6 / 7
6.お兄様
しおりを挟む昨日あったことはまだ誰にも言い出せていない。
だってどう切り出せばいいか分かんないし?怒られるのが嫌だから言ってない訳では無い.........そう思ってるのは、ほんの半分くらいだ。
「おーいレティ?料理長がマドレーヌを焼いてくれたんだけど食うか?」
「食べる!」
がっつきすぎ?
でも、うちの料理長の焼くマドレーヌは他のどんなお店や家のマドレーヌより美味しいのだ。食べれる時に食べておかないと、いつも気づけばお父様やお母様、お兄様に食べられてしまって残らない。
だから、今回声をかけてくれたお兄様には感謝しかない!
マドレーヌの乗ったお皿を持って部屋に入ってくるお兄様。父上と母上には内緒な?というお兄様は、私にとってのマドレーヌの神様だったようだ。
「いただきまーす!......ん~!さすが我が家の料理長!」
「お前、ほんと幸せそうに食うよな...」
そんなの美味しいんだから、当たり前だ。そういうお兄様だってもう二個目に手を伸ばそうとしてるのに。
「おい、なんか指に着いてるぞ?食べる前に手は洗ったんだよな?」
へっ?!まずい。マドレーヌに夢中で完全に忘れてた!どっ、どうしよう?!
「これは、その、あれよ!あ、アクセサリーを、ツケテミタクナッテー。カイテミタノ~」
く、苦しすぎる!いくらなんでも、もっと他にいい言い訳があったはずだ!
恐る恐る兄に目を向ければ、何故かニコニコと微笑んでいる。しかも、「なるほどなー。そういうこともあるよなぁ」などと言っている。
もしかして、誤魔化せた?言い訳は苦しかったかもだけど、私の演技力が功を成し「そんな訳あるかぁーーーー!!」
やっぱり?!
「だいたいお前は嘘も誤魔化すのも下手すぎるんだよ!言い訳の内容以前の問題だ!」
ええ?!私の演技がダメだったってこと?それが本当だとしたら何気にショックである。
「...それで?それはなんなんだ?」
いや、私にもそれは良く分からないんだけど……強いて言うなら……
「……婚約指輪?」
「……」
そんな何言ってんだお前、って顔で見られても……
「婚約指輪ってなにか知ってるか?」
「失礼ね!それくらい知ってるわよ!」
全く……兄は私をなんだと思っているのだろうか。
「私にもよく分からないけど、多分魔法の指輪?なのよ」
「夢見るお姫様じゃあるまいし……いや、ちょっと待て。おい、それよく見せろ」
なにか思い当たることでもあったのか、急に真剣な表情になるお兄様。
言われた通り、左手を兄の方へ差し出した。
「……おい、おいおいおい!お前、どこの大魔法使いにこんなものつけられてきたんだ?!」
「え、ええっと、だ、誰だったかしら……」
兄の心当たりは当たっていたようで、なにかまずいことでもあったのか相当焦っている。
というか、大魔法使い?あの人が?!
「どこの誰とも知らない奴につけられたのか?!」
信じられない……。前々から阿呆だとは思っていたが、まさかここまでとは……と頭を抱えるお兄様。
私に丸聞こえなんですけど。今回悪いのは私だということは分かってるけど、前々阿呆だと思っていたってどういうこと?
それにしても……
「やっぱりこれって婚約指輪みたいなものなの?」
私がそう言うとお兄様は、はぁぁぁぁ……と溜息をつく。
そして一言。
「ただの婚約指輪の方が百倍マシだったよ……」
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
婚約者に捨てられましたが
水川サキ
恋愛
婚約して半年、嫁ぎ先の伯爵家で懸命に働いていたマリアは、ある日将来の夫から告げられる。
「愛する人ができたから別れてほしい。君のことは最初から愛していない」
浮気相手の女を妻にして、マリアは侍女としてこのまま働き続けるよう言われる。
ぶち切れたマリアはそれを拒絶する。
「あなた、後悔しますわよ」
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました
小倉みち
恋愛
公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。
周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。
婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。
家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。
どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。
代わりに、彼らの味方をする者は大勢。
へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。
そんなある日、ふと思った。
もう嫌だ。
すべてが嫌になった。
何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。
表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。
当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。
誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。
こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる