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【天竺市役所】は私たちが思っていたよりも大きな外観の綺麗な庁舎だった。
良いな…予算もいっぱいありそう…。そう思う私は心が貧しいのでしょうか?
「明日から、ここで研修を行うようになるんですよね?」私の言葉に北条先輩が頷く。
大分日も落ちてきて、退庁時間を過ぎたのかチラホラと帰宅する人も見える。
その人たちは楽し気に笑いながら、こちらをチラチラと気にするが、隣のイケメンはまったく意にも介さず辺りを眺めている。
「これだけ、邪気があってもこの人たちは感じないんですかね?」小声で呟くと、「まあ、実際は影響を受けていても『今日はなんだかむしゃくしゃする』とか『嫌な気分だ』ぐらいなんだろうな」と北条先輩が答える。
そうやって気が付かないうちに邪気を浴び続ければ、人は狂暴になる。それが喧嘩や虐待へと繋がり大きな事件へと発展する。…まるでドミノ倒しのように…。
それを解って犯人が魂を逃がしては悪霊を増やしているとしたらそれは危険人物だ。
明日からそれが誰でどんな目的でやっているのかを解明しなければならない。
私たちはそのために来たのだから…と真面目に考えていたのにお腹が「グーッグググー」と主張を始めた。…うん、腹が減っては戦は出来ぬっていうし先ずは腹ごしらえだ!
そう思い隣に立つ先輩を見ると、彼は地面に崩れ落ち二つ折りになって声も出さずに爆笑していた。…私の腹の音一つで楽しんでいただけたのなら何よりです。
先ずはホテルへと帰ってご飯を食べることに致しましょうか。
明日から働く意欲を養う為にも栄養をつけねば!…そう思っていたのに…
「あの…?先輩…私はなぜにこのような場所にいるのでしょうか?」
私はテーブルの正面に座る北条先輩にコッソリと話しかけた。
「俺が来たかったからだ」簡潔に答えるけれど、私はなんで北条先輩と一緒にレストランでディナーをしなければならないのかを聞いているんですよー⁈
市役所見学を終えた私たちは、あの後ホテルへと引き上げました。今日は色々あって疲れたし、コンビニでお弁当でも買ってこよう…お肉が食べたいから生姜焼き弁当にでもしちゃおうかな?
それともジャンクフード祭りも良いなぁ…フライドチキンも最近食べていないし…と脳内肉祭りを開催していた私に先輩がいきなり「ああ、俺、食いたい店があって、そこ予約したからお前も来いよ」と言ったのだ。
「嫌です」と即答したのに「もう二人分予約したし、お前ごときに拒否権はナイ!適当なワンピースでいいから着てこい」と無理やり約束させられたのだ。
…ひ、ひどい…私の生姜焼き…ジャンクフード…とも思ったが、でももしかしたら美味しい串焼きのお店とか露店かもしれないし…と気を取り直し、指定された一張羅のワンピースを着てロビーに集合した。先輩は自分が連れている女が汚い恰好をしているのが許せないのかもしれないし、ワンピースならお腹を締め付けずお腹いっぱい食べられると判断した結果だ。
それなのに、無理やりタクシーに乗せられて…着いたお店は高級レストランの夜景がきれいな予約席ですよ⁈…私とこんな店に来てもどうしようもないじゃないですか‼
これだったら、串揚げとか焼き鳥が食べたかった…ビールもキュッとね…ああ…。
はっ?!もしかして先輩が本命と来るための下見か?それに付き合わされているのか?…突然私は気が付いてしまった。
あり得る…。たしか春原さんは食事代も経費で落とせるって言っていたし、高いお店に来ても経費ならタダ‼本命と来た時にどんな雰囲気か知りたかったってことか?成程ね~!さすがは北条先輩だわ抜け目がない。
納得した私はとりあえずビールを頼もうとしたが、残念ながらここにそんなものはなかった…リキュール…?食前酒…?…あの、これはどうすれば良いのでしょうか。
「先輩…あの、何を頼んだらいいか分からないんですけれど…」こっそり囁くと、
「ああ、こんなところで先輩って呼ぶのは止めろ。好奇の目で見られるからな。俺がお任せで頼むからとりあえず、食事を楽しめ…嫌いなものはないよな?」
北条先輩…いや、北条さんの言葉に従い、注文もお願いする。
食事を楽しめと言われても、マナーを思い出すのに必死で、味なんかろくすっぽ思い出せないまま、食事は終わった…。あー高級なお肉もワインも味なんか全然わからなかった自分が恨めしいぜ…。
その上、極度の緊張感から、私はたった1杯のワインでグデングデンに酔っぱらってしまったのだ。もうもう、本当に穴があったら入りたい…。
気が付いたとき、私はホテルのベッドの上にいた。…あー頭痛い…。
二日酔いかもしれないが、喉がひりつくほど乾いている。ベッド脇の冷蔵庫からミネラルウォーターを出してごくごくと一気に飲む。あー美味い。
そこで私は気が付いた。…あれ?ここ私の部屋じゃないぞと。
私の荷物も無いし…昨日は…記憶が無いけど、北条先輩が連れて帰ってくれた訳じゃないのかな…?部屋中をキョロキョロと見回していると、バスルームから音が聞こえてくることに気が付いた。…誰か…いる?
これはヤバい…拙いことになる前に逃げ出さなくては…そう思い、ベッド脇の机に乗っていた自分のバッグを掴むとソロソロと逃げ出した。…鞄の中身もちゃんとある。
スマホ、財布…と確認しつつドアに手を掛けた瞬間、バスルームの扉が開き、上半身裸の北条先輩とバッチリ目が合ってしまった。
…その瞬間の私は素早かった。鞄からスマホを出すと北条先輩の上半身裸の画像を激写して脱兎のごとく逃げ出したのだ。…いや~我ながら素晴らしい逃げ足だったと思う。
…結局、先輩にとっ掴まり、みっちりとお説教をされた上で私の傑作写真は消されてしまったのだけれど…残念。
良いな…予算もいっぱいありそう…。そう思う私は心が貧しいのでしょうか?
「明日から、ここで研修を行うようになるんですよね?」私の言葉に北条先輩が頷く。
大分日も落ちてきて、退庁時間を過ぎたのかチラホラと帰宅する人も見える。
その人たちは楽し気に笑いながら、こちらをチラチラと気にするが、隣のイケメンはまったく意にも介さず辺りを眺めている。
「これだけ、邪気があってもこの人たちは感じないんですかね?」小声で呟くと、「まあ、実際は影響を受けていても『今日はなんだかむしゃくしゃする』とか『嫌な気分だ』ぐらいなんだろうな」と北条先輩が答える。
そうやって気が付かないうちに邪気を浴び続ければ、人は狂暴になる。それが喧嘩や虐待へと繋がり大きな事件へと発展する。…まるでドミノ倒しのように…。
それを解って犯人が魂を逃がしては悪霊を増やしているとしたらそれは危険人物だ。
明日からそれが誰でどんな目的でやっているのかを解明しなければならない。
私たちはそのために来たのだから…と真面目に考えていたのにお腹が「グーッグググー」と主張を始めた。…うん、腹が減っては戦は出来ぬっていうし先ずは腹ごしらえだ!
そう思い隣に立つ先輩を見ると、彼は地面に崩れ落ち二つ折りになって声も出さずに爆笑していた。…私の腹の音一つで楽しんでいただけたのなら何よりです。
先ずはホテルへと帰ってご飯を食べることに致しましょうか。
明日から働く意欲を養う為にも栄養をつけねば!…そう思っていたのに…
「あの…?先輩…私はなぜにこのような場所にいるのでしょうか?」
私はテーブルの正面に座る北条先輩にコッソリと話しかけた。
「俺が来たかったからだ」簡潔に答えるけれど、私はなんで北条先輩と一緒にレストランでディナーをしなければならないのかを聞いているんですよー⁈
市役所見学を終えた私たちは、あの後ホテルへと引き上げました。今日は色々あって疲れたし、コンビニでお弁当でも買ってこよう…お肉が食べたいから生姜焼き弁当にでもしちゃおうかな?
それともジャンクフード祭りも良いなぁ…フライドチキンも最近食べていないし…と脳内肉祭りを開催していた私に先輩がいきなり「ああ、俺、食いたい店があって、そこ予約したからお前も来いよ」と言ったのだ。
「嫌です」と即答したのに「もう二人分予約したし、お前ごときに拒否権はナイ!適当なワンピースでいいから着てこい」と無理やり約束させられたのだ。
…ひ、ひどい…私の生姜焼き…ジャンクフード…とも思ったが、でももしかしたら美味しい串焼きのお店とか露店かもしれないし…と気を取り直し、指定された一張羅のワンピースを着てロビーに集合した。先輩は自分が連れている女が汚い恰好をしているのが許せないのかもしれないし、ワンピースならお腹を締め付けずお腹いっぱい食べられると判断した結果だ。
それなのに、無理やりタクシーに乗せられて…着いたお店は高級レストランの夜景がきれいな予約席ですよ⁈…私とこんな店に来てもどうしようもないじゃないですか‼
これだったら、串揚げとか焼き鳥が食べたかった…ビールもキュッとね…ああ…。
はっ?!もしかして先輩が本命と来るための下見か?それに付き合わされているのか?…突然私は気が付いてしまった。
あり得る…。たしか春原さんは食事代も経費で落とせるって言っていたし、高いお店に来ても経費ならタダ‼本命と来た時にどんな雰囲気か知りたかったってことか?成程ね~!さすがは北条先輩だわ抜け目がない。
納得した私はとりあえずビールを頼もうとしたが、残念ながらここにそんなものはなかった…リキュール…?食前酒…?…あの、これはどうすれば良いのでしょうか。
「先輩…あの、何を頼んだらいいか分からないんですけれど…」こっそり囁くと、
「ああ、こんなところで先輩って呼ぶのは止めろ。好奇の目で見られるからな。俺がお任せで頼むからとりあえず、食事を楽しめ…嫌いなものはないよな?」
北条先輩…いや、北条さんの言葉に従い、注文もお願いする。
食事を楽しめと言われても、マナーを思い出すのに必死で、味なんかろくすっぽ思い出せないまま、食事は終わった…。あー高級なお肉もワインも味なんか全然わからなかった自分が恨めしいぜ…。
その上、極度の緊張感から、私はたった1杯のワインでグデングデンに酔っぱらってしまったのだ。もうもう、本当に穴があったら入りたい…。
気が付いたとき、私はホテルのベッドの上にいた。…あー頭痛い…。
二日酔いかもしれないが、喉がひりつくほど乾いている。ベッド脇の冷蔵庫からミネラルウォーターを出してごくごくと一気に飲む。あー美味い。
そこで私は気が付いた。…あれ?ここ私の部屋じゃないぞと。
私の荷物も無いし…昨日は…記憶が無いけど、北条先輩が連れて帰ってくれた訳じゃないのかな…?部屋中をキョロキョロと見回していると、バスルームから音が聞こえてくることに気が付いた。…誰か…いる?
これはヤバい…拙いことになる前に逃げ出さなくては…そう思い、ベッド脇の机に乗っていた自分のバッグを掴むとソロソロと逃げ出した。…鞄の中身もちゃんとある。
スマホ、財布…と確認しつつドアに手を掛けた瞬間、バスルームの扉が開き、上半身裸の北条先輩とバッチリ目が合ってしまった。
…その瞬間の私は素早かった。鞄からスマホを出すと北条先輩の上半身裸の画像を激写して脱兎のごとく逃げ出したのだ。…いや~我ながら素晴らしい逃げ足だったと思う。
…結局、先輩にとっ掴まり、みっちりとお説教をされた上で私の傑作写真は消されてしまったのだけれど…残念。
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