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二十四章 潜入

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元々像が置いてあったその場所の床に、これまた四角い切れ込みを見つけた。

今度は像の台座の底面と同じ大きさの正方形。

その手前側端の中央部分にはまた、小さな長方形の切れ込みがある。

仕組みはさっきと同じってとこかな?

そう単純に考えて、その長方形の左端を下へ押し込んでみる──と。

今度はそのまま素直に下に押し込まれた。

像の下にあった正方形の切れ込みが一段下へ下がり、そのままその部分が床下へ収納されていく様にスライドして動いていく。

そうして開いた正方形の穴には──

「──階段……」

が、続いていた。

下へ向かっていく石階段で、明かりはねぇから真っ暗すぎて先の様子はほとんど何も見えねぇ。

「これは……驚いたな」

ダンも心底驚いた様に声を上げる。

「ここには何度も来ていたが……」

……まぁ、隠し通路の存在を知らなきゃ、んな仕掛けがあるなんてフツー思わねぇし、見つけねぇだろう。

作った人間の狙いは見事に達成出来てるって訳だ。

に、しても──。

この階段、どこまで繋がってんだ?

外壁の感じから単純に考えて、三階から一階までは繋がってるだろーけど、その先は──?

やっぱり地下の通路に繋がってるんだろーか。

その先をずっと辿りゃあ、トルスにまで繋がってんのか??

とにもかくにも、だ。

「──何かランタンみてぇなモンが欲しいな。
まぁ役に立つかは分かんねぇけど、この階段の先がどんな場所に繋がってんのか調べてみてぇし」

さすがにトルスまで行ってみる気にはなれなくても、もしこの先に地下通路が繋がっててそいつが更に城のあちこちに繋がってるんだとしたら、俺の調査だって今よりぐんと楽になるはずだ。

そう期待を込めつつ言うと、

「──すぐに取ってこよう」

ダンがそう言ってランタンを取りに行ってくれたのだった──。


◆◆◆◆◆


それから程なくして──俺はダンと、ダンが持ってきてくれたランタンと共に、下へと繋がる階段を降りて行く事にした。

ダンは初め、王族の為の秘密の通路を自分が通るのは……と躊躇していたが、

「これをダンが知っておく事で、もしかしたらレイジスやミーシャの役に立つ可能性だってあるだろ?
要はさ、ダンが二人を裏切って、悪い事にこの道を使う事がなけりゃあいいんだよ。
どーしても気になるってんなら事が全部片付いてからこの道塞いでもらやぁいいじゃねぇか」

との俺の説得で、結局は一緒についてきてくれる事になった。

もちろん俺らが階段下に消えた後にこの部屋に誰かがうっかり入ってきたりしねぇ様にしっかりと部屋に鍵もかけた。

階段下のその先へ行くのに時間がどれくらい必要かは分からねぇが……。

まぁダンの時間の許す範囲で一旦戻ってくるって事でいいだろ。

さぁて、それじゃあ行きますかね。

ランタンのオレンジ色の灯りが真っ暗闇の階段と、周りの石造りの壁面を照らす。

ランタンの灯りに照らされて見える範囲ではまず階段は五段。

五段下りた所で人一人半立てるかなってくらいの小さな踊り場(って言うのか?これ)がある。

そして折り返す様にまた下へ続く短い階段があるって感じなんだが……。

それよりもまず。

階段を下って丁度三段目の左手の壁に一箇所だけ、横長の長方形に浮き出た箇所がある。

「──ダン、あれ」

指を指してダンにそいつを示すと、ダンが「ああ」と深く頷いた。

位置的に考えて、たぶんあいつを押し込むかなんかしたらここの入口が閉じる、みてぇな仕掛けとかなんじゃねぇか?

いくらここへの入口が厳重な仕掛けで隠されてたって、そいつを使う人間がお留守の間パーパーに開いてちゃ意味ねぇだろ。

誰かに追われて逃げる時に使うってんなら尚更だ。

俺は右手にランタンを持ち、左手は壁に軽く添えながら、ダンに先立って階段を下り始める。

もちろん浮き出た長方形の前も通り過ぎ、踊り場に立った所で、ダンがその前に立つのを待った。

ダンが壁から浮き出た長方形の上に手を置き、確認する様に俺の方を見る。

俺は『いつでもOKだ』って意味を込めて頷いた。

ダンが壁から浮き出た長方形の部分を押す──と。

ガコッとどこかで何かのスイッチが入った様な音がして、静かに──まるで滑る様に、この秘密通路の入口が閉まっていく。

実際に上から見てる訳じゃねぇから定かじゃないが、たぶん元の位置──つまりはこの入口の上──に本棚が戻っていってるんだろう。

俺がさっき動かしたままの獅子像の方はどうなってんのかは分からねぇが……。

といくらか心配しつつも。

まぁ、どっちにしろ部屋に鍵かけといてるしな。

大丈夫か。

と、あっさり自分に納得させる。

さて、いよいよ俺とダンの頭上で入口がキッチリと閉ざされると、周囲は俺の持つランタンの灯りのみが頼りになった。

よし、と一つ気合いを入れて、階段を一歩下ろうとした……ところで。

ふわっと足元の階段の縁が薄く青色に光る。

光るっつってもランタンの灯り程の強さじゃねぇ。

足の置く位置がかろうじて分かるくらいの、淡い光だ。

そいつが、見える範囲全ての階段に設置されている。

……なるほどな。

もし緊急にここに入った時、何の灯りもなくってもとりあえず困る事ぁねぇ様に出来てるって訳だ。

ま、でも周囲が見えるランタンの明かりがあった方が探索には向いてるぜ。

後ろのダンが、もちろんこの仕掛け全体にだろう、驚きと感嘆の込もった息を吐くのが分かる。

俺はそいつを背に、改めてゆっくりと階段を下り始めた。
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