78 / 84
エンディング
【派生ルート】ナイルエンド
しおりを挟む
ギイイイイイ…………
中庭への扉が開く。そこには想像以上の、今まで見たこともない大勢の人からの祝福が待っていた。
個人的にお誘いしたかった皆さんは全員揃っているので、私のテンションもMAXだ。
「みなさま、今日は私の誕生パーティに来てくださってありがとうございます。また今年もこうして節目を迎え、今この時をみなさまとご一緒に過ごせることを嬉しく思いますわ。ぜひ、楽しんでいってくださいませ」
誕生日スピーチが終わり、簡易ステージを降りようとしたところで、ドレスで足元が見えずよろけてしまった。
恥ずかしい……!
咄嗟に腕を出して、コケないようにフォローしてくれたのはナイルだった。
「ナイル様、ありがとうございます」
「当然だろう。今日の主役はクロエだぞ? その青緑色のドレス、良く似合ってる」
「ふふ、なんだかんだ言って、ナイル様ってお優しいですわね」
「なっ! 何を言ってるんだ?」
褒められて顔を真っ赤にするナイルは、ビシっとキメた衣装を身に纏って……いつもよりマシマシの大人っぽい風貌なのに、なんだかとっても可愛い。
「照れなくてもよろしいのに。本当の事を申したまでですのよ?」
揶揄う私も私だけど、ナイルは耳まで真っ赤にして「お前と話すとなんか調子狂う」と言って、どこかに姿を消してしまった。
あら? ちょっと軽口すぎちゃった?
ナイルはしばらく経ってもパーティ会場に戻ってこない。ちょっとだけ責任を感じた私は、こっそり会場を抜け出してナイルを探しに庭園へとやってきた。
「ナイル、どこ行っちゃったんだろう?」
ぶつぶつ言いながら歩いていると、生垣の向こう側からナイルの話す声が聞こえてきた。
ん? ……ナイルだけじゃなくて、女の子の声も聞こえる?
こっそり覗くと、ナイルが告白されているじゃない! わあ、これ見ちゃだめなやつ?
ひょっとして、ナイルへの告白タイムが次から次にひっきりなしで会場に戻って来れないとか……?
ナイルはあの容姿だし、第三王子という立場にもかかわらず婚約者もいないし、元々優しいからモテるに決まってるもんね。しかも今日は私的な集まりだから学園と違って取り巻きも居ないし、声をかけやすい環境だもんな。あ、女の子泣いてる……振っちゃったのか。
見てはいけない物を見てしまい、こっそり戻ろうとした私はナイルに呼び止められる。
「気配駄々洩れだぞ、クロエ」
「ごめんなさい。覗くつもりはありませんでしたの。ただ、ナイル様が戻って来られないので探しに……」
「俺を? 今日の主役が? それは光栄でございます」
恭しく頭を下げるナイルは、所作が美しいだけあって見とれてしまった。
「どうした? いつもの軽口はないのか?」
拍子抜けしたような表情でナイルが聞くから、思わず言っちゃったよね。
「いえ、ナイルが素敵すぎて見とれちゃっ…… あ」
素の言葉遣いを使ってしまい、思わず口元を覆う。不敬だったと焦っていると、ナイルが近付いて来た。
「クロエ、そうやって昔みたいに接してくれ。俺は、兄上に遠慮をしていたが……本当は子どもの頃からお前の事が好きだったんだ」
「え……何て?」
「何度も言わせるなよ、俺はお前の事が好きだ。兄上に負けない、いや。きっと兄上以上に……お前が」
突然のナイルの告白に、私の顔は耳まで真っ赤に染まる。待って! そんなの知らない。
思い返せば、数々のナイルのアシストは私の痒いところに手が届くものばかりだった。もしかして、ずっと気を使ってくれていたの?
急に意識をしたから、心臓の鼓動が早くなる。こ、これは違……ううん、違わなくない。
「ナイル、嬉しい」
「へ? 受け入れてくれるのか?」
自分から言い出しておいて、ボケた顔をするナイルを見て確信する。
「正直に言うとね、私の器でクロム様と釣り合うのかとずっと逃げていたの。堅苦しいのは苦手。でもね、ナイルの前では素に近い私でいられるのは本当だと思う」
ナイルは息を呑んで私の言葉を待っている。きちんと伝えよう。
「ナイルと一緒に居るとホッとするし、凄く笑顔になれる。本当の事を言うと、まだ気になる人だけど……これからあなたをもっと知りたい、好きになりたいと思った」
ナイルは泣きそうな顔でくしゃっと笑うと、いつものクールな様子はどこへ行ったの?というくらい、情熱的に私を抱きしめる。
時間がフリーズして花が舞い散り、私を抱きしめているスチルが発生する。キャラクターボイスの声優が歌う恋愛エンディング曲「Colorful Love」が流れ、脳内に今までの出来事が走馬灯のように流れる。
エンディング曲が終わると、ナイルが嬉しそうに話す。
「クロエのこと、ずっとこうしたかった。俺は一生、クロエを大事にすると誓うから。俺を選んでくれてありがとう」
「うん、こちらこそありがとう。でも、おいおいにね、まだ自分の気持ちに気付いただけだから」
私がそう言うと、ナイルがいきなり爆笑し出すから、思わずつられて私も笑う。
気を遣わずに大笑い出来る関係が心地よい。私、ナイルとなら素敵な老後を送れそうなんて言ったら、また大爆笑しながらも「俺もだ」なんて言ってくれるかな?
── ナイルエンド 完 ──
初期設定:ナイル(初期設定のため多少、小説の設定とは異なります)
中庭への扉が開く。そこには想像以上の、今まで見たこともない大勢の人からの祝福が待っていた。
個人的にお誘いしたかった皆さんは全員揃っているので、私のテンションもMAXだ。
「みなさま、今日は私の誕生パーティに来てくださってありがとうございます。また今年もこうして節目を迎え、今この時をみなさまとご一緒に過ごせることを嬉しく思いますわ。ぜひ、楽しんでいってくださいませ」
誕生日スピーチが終わり、簡易ステージを降りようとしたところで、ドレスで足元が見えずよろけてしまった。
恥ずかしい……!
咄嗟に腕を出して、コケないようにフォローしてくれたのはナイルだった。
「ナイル様、ありがとうございます」
「当然だろう。今日の主役はクロエだぞ? その青緑色のドレス、良く似合ってる」
「ふふ、なんだかんだ言って、ナイル様ってお優しいですわね」
「なっ! 何を言ってるんだ?」
褒められて顔を真っ赤にするナイルは、ビシっとキメた衣装を身に纏って……いつもよりマシマシの大人っぽい風貌なのに、なんだかとっても可愛い。
「照れなくてもよろしいのに。本当の事を申したまでですのよ?」
揶揄う私も私だけど、ナイルは耳まで真っ赤にして「お前と話すとなんか調子狂う」と言って、どこかに姿を消してしまった。
あら? ちょっと軽口すぎちゃった?
ナイルはしばらく経ってもパーティ会場に戻ってこない。ちょっとだけ責任を感じた私は、こっそり会場を抜け出してナイルを探しに庭園へとやってきた。
「ナイル、どこ行っちゃったんだろう?」
ぶつぶつ言いながら歩いていると、生垣の向こう側からナイルの話す声が聞こえてきた。
ん? ……ナイルだけじゃなくて、女の子の声も聞こえる?
こっそり覗くと、ナイルが告白されているじゃない! わあ、これ見ちゃだめなやつ?
ひょっとして、ナイルへの告白タイムが次から次にひっきりなしで会場に戻って来れないとか……?
ナイルはあの容姿だし、第三王子という立場にもかかわらず婚約者もいないし、元々優しいからモテるに決まってるもんね。しかも今日は私的な集まりだから学園と違って取り巻きも居ないし、声をかけやすい環境だもんな。あ、女の子泣いてる……振っちゃったのか。
見てはいけない物を見てしまい、こっそり戻ろうとした私はナイルに呼び止められる。
「気配駄々洩れだぞ、クロエ」
「ごめんなさい。覗くつもりはありませんでしたの。ただ、ナイル様が戻って来られないので探しに……」
「俺を? 今日の主役が? それは光栄でございます」
恭しく頭を下げるナイルは、所作が美しいだけあって見とれてしまった。
「どうした? いつもの軽口はないのか?」
拍子抜けしたような表情でナイルが聞くから、思わず言っちゃったよね。
「いえ、ナイルが素敵すぎて見とれちゃっ…… あ」
素の言葉遣いを使ってしまい、思わず口元を覆う。不敬だったと焦っていると、ナイルが近付いて来た。
「クロエ、そうやって昔みたいに接してくれ。俺は、兄上に遠慮をしていたが……本当は子どもの頃からお前の事が好きだったんだ」
「え……何て?」
「何度も言わせるなよ、俺はお前の事が好きだ。兄上に負けない、いや。きっと兄上以上に……お前が」
突然のナイルの告白に、私の顔は耳まで真っ赤に染まる。待って! そんなの知らない。
思い返せば、数々のナイルのアシストは私の痒いところに手が届くものばかりだった。もしかして、ずっと気を使ってくれていたの?
急に意識をしたから、心臓の鼓動が早くなる。こ、これは違……ううん、違わなくない。
「ナイル、嬉しい」
「へ? 受け入れてくれるのか?」
自分から言い出しておいて、ボケた顔をするナイルを見て確信する。
「正直に言うとね、私の器でクロム様と釣り合うのかとずっと逃げていたの。堅苦しいのは苦手。でもね、ナイルの前では素に近い私でいられるのは本当だと思う」
ナイルは息を呑んで私の言葉を待っている。きちんと伝えよう。
「ナイルと一緒に居るとホッとするし、凄く笑顔になれる。本当の事を言うと、まだ気になる人だけど……これからあなたをもっと知りたい、好きになりたいと思った」
ナイルは泣きそうな顔でくしゃっと笑うと、いつものクールな様子はどこへ行ったの?というくらい、情熱的に私を抱きしめる。
時間がフリーズして花が舞い散り、私を抱きしめているスチルが発生する。キャラクターボイスの声優が歌う恋愛エンディング曲「Colorful Love」が流れ、脳内に今までの出来事が走馬灯のように流れる。
エンディング曲が終わると、ナイルが嬉しそうに話す。
「クロエのこと、ずっとこうしたかった。俺は一生、クロエを大事にすると誓うから。俺を選んでくれてありがとう」
「うん、こちらこそありがとう。でも、おいおいにね、まだ自分の気持ちに気付いただけだから」
私がそう言うと、ナイルがいきなり爆笑し出すから、思わずつられて私も笑う。
気を遣わずに大笑い出来る関係が心地よい。私、ナイルとなら素敵な老後を送れそうなんて言ったら、また大爆笑しながらも「俺もだ」なんて言ってくれるかな?
── ナイルエンド 完 ──
初期設定:ナイル(初期設定のため多少、小説の設定とは異なります)
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢と攻略対象(推し)の娘に転生しました。~前世の記憶で夫婦円満に導きたいと思います~
木山楽斗
恋愛
頭を打った私は、自分がかつてプレイした乙女ゲームの悪役令嬢であるアルティリアと攻略対象の一人で私の推しだったファルクスの子供に転生したことを理解した。
少し驚いたが、私は自分の境遇を受け入れた。例え前世の記憶が蘇っても、お父様とお母様のことが大好きだったからだ。
二人は、娘である私のことを愛してくれている。それを改めて理解しながらも、私はとある問題を考えることになった。
お父様とお母様の関係は、良好とは言い難い。政略結婚だった二人は、どこかぎこちない関係を築いていたのである。
仕方ない部分もあるとは思ったが、それでも私は二人に笑い合って欲しいと思った。
それは私のわがままだ。でも、私になら許されると思っている。だって、私は二人の娘なのだから。
こうして、私は二人になんとか仲良くなってもらうことを決意した。
幸いにも私には前世の記憶がある。乙女ゲームで描かれた二人の知識はきっと私を助けてくれるはずだ。
※2022/10/18 改題しました。(旧題:乙女ゲームの推しと悪役令嬢の娘に転生しました。)
※2022/10/20 改題しました。(旧題:悪役令嬢と推しの娘に転生しました。)
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
転生した悪役令嬢は破滅エンドを避けるため、魔法を極めたらなぜか攻略対象から溺愛されました
平山和人
恋愛
悪役令嬢のクロエは八歳の誕生日の時、ここが前世でプレイしていた乙女ゲーム『聖魔と乙女のレガリア』の世界であることを知る。
クロエに割り振られたのは、主人公を虐め、攻略対象から断罪され、破滅を迎える悪役令嬢としての人生だった。
そんな結末は絶対嫌だとクロエは敵を作らないように立ち回り、魔法を極めて断罪フラグと破滅エンドを回避しようとする。
そうしていると、なぜかクロエは家族を始め、周りの人間から溺愛されるのであった。しかも本来ならば主人公と結ばれるはずの攻略対象からも
深く愛されるクロエ。果たしてクロエの破滅エンドは回避できるのか。
貴族としては欠陥品悪役令嬢はその世界が乙女ゲームの世界だと気づいていない
白雲八鈴
恋愛
(ショートショートから一話目も含め、加筆しております)
「ヴィネーラエリス・ザッフィーロ公爵令嬢!貴様との婚約は破棄とする!」
私の名前が呼ばれ婚約破棄を言い渡されました。
····あの?そもそもキラキラ王子の婚約者は私ではありませんわ。
しかし、キラキラ王子の後ろに隠れてるピンクの髪の少女は、目が痛くなるほどショッキングピンクですわね。
もしかして、なんたら男爵令嬢と言うのはその少女の事を言っています?私、会ったこともない人のことを言われても困りますわ。
*n番煎じの悪役令嬢モノです?
*誤字脱字はいつもどおりです。見直してはいるものの、すみません。
*不快感を感じられた読者様はそのまま閉じていただくことをお勧めします。
加筆によりR15指定をさせていただきます。
*2022/06/07.大幅に加筆しました。
一話目も加筆をしております。
ですので、一話の文字数がまばらにになっております。
*小説家になろう様で
2022/06/01日間総合13位、日間恋愛異世界転生1位の評価をいただきました。色々あり、その経緯で大幅加筆になっております。
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる