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第二章 塔

18.復活の魔王※

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 夜半、石造りの部屋に置かれた粗末な寝台の上で魔族の雌雄がその身を絡め合っている。
 ……ただし、つい先ほど雌の側がマウントを取り返したのだが。

 ダールに伸し掛かられたクェントは慌てて身を捩るが、しっかりと押さえ込んで逃さない。
 クェントはどうにか拘束から逃れようと藻掻くが、びくともしない。
 しばらく抵抗していたが、やがて無駄だと悟ると、今度は必死になって顔を背けようとする。

 だがいかな戦闘巧者とて竜の膂力には敵わない。いつしかクェントは諦めて目を閉じた。

 観念したらしきクェントがそれきり黙り込むと、ダールは満足げに微笑んで再び彼の唇を奪う

「んふふ」

 ダールはご満悦のていでクェントの口内をねぶっている。いささか稚拙ではあるが、その分情熱的ではある。

「…………くっ!」

 背中をタップして抗議の意を示すと、ようやくダールは解放してくれた。
 クェントは大きく息をつく。

「どういうことですか!」

「攫って閉じ込めて薬盛って犯した奴の台詞とは思えんな」

「ぐぬ……」

 それを言われてしまっては二の句が継げない。クェントは歯軋りした。

「――いや、薬! そう! 象も墓の場所を吐くような濃度の毒香を嗅いでおいて、なんで正気に戻ってるんです!?」

「知らん。なんか目が覚めたら真っ最中だったから、途中で効果が切れたんじゃないか」

 クェントははたと気が付く。どうせ死ぬほど嫌がられると決め込んでいたから、途中からは触手で緊縛でもして無理やり事に及ぼうと考えていたのだ。当初は。
 それがやけに協力的で抵抗の一つもしないものだから調子が狂って段取りが飛んだ。
 無言で頭を抱えてしまったクェントの様子を眺めながら、ダールはからからと笑う。

「まあ、些事だ」

 クェントは頭上で手を組んで枕代わりにすると、そのままごろりと横になった。

「そうですね」クェントは投げやりな口調で言う。そして、ぼそりと付け加えた。「――私の気持ちなんて些細なものでしょうね」
 しばらく沈黙が流れた後、ダールは不審げに首をかしげてみせた。

「な~に終わった雰囲気に持ち込んでるんだ、お前」

「はぁ?」

 ダールはクェントの上に跨ったまま、見せつけるように秘所を広げて見せた。そこはクェントの放った精液で濡れそぼっている。

「お望み通り、お前に犯されてやるぞ、クェント。他ならぬ私自身の意志で、だ」

 ダールは萎えかけの陰茎に股を擦り付け、その持ち主を挑発するように見つめていた。
 クェントはそんな彼女の言動に困惑しきって首を振ってみせる。

「いやいや、おかしいでしょう。あなたは私のことなんか虫か何かのように思ってる筈じゃなかったんですか」

「何言ってるんだ? 私にとっての雄なんては、お前しか居ないのに」

 クェントは目を丸くしたまま硬直してしまう。その隙に腰を引き寄せられ、膣内に挿入されてしまった。

「ん……ッ!」

「ま、細かい話は後だ。ここは寝床で、我々は雄と雌でお互いを好いている。ならば、するべきことをしようじゃないか」

「同意のプロセスがすっ飛ばされてる気がしますけど!?」

 クェントは抗議の声を上げるが、ダールは耳を貸しもしない。

「うるさい奴め、お前が言うな」

「んぐッ!?」

 ダールはおもむろに腰を引くと、次の瞬間に勢いよく叩き付けた。その衝撃にクェントは息を詰まらせる。
 彼女自身も息を妖しく荒げてみせながら、容赦なくクェントを攻め立てる。

「う……ぐ……!」

 クェントは苦痛とも快楽ともつかない声を上げた。
 熱くうねる膣内が生き物のように陰茎を包み込み、締め付ける。
 クェントは思わず達してしまいそうになったが、なんとか堪えた。

 ダールは勝ち誇ったように口の端を歪める。
 クェントは悔しそうに歯噛みしたが、やがて覚悟を決めたように表情を改めると、思い切り下から突き上げた。
 予想外の反撃に驚いて仰け反る彼女の腰を掴むとガツガツと追撃をする。

「んんっ♡」

 クェントは意地悪な笑みを浮かべて、尚も激しく攻め立てた。

「あはは! どうです? 気持ちいいですか?」

「……ああ、とても良いぞ。もっとしてくれ」

 勝ち誇るクェントの肩にしがみつき、ダールはにんまりと笑ってみせる。
 肩口にすりすりと頬を寄せながら、腰を揺らめかせてみせる。淫蕩な仕草を見せつけられ、仕返ししそびれたのを悟った彼は苦々しい顔をした。
 しかし、すぐに諦めた様子で溜め息をつくと、彼女の要求通りに動き始める。

「んぅ……♡」

 クェントの動きに合わせてダールが鼻にかかったような甘えた声を上げる。クェントは忌々しげに舌打ちすると、乱暴に腰を突き上げた。

「ふぁっ♡」

 突然の刺激に驚いたのか、ダールは目を丸くして身を震わせる。
 身を起こそうとするのを、クェントは許さない。クェントは腰を掴んで引き寄せると同時に、強く突き上げる。

「あはッ♡」

 ダールの身体が大きく跳ねた。
 クェントの執拗な責めに、ダールの秘所からは愛液が溢れ出し、太腿まで濡らしていた。

「く、う……」

 クェントは喘ぎを押し殺す。そして、一際深く突き入れると、精を放った。
 びくんっとダールは背を仰け反らせ、「ひゃああっ♡」と甲高い悲鳴を上げて絶頂を迎えた。
 全身を痙攣させながら、余韻に浸っている。その様子を見て、クェントはすっかり毒気を抜かれてしまった。

 ダールがゆっくりと身を起こす。汗ばんではいるものの、その表情には余裕が感じられる。
 小さく喘ぎながら咥えこんでいたものを抜き去ると満足げに尾を揺らした。

「どうだ、私の中は気持ち良かったか?」

 得意げに言い放つダールに、クェントは不機嫌そうに顔をしかめた。

「ええ、とてもね。一生の思い出にしますとも」

「なんだ、これっきりなのか? それは残念だ」

「……いえ、あなたさえ良ければ、何度でも」

 クェントはそっぽを向いたが、そんな彼が耳元までを血の気で染めているのをダールは見逃さなかった。
 (照れている!)そう気付いてしまったら我慢できなくなってしまう。

「ふっふっふ。可愛い奴め!」

 ダールはクェントの首に抱きつくと、頬をすり寄せた。
 クェントは慌ててダールを引き剥がす。

「待ってください。……待って、待てと言っとろうが! 一旦離れて!」

「ん~……嫌だ。お前のちんちんはそうは言ってないもの」

「だからですよ!!」

 何やら物凄い無体を働き働かれとしてしまったが、ダールはクェントが心底惚れた女だ。
 そんな相手に素っ裸で絡み付かれてしまうとどうしようもなく興奮してしまうのは致し方無い事実である。

 が、しかし彼としてもこれ以上流されるわけにはいかなかった。

「説明を……! お互いに! する必要があるのでは!?」

 キスを試みるダールから口元を庇いながら、クェントは必死で叫んだ。


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