五段の階段の後は小さな踊り場。
地下の通路に繋がるなら更に折り返しの階段が必要なハズ、だと思ったんだけどな。
「……行き止まりか……?」
後ろのダンも、俺の視線の先と同じ壁を見、小さく口にする。
けど……。
ここまで凝った仕掛けをして秘密の階段までこさえてさ。
それでその先が行き止まりだなんて事があるかよ?
俺はダンへの返事の代わりに「う~ん」と思わず唸りながらランタンを掲げ、開いてる左手で目の前の石壁を探る。
他と同じく、細長い長方形の石をレンガ調に積んで出来た壁だ。
さっきの階段の入口を閉じて階段の縁を光らせたスイッチみてぇな何かが、どっかにねぇか?
思いながら触っていくが、特にこれといったモンは見当たらねぇ。
……っかしいなぁ……。
思いつつ、大した考えもなく左手で石壁をグッと向こうへ押してみる──と。
押した石壁の一部が僅かに向こう側へ押し出される。
動いた石壁の大きさは、丁度トルスの旧市街にある俺の家の玄関戸と同じくらいか?
ただしこっちはキッチリ長方形に切り取られてるんじゃなく、レンガ調に積まれたそのレンガ石の形に沿って切り抜いた様な感じだ。
押し出した石壁の淵がくっきり見える。
石壁の向こうからの強い光が、こっち側に差し込んでいるからだ。
てぇ事は、だぜ。
この向こうは、どっかの室内とかそういうんじゃなく……。
外に通じてんのか……?
疑問に思いつつも俺は今度は慎重にその石壁に手をかけ、更に向こう側へ押し出す。
すると、ほんの少し動いた先で、止まった。
そのまま──直感の向くまま石壁を左方向へスライドさせてやると、まるで重たい引き戸を引いた様にゆっくりと、切り抜かれた石壁が横に開いていく。
開いた部分から眩しい陽の光が差し込んできた。
ピーヒロロ、と丁度どこかから鳥の鳴き声が聞こえてくる。
風がざわざわと木の葉を揺らす音も、風の流れも肌に感じる。
そう──石壁を開いた先は、外だった。
移動した距離と向かった方向からして、建物のすぐ裏手だろう。
俺は外の空気に誘われる様に、ゆっくりとそこへ足を踏み出した。
外に出るとすぐ目の前に、俺やダンの背丈を遥かに上回る高さまで生い茂った木々が並んでいる。
それも隙間なく、俺達が今出てきた石壁に沿って平行にずっと先まで、だ。
並んだ木々と石壁の間はちょっとした小道みてぇになっている。
外から隠された小道だ。
ダンが俺の後に続いて外に出てきて、眩しそうに目を細め辺りに顔を巡らせる。
その反応から見るに、どうやらこの光景はダンにとっても予想外だったらしい。
もちろん俺だってそうだ。
俺はてっきり隠し通路は全部地下に繋がってるモンだと思ってたからよ。
こんな、建物の外に出るよーなルートがあるってぇのはちょっと予想外だった。
さて問題はここからどうやって抜け出すのかって事だが……。
俺はランプの灯りを一度消してダンに目配せし、壁際に沿って続く小道の先をそっと歩き始めた。
小道はすっかり周りから隠されてっからうっかり安心感を持っちまいそうになるが、姿は見えなくたって音だけは誤魔化せねぇ。
うっかり無神経に話し声や足音を立てて、万が一にも近くを通りがかった誰かに訝しがられちまうのはバカらしいからな。
ここは念には念を押して慎重に……っと。
思いながら少し進んだ先に、ある変わった目印みてぇなもんがあった。
木の根元に、小さな白い立札。
立札には特に何も書かれちゃいねぇがここに一ヶ所だけ立ってんだから、何か意味があるんだろう。
別に木に細工がしてある様にも見えねぇけど……。
思いながらそっと立札の後ろに植わってる木に触れてみる──と。
その枝が柔らかい事に気がついた。
いや、柔らかいってぇか妙にしなるってぇか。
手で軽く枝を押しのけたら、あっさり従ってくれそうだ。
試しに立札の付いてない隣の木の枝に触れてみると、こっちはしっかりとしていてる。
見た目はよく似てるが、実は木の種類が違うのか──?
思いながら立札の木に手を戻し、そのままそっと横に掻き分けたら、思った通りすんなりと木の枝を掻き分けることが出来た。
つまりはここが本当の出口って訳だ。
俺は辺りに人の気配がない事を確認してから、木の枝を掻き分け木の向こう側へ出る。
ダンも俺の後から出てくる。
ダンが木の枝から手を離すと、木の枝は何事もなかったかの様に元に戻っていく。
こっちから見ると、もうどこがその木の部分だったのかパッと見には全く分からなくなっていた。
ダンが辺りを見渡し、ようやくここで口を開いた。
「──建物の裏側の様だな。
この辺りはまず人が通る事はない。
衛兵も建物の前方にしか配置していないし。
出入り口としては最適だ」
「──ああ」
並んだ木々は手入れがされてっから、庭師とかが触る事はあるかもしれねぇ。
木の種類が一ヶ所だけ違う事も気づいてんだろうが、例え木の向こうに人一人通れそうな道があるとしても、何とも思わねぇだろ。
普通建物の壁と木の塀はべったりくっつけて配置はしねぇからな。
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★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
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