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皆さん、おはようございます。東雲理来(しののめ りく)です。
皆さんは『お役所って9時5時勤務でしょ?楽そうwwwww』とか思っていらっしゃいませんか?勿論そんな訳はありません。
確かに役所の受付業務を開始できるのは午前9時から午後5時ですが、時間外にも会議をしたり、国や県から理不尽にも【至急】と突発的な事務書類を送りつけられたり、いきなりの法改正や今回のはやり病の対応など、ありとあらゆる雑務を終業時間以降もしなくてはいけないのです。台風や洪水、ワクチン接種対応も突発的にあります。
「何で俺たちの税金でお前たちを養ってやらなくちゃいけねーんだよ」と仰る税金滞納者の方の長―いクレームにも対応しなくてはなりません。
クレーマーって話、長いんですよね…。しかも同じことの繰り返し。内心『他に言う事ねーなら帰れよ』と思っていますが、グッと堪えて笑顔で対応です。公務員も税金納めているんですけれどね?
無駄に長い拘束時間のせいで、どんどんと仕事が出来る時間は削られていきます。
それでも書類は待ってくれません。もちろん誰も変わってもくれません…。
そんな公務員生活…どうですか?羨ましいですか?
景気が良くても給料は上がらず、景気が悪くなれば叩かれる…ザ・公僕!
あー楽しい公務員生活☆…私は今、公務員になったことを猛烈に後悔しながら捕縛網を振り回しています。
「そっちへ逃げたぞー‼追えー‼」北条先輩に怒鳴られながら、現在も元気に捕縛中なのです。
事の発端は数時間前…午前5時頃のことでございました。
私はまだスヤスヤと安らかな眠りの中で幸せに微睡んでおりました。…そこに響く呼び出しのメロディ…。
スマホの着信音って、目覚まし以上にストレスが凄いです。しかも相手が北条先輩…。
もう、仕事の呼び出し以外考えられないじゃないですか‼。しかも午前5時かよ…。
着信拒否したい誘惑をグッと堪えて(報復が怖かった…)渋々電話に出た私に「遅い!さっさと出ろ」と怒鳴るゆとりの無い男。
いくらイケメンでも、こんな男は願い下げだよ…みんな見てくれに騙されすぎじゃないの?と思いつつも話を聞くと
「葬儀社から直接連絡がきた。既にご臨終のお年寄りの魂が枕元から頑として離れないそうで困っているとのこと。お前なら対応できるだろうから、至急現場へ向かい説得しろ」とのことです。
ああ…なるほどね「了解しました」
私は渋々返事をすると着替えるために立ち上がった。
実は、【裏戸籍課】に在籍するためには能力が必要となる。
それは勿論【魂】が見えることだ。
【魂】の存在を把握できなければ、捕縛も出来ない。…他の3人は魂を見て触れる能力があるのだ。
でも、私にしかない能力…【魂と話せる】はこういう時に非常に重宝される。
【魂】の意思を知り、話せると言うことは説得できるという事…と勝手に思われているようだが、実際に話せると言うことはそんなに簡単なことではない。
【魂】に刻まれた生前の恨みや苦しみを切々と訴える人や、自分だけがこんなに苦しいのにと敵意をむき出しに罵倒してくる人までいる。魂も生前と同じ行動を取るわけだから、私はお悩みカウンセラーのようなものだ。
実際に市役所に来て恨みごとを言う人はごく僅かだけれど、不満や苦しみを誰かに聞いて欲しい人は大勢いる。最後に【魂】になってでもそれを果たしたいと願う人の話…
それは…ぶっちゃけ長い。本当に長い。年齢に比例するのか老人程長いと思う。(東雲理来統計調べ)それをこれから聞かねばならぬのだ。
「お待ちしておりました。朝早くからご苦労様でございます」
指定された家に着くと、葬儀屋さんが出迎えてくれた。
「亡くなられた方は 日向(ひなた) 権(ごん)三郎(さぶろう)さん、80歳です」廊下を歩きながら、ご臨終された方の説明を簡単に受ける。その点もこの葬儀屋さんは手慣れている。
「死因は?」聞く私に「心筋梗塞と死亡診断書には書かれています。最近不安定でソワソワしていたと奥様も仰っておられましたし、心因性のストレスが原因かと」と答える。
そして到着したご遺体のある和室はかなりシュールな光景だった。
ご遺体は布団に寝かされて顔に布を被せられているため表情は見えない。
しかし、その枕元にはやんちゃ坊主がむくれた顔でドスンと座っているのだ。
「…魂の子供がえり現象…?」呟く私に葬儀屋さんが頷いた。
「ええ、私どもでこちらに伺った際にはすでにこの状態でした。魂にもご臨終印を押印してありますので、肉体と魂とはすでに切れている状態なのですが、ご本人が市役所に行くのを強固に拒まれて…。このままここにいては生まれ変わることも出来ず、腐敗すれば悪霊になる可能性もお伝えしたのですが…」
葬儀屋さんも手は尽くしたようだが、困り果ててこちらへ連絡をくれたようだ。
【魂】が肉体と切れた時に過去の自分に戻りたいと思うあまり、魂が若返ることは意外と多いらしい。
私はさっそく日向権三郎さんの魂とコンタクトを取ることにした。
「おはようございます。日向権三郎さんですよね?初めまして、私は狭間田(はざまだ)市役所戸籍課の東雲(しののめ)理来(りく)と申します」
にこやかに挨拶をしたが無視された。
「…日向さんは本日付でお亡くなりになられています。このままここにいると生まれ変わることも出来ずに悪霊になる危険もございますし、一緒に市役所へお越しいただけませんか?」
また無視…である。本当にムカつく爺さんだな(怒)
「あの…?日向権三郎さん⁈聞こえていますか?!」私は相手が老人なので耳が遠いことも想定して少し声を張り上げた。
「うるさい!聞こえているわ‼この小娘が」
いきなり見た目が小学生ぐらいの子供に小娘呼ばわりされる私。
「ああ、良かったです聞こえていないのかなと思ったもので」
私もシレッと返すが内心はムカついていた。聞こえているんだったら返事ぐらいしろよと言いたい。
「それで、先ほどのご説明をもう一度…」言いかける私に日向権三郎少年は振り払うように手をヒラヒラさせると「聞いていたから要らん。ワシはここから動かないからお前たちは帰れ。もう用はないだろう」と言い捨てソッポを向いた。
やっぱりムカつくわ…この爺さん。話をしようにも取り付く島もないのではやりようもない。どうすればいいか…
途方に暮れる我々の元に「失礼いたします」と声がかけられた。
皆さんは『お役所って9時5時勤務でしょ?楽そうwwwww』とか思っていらっしゃいませんか?勿論そんな訳はありません。
確かに役所の受付業務を開始できるのは午前9時から午後5時ですが、時間外にも会議をしたり、国や県から理不尽にも【至急】と突発的な事務書類を送りつけられたり、いきなりの法改正や今回のはやり病の対応など、ありとあらゆる雑務を終業時間以降もしなくてはいけないのです。台風や洪水、ワクチン接種対応も突発的にあります。
「何で俺たちの税金でお前たちを養ってやらなくちゃいけねーんだよ」と仰る税金滞納者の方の長―いクレームにも対応しなくてはなりません。
クレーマーって話、長いんですよね…。しかも同じことの繰り返し。内心『他に言う事ねーなら帰れよ』と思っていますが、グッと堪えて笑顔で対応です。公務員も税金納めているんですけれどね?
無駄に長い拘束時間のせいで、どんどんと仕事が出来る時間は削られていきます。
それでも書類は待ってくれません。もちろん誰も変わってもくれません…。
そんな公務員生活…どうですか?羨ましいですか?
景気が良くても給料は上がらず、景気が悪くなれば叩かれる…ザ・公僕!
あー楽しい公務員生活☆…私は今、公務員になったことを猛烈に後悔しながら捕縛網を振り回しています。
「そっちへ逃げたぞー‼追えー‼」北条先輩に怒鳴られながら、現在も元気に捕縛中なのです。
事の発端は数時間前…午前5時頃のことでございました。
私はまだスヤスヤと安らかな眠りの中で幸せに微睡んでおりました。…そこに響く呼び出しのメロディ…。
スマホの着信音って、目覚まし以上にストレスが凄いです。しかも相手が北条先輩…。
もう、仕事の呼び出し以外考えられないじゃないですか‼。しかも午前5時かよ…。
着信拒否したい誘惑をグッと堪えて(報復が怖かった…)渋々電話に出た私に「遅い!さっさと出ろ」と怒鳴るゆとりの無い男。
いくらイケメンでも、こんな男は願い下げだよ…みんな見てくれに騙されすぎじゃないの?と思いつつも話を聞くと
「葬儀社から直接連絡がきた。既にご臨終のお年寄りの魂が枕元から頑として離れないそうで困っているとのこと。お前なら対応できるだろうから、至急現場へ向かい説得しろ」とのことです。
ああ…なるほどね「了解しました」
私は渋々返事をすると着替えるために立ち上がった。
実は、【裏戸籍課】に在籍するためには能力が必要となる。
それは勿論【魂】が見えることだ。
【魂】の存在を把握できなければ、捕縛も出来ない。…他の3人は魂を見て触れる能力があるのだ。
でも、私にしかない能力…【魂と話せる】はこういう時に非常に重宝される。
【魂】の意思を知り、話せると言うことは説得できるという事…と勝手に思われているようだが、実際に話せると言うことはそんなに簡単なことではない。
【魂】に刻まれた生前の恨みや苦しみを切々と訴える人や、自分だけがこんなに苦しいのにと敵意をむき出しに罵倒してくる人までいる。魂も生前と同じ行動を取るわけだから、私はお悩みカウンセラーのようなものだ。
実際に市役所に来て恨みごとを言う人はごく僅かだけれど、不満や苦しみを誰かに聞いて欲しい人は大勢いる。最後に【魂】になってでもそれを果たしたいと願う人の話…
それは…ぶっちゃけ長い。本当に長い。年齢に比例するのか老人程長いと思う。(東雲理来統計調べ)それをこれから聞かねばならぬのだ。
「お待ちしておりました。朝早くからご苦労様でございます」
指定された家に着くと、葬儀屋さんが出迎えてくれた。
「亡くなられた方は 日向(ひなた) 権(ごん)三郎(さぶろう)さん、80歳です」廊下を歩きながら、ご臨終された方の説明を簡単に受ける。その点もこの葬儀屋さんは手慣れている。
「死因は?」聞く私に「心筋梗塞と死亡診断書には書かれています。最近不安定でソワソワしていたと奥様も仰っておられましたし、心因性のストレスが原因かと」と答える。
そして到着したご遺体のある和室はかなりシュールな光景だった。
ご遺体は布団に寝かされて顔に布を被せられているため表情は見えない。
しかし、その枕元にはやんちゃ坊主がむくれた顔でドスンと座っているのだ。
「…魂の子供がえり現象…?」呟く私に葬儀屋さんが頷いた。
「ええ、私どもでこちらに伺った際にはすでにこの状態でした。魂にもご臨終印を押印してありますので、肉体と魂とはすでに切れている状態なのですが、ご本人が市役所に行くのを強固に拒まれて…。このままここにいては生まれ変わることも出来ず、腐敗すれば悪霊になる可能性もお伝えしたのですが…」
葬儀屋さんも手は尽くしたようだが、困り果ててこちらへ連絡をくれたようだ。
【魂】が肉体と切れた時に過去の自分に戻りたいと思うあまり、魂が若返ることは意外と多いらしい。
私はさっそく日向権三郎さんの魂とコンタクトを取ることにした。
「おはようございます。日向権三郎さんですよね?初めまして、私は狭間田(はざまだ)市役所戸籍課の東雲(しののめ)理来(りく)と申します」
にこやかに挨拶をしたが無視された。
「…日向さんは本日付でお亡くなりになられています。このままここにいると生まれ変わることも出来ずに悪霊になる危険もございますし、一緒に市役所へお越しいただけませんか?」
また無視…である。本当にムカつく爺さんだな(怒)
「あの…?日向権三郎さん⁈聞こえていますか?!」私は相手が老人なので耳が遠いことも想定して少し声を張り上げた。
「うるさい!聞こえているわ‼この小娘が」
いきなり見た目が小学生ぐらいの子供に小娘呼ばわりされる私。
「ああ、良かったです聞こえていないのかなと思ったもので」
私もシレッと返すが内心はムカついていた。聞こえているんだったら返事ぐらいしろよと言いたい。
「それで、先ほどのご説明をもう一度…」言いかける私に日向権三郎少年は振り払うように手をヒラヒラさせると「聞いていたから要らん。ワシはここから動かないからお前たちは帰れ。もう用はないだろう」と言い捨てソッポを向いた。
やっぱりムカつくわ…この爺さん。話をしようにも取り付く島もないのではやりようもない。どうすればいいか…
途方に暮れる我々の元に「失礼いたします」と声がかけられた。
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