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次の日からの私は針のムシロ状態で仕事をすることとなった。
女性職員からは「あの北条さんと付き合うなんて信じられないわ‼きっと何か弱みでも握ったのよ」と陰で言われ、男性職員からも「大人しそうな顔してるけど、あんな高スペック男を落とすあたりスゲー女だよな」と好奇の目で見られる…。
せめて昼食だけでも静かな環境で食べたいと思う私を誰が止められるのだろう。
「あー落ち着くわ…」
ジーワジーワミーンミーン…セミの声が騒がしいけど…。
あの日から、私は公園で昼食を食べる日を送ることとなった。
「あのさー理来ちゃん…暑くないの…?」
昼飯仲間の春原はるかちゃんは汗をダラダラと流しながら聞いてくる。なんか…付き合わせてごめんね?
…木陰のベンチとはいえ勿論暑いです。しかも今日は8月最高気温を突破していると天気予報も言っていた。
…熱波に焼かれてお弁当まで腐りそうな勢いです。
「お弁当を食べたら、せめて冷たい物でも飲みに行こうよ」
そう言う彼女に激しく同意するとお弁当を掻っ込む。もはや一秒でも早く移動しないとここで干からびそうな勢いだった。
「あー…落ち着くわー」
本日2回目の台詞だけれど、今度は心から言える。クーラー万歳!
涼しいコーヒーショップの店内は平日と言うこともあり、比較的人出も落ち着いているようだ。見回して知り合いがいないことにホッとする。
スマホをいじっていたはるかちゃんは操作を終えると、ニコニコしながら話しかけてきた。
「それで、理来ちゃん、やっぱり北条先輩と付き合っているっていう噂は本当だったんだよね?」
はるかちゃんはニコニコして言うが、こちらは「ああ…うん」としか言えない。
…だって嘘なんだもん。ニセモノ彼氏ですよ?
でもそれを言ったらどんな目に遭わされるか想像もできない…。
ため息を吐く私にはるかちゃんは「でも、この間は否定していたのに、いきなり付き合うことになったんだねー何かあったの?」と確信を突いてきた。
うぐっ…確かに彼女に昼休みに聞かれた時は「北条先輩以外が好みだ」って言っておいて、翌日付き合いましたは 無理があるか…。
それに彼女は実は市役所内部の噂にかなり精通している。
情報屋かよっ⁈てぐらいに様々なことを把握しているのだ。
私は「絶対に誰にも言わないように」とはるかちゃんに念を押してから事の顛末を話すことにした。
「…はぁ~、北条先輩も考えたね~‼」はるかちゃんは感嘆したような声を上げる。
「何が~?」どうでも良さそうに聞く私。あーカフェラテ美味い。
「だって、最近理来ちゃんのことをちょっと良いなって言っている人がいてさ、それを聞いた北条先輩が『俺のだから手を出すなよ?』って威嚇したって話があってさー」
「はぁ⁈えっ?初耳なんだけれど、誰?どこの人が私をいいって言ってたって?」
「…ええ~、いや食いつくのはそこじゃない。北条先輩の話がしたいんだけどな~」
「いや、私のことを好きだって言ってくれた人の方が気になるわ‼偽物の彼氏に操をたてる義理なんてこれっぽっちも無いし!」
もしも、私のことを好きだって言ってくれる人と恋人になれたら、あの恐怖の大魔王みたいなイケメンから私を救い出してくれるかもしれない!そうすれば無理やりキスとかされることも無くなるのだ‼私の日常にも平和が戻って来る‼あああ人間の彼氏が欲しい‼
「まあまあ、北条先輩が理来ちゃんにべた惚れだって噂が出たのもそこなんだから、まずは話を聞きなって」
はるかちゃんは言うが、もはや大魔王の話よりも人間の男の話が聞きたいのだよ!
「はるかちゃん‼ぜひ、私にその男性を紹介して頂戴‼」
私はかなり食い気味に彼女に頼み込んだ。先ほどまで、彼女がスマホを操作していたことも忘れて…。
「理~来‼…浮気の相談かな?まったく…彼氏の前でそれはないんじゃない?」
後ろから恐ろしい声が…聞こえる…?恐怖の大魔王の声が…⁇
「あ、先輩早かったですね~‼ここ直ぐに分かりましたか?」はるかちゃんがニコニコと手招きすると、北条先輩は当たり前の様に私の横に腰かけた。
「うん、連絡を貰って直ぐに出たから。場所は知らなかったけどスマホで調べたら分かった。へぇ…けっこういい店だね」
コーヒーを注文した彼は店内をグルリと見回してはるかちゃんにほほ笑んだ。
「それで、さっき男性を紹介してなんて理来が叫んでたみたいだけど、春原さんどういうことか教えてくれる?」
…怖い…笑っているけれど、笑顔の裏に何か見ちゃいけないモノが見える気がする…。あれ?邪悪なオーラかな?
「あの…はるかちゃん…どうして、北条先輩の連絡先を知っているの…?」
恐る恐る聞くと「北条先輩が、『理来といつも仲良くしてくれているんだってね。あいつ恥ずかしがって昼休みはいつもどこかへ行っちゃうから、二人で出かける時は俺のスマホに連絡貰えるかな?』って連絡先を交換したの」
はるかちゃんはにこやかに言うが、それを早く言って欲しかった。
「そ…そうなんだ…」まさか会いたく無い人ナンバーワンの座がここに来るとは微塵も思わず、男を紹介してくれと叫んでしまった自分を呪う…。
「こんなに暑い日に外に出ていくから熱中症にならないか心配しただろ?」
そういう貴方はこの暑いのにコーヒーホットですか。微笑みながら飲む姿は絵になりますねー。周りの女性客もチラチラとこちらを見ているのが判ります。うっ…妬みの視線がチクチクと痛い…。
「そ、そろそろ出ませんか?昼休み終わっちゃうし…」そっと提案するも「あと10分ぐらいは大丈夫」と二人に却下され、またそろそろと腰を下ろす。
「…それで、春原さんさっき理来が男性を紹介してって言っていたみたいだけれど?」
あ、そこに戻りますか…忘れてはくれないんですね…。
はるかちゃん頼むから上手く話を逸らしてくれ‼彼女に目配せをしながら念を飛ばすも彼女は察しているのかいないのか…首を傾げた。
「えーっ?理来ちゃんとの秘密なんだけれどな…まあ、北条さんならいいかな」
いや、秘密は秘密のままでお願いしたいのですが。
「北条さん、今のままだと理来ちゃん絶対に浮気すると思いますよ?」
ハア?何の話ですかー?
女性職員からは「あの北条さんと付き合うなんて信じられないわ‼きっと何か弱みでも握ったのよ」と陰で言われ、男性職員からも「大人しそうな顔してるけど、あんな高スペック男を落とすあたりスゲー女だよな」と好奇の目で見られる…。
せめて昼食だけでも静かな環境で食べたいと思う私を誰が止められるのだろう。
「あー落ち着くわ…」
ジーワジーワミーンミーン…セミの声が騒がしいけど…。
あの日から、私は公園で昼食を食べる日を送ることとなった。
「あのさー理来ちゃん…暑くないの…?」
昼飯仲間の春原はるかちゃんは汗をダラダラと流しながら聞いてくる。なんか…付き合わせてごめんね?
…木陰のベンチとはいえ勿論暑いです。しかも今日は8月最高気温を突破していると天気予報も言っていた。
…熱波に焼かれてお弁当まで腐りそうな勢いです。
「お弁当を食べたら、せめて冷たい物でも飲みに行こうよ」
そう言う彼女に激しく同意するとお弁当を掻っ込む。もはや一秒でも早く移動しないとここで干からびそうな勢いだった。
「あー…落ち着くわー」
本日2回目の台詞だけれど、今度は心から言える。クーラー万歳!
涼しいコーヒーショップの店内は平日と言うこともあり、比較的人出も落ち着いているようだ。見回して知り合いがいないことにホッとする。
スマホをいじっていたはるかちゃんは操作を終えると、ニコニコしながら話しかけてきた。
「それで、理来ちゃん、やっぱり北条先輩と付き合っているっていう噂は本当だったんだよね?」
はるかちゃんはニコニコして言うが、こちらは「ああ…うん」としか言えない。
…だって嘘なんだもん。ニセモノ彼氏ですよ?
でもそれを言ったらどんな目に遭わされるか想像もできない…。
ため息を吐く私にはるかちゃんは「でも、この間は否定していたのに、いきなり付き合うことになったんだねー何かあったの?」と確信を突いてきた。
うぐっ…確かに彼女に昼休みに聞かれた時は「北条先輩以外が好みだ」って言っておいて、翌日付き合いましたは 無理があるか…。
それに彼女は実は市役所内部の噂にかなり精通している。
情報屋かよっ⁈てぐらいに様々なことを把握しているのだ。
私は「絶対に誰にも言わないように」とはるかちゃんに念を押してから事の顛末を話すことにした。
「…はぁ~、北条先輩も考えたね~‼」はるかちゃんは感嘆したような声を上げる。
「何が~?」どうでも良さそうに聞く私。あーカフェラテ美味い。
「だって、最近理来ちゃんのことをちょっと良いなって言っている人がいてさ、それを聞いた北条先輩が『俺のだから手を出すなよ?』って威嚇したって話があってさー」
「はぁ⁈えっ?初耳なんだけれど、誰?どこの人が私をいいって言ってたって?」
「…ええ~、いや食いつくのはそこじゃない。北条先輩の話がしたいんだけどな~」
「いや、私のことを好きだって言ってくれた人の方が気になるわ‼偽物の彼氏に操をたてる義理なんてこれっぽっちも無いし!」
もしも、私のことを好きだって言ってくれる人と恋人になれたら、あの恐怖の大魔王みたいなイケメンから私を救い出してくれるかもしれない!そうすれば無理やりキスとかされることも無くなるのだ‼私の日常にも平和が戻って来る‼あああ人間の彼氏が欲しい‼
「まあまあ、北条先輩が理来ちゃんにべた惚れだって噂が出たのもそこなんだから、まずは話を聞きなって」
はるかちゃんは言うが、もはや大魔王の話よりも人間の男の話が聞きたいのだよ!
「はるかちゃん‼ぜひ、私にその男性を紹介して頂戴‼」
私はかなり食い気味に彼女に頼み込んだ。先ほどまで、彼女がスマホを操作していたことも忘れて…。
「理~来‼…浮気の相談かな?まったく…彼氏の前でそれはないんじゃない?」
後ろから恐ろしい声が…聞こえる…?恐怖の大魔王の声が…⁇
「あ、先輩早かったですね~‼ここ直ぐに分かりましたか?」はるかちゃんがニコニコと手招きすると、北条先輩は当たり前の様に私の横に腰かけた。
「うん、連絡を貰って直ぐに出たから。場所は知らなかったけどスマホで調べたら分かった。へぇ…けっこういい店だね」
コーヒーを注文した彼は店内をグルリと見回してはるかちゃんにほほ笑んだ。
「それで、さっき男性を紹介してなんて理来が叫んでたみたいだけど、春原さんどういうことか教えてくれる?」
…怖い…笑っているけれど、笑顔の裏に何か見ちゃいけないモノが見える気がする…。あれ?邪悪なオーラかな?
「あの…はるかちゃん…どうして、北条先輩の連絡先を知っているの…?」
恐る恐る聞くと「北条先輩が、『理来といつも仲良くしてくれているんだってね。あいつ恥ずかしがって昼休みはいつもどこかへ行っちゃうから、二人で出かける時は俺のスマホに連絡貰えるかな?』って連絡先を交換したの」
はるかちゃんはにこやかに言うが、それを早く言って欲しかった。
「そ…そうなんだ…」まさか会いたく無い人ナンバーワンの座がここに来るとは微塵も思わず、男を紹介してくれと叫んでしまった自分を呪う…。
「こんなに暑い日に外に出ていくから熱中症にならないか心配しただろ?」
そういう貴方はこの暑いのにコーヒーホットですか。微笑みながら飲む姿は絵になりますねー。周りの女性客もチラチラとこちらを見ているのが判ります。うっ…妬みの視線がチクチクと痛い…。
「そ、そろそろ出ませんか?昼休み終わっちゃうし…」そっと提案するも「あと10分ぐらいは大丈夫」と二人に却下され、またそろそろと腰を下ろす。
「…それで、春原さんさっき理来が男性を紹介してって言っていたみたいだけれど?」
あ、そこに戻りますか…忘れてはくれないんですね…。
はるかちゃん頼むから上手く話を逸らしてくれ‼彼女に目配せをしながら念を飛ばすも彼女は察しているのかいないのか…首を傾げた。
「えーっ?理来ちゃんとの秘密なんだけれどな…まあ、北条さんならいいかな」
いや、秘密は秘密のままでお願いしたいのですが。
「北条さん、今のままだと理来ちゃん絶対に浮気すると思いますよ?」
ハア?何の話ですかー?
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