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3.街に出かける
しおりを挟む「ん~っ!おいひぃ~」
町に来て一番にすることはいつも決まって食べ歩きだ。最近はずっと同じ店の肉串を食べている。
昔はどこに行く時も誰かが着いてきたけれど、私がいつも護衛を撒くものだからお父様も渋々私に護衛をつけるのを諦めた。
伯爵家の娘がそんなことをしていいのかと聞かれれば、そんなのNOに決まってる。
でも、町にいる時はいつもどこにでもいる町娘の服を着ている。つまり、結局は私の正体がバレなければOKという訳なのだ。
しばらく露店を見ながら歩いていると、いつの間にか町の外れ近くまで来てしまっていた。
この先は特に何も無いし……ん?
来た道を引き返そうとしていた時だった。
軒より高い木の上に男の子を見つけた。その時一陣の風が辺りを吹き抜けた。
「危ないっ!」
次の瞬間に見えたのは木の上から真っ逆さまに落ちる男の子の姿だった。
手を伸ばそうとしても、気づいた時にはもう遅い。
だめ……っ!間に合わない……!
………!
目を疑った。
そのまま地面に叩きつけられると思われた男の子は、地面ギリギリのところで止まっていた。
驚きで動けないでいる私を他所に、男の子はそのなにかによってゆっくり地面に降ろされた。
「大丈夫?!怪我はない?」
「う、うん。大丈夫……」
とりあえず安心して安堵の溜息をついた。
よく見ると男の子の腕の中には子猫がいる。恐らくこの子猫を助けるために木に登ったのだろう。
「猫ちゃんも無事そうで良かったわ」
「お姉ちゃんが助けてくれたの?」
まっすぐこちらを見つめてくる男の子にゆっくり首を振った。
「お姉ちゃんは魔法が使えないの」
この世界ではおよそ二人に一人が体内に魔力を宿して生まれてくる。魔力がある人同士で結婚する事もしばしばあるため、貴族だと魔力を持っている割合が少し高い。
しかし、持っていない人も多いため魔法師を輩出する家系以外では特に重要視されることは無い。
かく言う我が家も魔法師を輩出する家系ではないが、お父様とお兄様は魔力を宿していて、少しだけ魔法を扱うことができる。
因みにお母様と私は魔力を持たない側の人間だ。
「そっか……、じゃあ僕を助けてくれたのはきっと精霊さんだね!」
精霊はこの世界のどこにでもいる非常に気まぐれな存在である。
時には枯れた大地に雨の恵みをもたらすこともあれば、竜巻で町を吹き飛ばしたこともあると言われている。しかし、この様な歴史的な事例は滅多になく殆どがロウソクに火をつけたり、風でスカートをめくるなどといった小さなイタズラだ。
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けれど、今回に至っては私たち以外で周りに人は見当たらない。
「そうね。きっと精霊さんが助けてくれたんだわ」
そう言うと、男の子は「そうだよね!」とぱっと笑った。
「あ、僕、お母さんの手伝いするように言われてたんだった!僕、帰らないと。お姉ちゃんもありがとう!じゃあね!」
男の子が走っていく後ろ姿にじゃあね!と手を振って見送った。
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