上 下
68 / 84
ゲーム終盤

イベント目白押しで引きこもれない!

しおりを挟む
 あー、染みる~!

 バスタブの中に浸かると、身体の疲れが一気に吹き飛ぶ。疲れが取れた気分になるだけだけど、日本人はやっぱりお風呂よね! 癒すだけなら薬か魔法で良いんだから、この世界は情緒が無さ過ぎるよね。

 気持ちよくお風呂に浸かっていると、ウエンディが話しかけてくる。


『クロエ様、本日はお疲れ様でした。無事、ターゲット二人の人助けイベントを攻略されましたね。魔法を乱立されたのでレベルアップもされています。ステータスご覧になりますよね?』

「そうだね、一応確認しておいたほうがいいか。どれくらいアップしてるのか気になるし」


 そう言うか言わないか。食い気味にウエンディがステータスを見せてくる。

--------------------------------
 クロエ・スカーレット(17歳)
      Lv.24

属性:火・地・風・闇・光

HP(体力)…………… 180
MP(魔力)…………… 7000
ATK(物理攻撃力) … 140
MAT(魔法攻撃力) … 3500
DEF(物理防御力) … 105
MDF(魔法防御力) … 3500
LUK(運の強さ) …… 886

親密度
アメリア(幼馴染)…… 579/999
クロム(婚約者)……… 922/999★
ナイル(婚約者の弟)… 790/999★
ガイウス(執事|暗殺者) 920/999★
ハル(占い師)………… 565/999
ルカ(魔法局長)……… 722/999★
ジーン(用心棒)……… 705/999★
シモン(近衛師団長)… 774/999★

特別スキル
スチル耐性……………… 900
虫の知らせ……………… 999

--------------------------------

『おめでとうございます。虫の知らせがカンストとなりました。危機回避能力が飛躍的にアップしました。また、LUK(運の良さ)も間もなく900目前です。ここまでくれば怖いものは無い数値です。行動さえすれば、間違いなくすべてのイベントが発生します。
 運のなさが最低値だったあの頃のお嬢様と比べたら……ワタクシは、ワタクシは……』


 わざとらしく泣くウエンディの演出は気持ちがちょっと冷めるんだけど。でも、人助けイベント攻略後の全員の数値が爆上がりしているのは素直に嬉しい。本当に頑張ってきたと思う。あとはアメリアとハル……なのだけど。


「やっぱり、最難関はハルよねぇ。」


 仲良くはなっているけど、相性ボーナスが入らないのが厳しい。多分、人助けイベント発生後にポイントが入っても700超えないんじゃないかな?


「もう、攻略出来る気がしない」

『大丈夫です! クロエ様なら絶対何とかすることができます。なぜなら、LUK800越えなど今まで担当した誰よりも素晴らしい数値でございます』


 誇らしげに言うウエンディの「今までの担当」が気になるところだけど、まあそこはスルーしておく。聞いてもいい事はあんまりない気がするし。


「まあ、ハルはまず招待状を渡さないといけないし、そこからよね。まずはアメリアの攻略から始めることにする。明日も頑張ろうね!」

『やる気が出るクロエ様……推せます。明日もよろしくお願いします』


 お風呂から出て、そのままベッドにダイブする。ウエンディもなんだか最近ちょっと俗っぽくなってきたなぁなんて思いながら、重くなってきた瞼に抗えず目を閉じた。



ドンドンドン!



 翌朝、やたら誰かが部屋の戸を叩く音で目が覚める。


「お嬢様! クロエ様! 起きていらっしゃいますか?」

「────、ガイウス?」


 まだ眠いのだけど……窓の外を確認すると、空が白んでは来てるみたい。それにしても早朝すぎる。眠い目をこすりながらナイティのまま扉を開けると、やっぱりガイウスが立っていた。顔を見ると……真剣な顔から急に照れ始めてる?


「お嬢様、そのような恰好で男性の前に出てはいけません。特に俺────いや、私以外の前では」

「へ?」


 よく自分の姿を見ると、寝崩れたままで色々セクシーなことになっていた。仕方ない、寝起きだし? 起こしたのはガイウスじゃない!?


「ああ、ごめんなさい」


 パパっと体裁を整えて、何事も無かったかのように話を戻す。


「それで、どうしましたの? こんな朝早くから主人を起こすなんて」

「はい、それが……。先ほど、アメリア様の家の執事から連絡がありました。昨日昼過ぎからアメリア様の行方が分からない、と。お嬢様が知らないか確認をしてほしいとのことで……」

「っ!? 何ですって?」


 まだ覚醒していなかった頭が一気に動き始める。アメリアが行方不明?


「私が知らないことは、あなただって知っているでしょう。昨日、ガイウスは昼過ぎから私と一緒でしたわよね?」

「はい。何かご存知ではないかと先方の執事があまりにも憔悴しておりまして……念のためとお伺いに参りました。お休みのところ、大変申し訳ございませんでした」


 深々と頭を下げられたら、もう怒れない。それに、アメリアが行方不明なのは凄く心配。何か変なトラブルに巻き込まれていなければいいのだけど……。


「分かりました。アメリアが心配なので私も探しますわ。着替えるまで待っていなさい。あなたも探すのでしょう?」

「かしこまりました」


 身支度をパパっと済ませ、ガイウスと一緒に家を出る前に軽く腹ごしらえをする。腹が減っては戦は出来ぬだし、何よりパワーは付けておいた方が良いに限る。
 ガイウスには「はしたない」と言われたけど、時間が惜しいので食べながらどこを探すか打ち合わせて、家を出た。
 城の前でガイウスと別れ、アメリアが行きそうな場所を探す。

 最初に行ったのはハルの家……安易だけど、乙女ゲームってちょっとストーキングっぽいところあるじゃない? 私も持ってる「誰がどこにいるか分かるMAP」みたいなものを、正規ヒロインのアメリアが持っていないとは言い切れない。多分、ガイウスも似たようなアイテムを持っていると思う。……これは勘だけど。

 アメリアが見つかったら、それとなーく聞いてみようかな。

 念のためウエンディに「誰がどこにいるか分かるMAP」を開いてもらったけど、反応はどこにも見えない。


「公園に居ないとなると……学び舎とか?」

『クロエ様、MAPを拡大されますか?』


 悩んでいる私に神の声。ウエンディの提案を受け入れて部分マップを全体マップに変更してもらう。
 すると、ピーク王国の国境……ゲーム内で言うと、それ以上開発されていないので存在しないエリアとの境界ギリギリの湖の傍に、アメリアの青紫色が点滅しているのが確認できた。

 こんな端の方……しかも湖の色とほぼ同化してる。ゲームをやりこむ為に自作のワールドマップを描いた事がある私じゃなければ気付かないんじゃない?

 こんな時に私のオタ活が役に立つなんて複雑だけど、急いでガイウスに連絡を……と思ったけど、連絡したら私がMAP持ってることバレちゃわない?
 流石にこんな端までなんて足が無いと行けないし、適当な嘘でもついて連れて行ってもらおうかな?って思案してたら、ナイルに遭遇した。

 アメリアが行方不明になったことは、ナイルにも連絡が来たそうで探してるんだって。

 せっかく馬に乗れる要員と出会えたのだから、ここで逃す手はない。湖畔に行けばアメリアが居る気がすると強引に馬を出してもらって、城門を出る。

 待っててアメリア! 何があったか分からないけど、すぐに行くから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します

大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。 「私あなたみたいな男性好みじゃないの」 「僕から逃げられると思っているの?」 そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。 すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。 これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない! 「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」 嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。 私は命を守るため。 彼は偽物の妻を得るため。 お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。 「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」 アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。 転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!? ハッピーエンド保証します。

異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。 その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。 落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

婚約破棄されて幽閉された毒王子に嫁ぐことになりました。

氷雨そら
恋愛
聖女としての力を王国のために全て捧げたミシェルは、王太子から婚約破棄を言い渡される。 そして、告げられる第一王子との婚約。 いつも祈りを捧げていた祭壇の奥。立ち入りを禁止されていたその場所に、長い階段は存在した。 その奥には、豪華な部屋と生気を感じられない黒い瞳の第一王子。そして、毒の香り。  力のほとんどを失ったお人好しで世間知らずな聖女と、呪われた力のせいで幽閉されている第一王子が出会い、幸せを見つけていく物語。  前半重め。もちろん溺愛。最終的にはハッピーエンドの予定です。 小説家になろう様にも投稿しています。

君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ
恋愛
美しい旦那様は結婚初夜に言いました。 「君を愛するつもりはない」と。 そんな……、私を愛してくださらないの……? 「うっ……!」 ショックを受けた私の頭に入ってきたのは、アラフォー日本人の前世の記憶だった。 ああ……、貧乏で没落寸前の伯爵様だけど、見た目だけはいいこの男に今世の私は騙されたのね。 貴方が私を妻として大切にしてくれないなら、私も好きにやらせてもらいますわ。 旦那様、短い結婚生活になりそうですが、どうぞよろしく! 誤字脱字お許しください。本当にすみません。 ご都合主義です。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11) <内容紹介> ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。 しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。 このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう! 「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。 しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。 意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。 だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。 さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。 しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。 そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。 一年以上かかりましたがようやく完結しました。 また番外編を書きたいと思ってます。 カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。

【完結】浮気されても「婚約破棄はできない」と笑われましたが、プロポーズの返事は納得のいく形にしようと思います!

入魚ひえん
恋愛
「俺は君の侍女とデートすることにしたよ」 王宮で開催された夜会で、エルーシャは婚約者から浮気宣言をされた。 今回だけではない。婚約してからずっと、彼はエルーシャに不誠実だった。 彼は別れたいわけではない。むしろエルーシャの気を引こうとして、幼稚な行動を繰り返す愚かな男だった。 そしてふたりの婚約は、このような事態になる前に王家の仲介で取り決められている。そのため誓約さえ守れば婚約破棄はできないと、婚約者は高をくくっていたが……。 「それなら、私も自由にさせてもらうわ」 「えっ!?」 「では失礼します」 彼はまだ気づいていない。 エルーシャがプロポーズの返事をすると決めた、その意味を。 これは「今ならやり直せると思う」と勘違いしている愚かな男に向かって、主人公がプロポーズの返事をすることで、待ち望んでいた結末をつかんで幸せになるお話です。 *** 閲覧ありがとうございます、完結しました! ご都合主義のゆるゆる設定。会話多めでサクサク読めます。お気軽にどうぞ~。 23/3/25◆HOT女性向けランキング3位◆恋愛ランキング6位◆ いつもありがとうございます!

処理中です...