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ゲーム終盤

もう疲れたので引きこもりたい!①

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 急いで走って孤児院にたどり着いた私の目に飛び込んだのは、絶望したように立ちすくむ孤児院のスタッフと子どもたちだった。
 ゴオオ……と音を立てて燃え広がる火を見て、私も絶句してしまった。

 この中に、シモンが飛び込んだと言うの? 人が耐えられるとは思えないのだけど。


「シモン様が……! 誰か助けて! メイアとアレクとシモン様を助けて……」


 絞り出すような声で悲鳴を上げる一人の子ども。呆然と火を見つめるスタッフを捕まえて話を聞くと、悲鳴を上げている子が魔法の練習で張り切りすぎて、火魔法を制御できず火事となってしまったらしい。
 メイアとアレクという子が施設内に取り残され、それをシモンが助けるため建物内に入って行ってしまったのだそうだ。
 シモンは魔法が使えないのに。という私も、水属性の魔法は持ってない。火に効果があるのは、地魔法くらいなんだけど……上手く消えてくれるかの保証はない。

 ただ、消火活動が全く進んでいない現状を見て、ただ指をくわえて何もしないわけにはいかない。


「私が、何とかします。皆様、もう少し離れてくださいませんこと? あと、水……まずは手桶一杯でかまいませんわ。準備していただける?」

「はいっ!」


 何をすることも出来ず呆然としていたスタッフたちは、私の言葉にやるべきことを思い出したみたいで、指示に従って各々動き始めてくれた。

 数人のスタッフが子どもたちを少し離れた場所まで誘導し、子どもをなだめている。水を汲みに行ったスタッフが戻ってくる前に、とにかくまずは消火活動をしなくては!と、気合を入れて呪文を唱える。


「サンドストーム!」


 砂を巻き上げる風を起こし、そのまま火を覆うようにかける。砂と風のバランスが難しいのよね、これ。風量を間違えると火起こしになってしまうから。
 狙った場所に砂を撒くのが一番大変なのだけど、何とか魔法局で教わった魔法コントロールのおかげで、最初の消火活動は上手く行ったように見える。
 砂がかかった部分の火の勢いが少し衰えたのだけど……砂の量が少なかったみたいで、すぐ元に戻ってしまった。

 これは、どんどん続けなきゃダメかも。あと、砂の量。もっと効率よく砂をかけるにはどうしたら……?
 はっ! もしかして……これで鎮火させられない? 派手なのを思いついちゃった。


「サンドゴーレム!」


 とにかく建物をはるかに上回る砂で出来たゴーレムを生成する。おかげで庭にゴーレムを生成したのと同じくらいの穴が空いたけど……これはあとでお父様にお願いして直してもらうから許してほしい! ああ、とにかく家に財力だけはあって良かった!

 今しなくていい心配をしながら、砂のゴーレムを操って建物に覆いかぶさるように配置する。そのまま魔法を解除して、ゴーレムと同じ質量の砂が一気に建物にかかったので、ちょっとだけ建物が崩壊しちゃったけど(汗)、火はほとんど消すことができたみたい。

 ホッとしたのもつかの間。
 水を持ってきたスタッフから桶を受け取り、代わりに私のバッグを押し付けるように預けて、桶の水を頭から一気にかぶりハンカチで口元を覆う。


「私が戻るまでに、水をもう少し用意できるかしら? 出来なくても絶対用意してくださいませね?」


 慌てていたから自分でも相当な矛盾が生じる指示を出してしまったのだけど、気付かずそのまま火が燻っている建物へダッシュする。
 シモンは絶対生きているはず。だって、物語のメインキャラクターだし。私がそれを信じなきゃいけない気がする! 待ってて、今助けるから。
 建物の中に入ると、木の焦げた匂いが鼻を突いた。口に当てたハンカチのおかげで多少はマシになっていると思う。


「シモン様! シモン様~!! げほごほ」


 声を出すとまだ施設内に残っている煙で喉をやられる。スタッフの話では、まだ火に巻かれていない上層階に子どもたちが居たと言っていたのだけど……二階へ行く階段が黒焦げで崩れていて上の階へ行けないのよね。ということは、降りても来れないわけで……。
 まずは索敵ソナーを応用して人の居る場所を探ると、三階の階段にほど近い一室に人の気配がある。間違いない、シモンと子どもたちだ。

 崩れた階段の大丈夫そうな場所に風魔法を使ってジャンプしていけば、たどり着ける!

 自分を奮い立たせて集中を高めながら上を目指す。思っていたよりは問題なく進めてホッとしたのと同時に、子どもが泣く声が聞こえる。


「わーん! シモン様! アレク……誰か、たすけて!!!」


 煙でやられたんだろうけど、かすかすの声で助けを呼んでいるのは女の子かな? 早く助けなきゃ!

 声が聞こえる位置は索敵ソナーで反応があったのと同じ場所からだったので、容易に見つけることが出来たんだけど……シモンと男の子は倒れて動いていない様子だ。


「大丈夫!? あなた、メイアちゃんね? シモン様とアレクくんはどうしたの?」

「わああああん!!! 煙がいっぱいで、ヒック……メイ・ア……ヒック!」


 一生懸命喋ろうと頑張ってくれているけど、助けが来たことで極度の緊張から解放されたのか、メイアの号泣が止まらない。話が出来る状態ではないし、まずはこの子を救出しなくてはと抱きかかえ、壊れた窓であったろう場所から一気に飛び降りる。


「!!!!!!!」


 メイアは怖いのを我慢して──驚きすぎて声が出なかっただけかもだけど──私にしがみつき騒がずにいてくれたおかげで、着地は見事華麗にキマった。


「メイア!!!」


 スタッフが呼ぶと、その場にメイアは力が抜けたみたいでへたり込んでしまった。
 そりゃそうだ、怖いよね。

 他の二人は?とスタッフに尋ねられたので、二人が倒れていることと様子を見にもう一度三階まで行くことを話すと、さっき頼んでおいた水桶を渡してくれた。水桶を受け取って飛び降りた窓まで一気に風魔法を使って飛び込む。
 場所さえ分かっていれば、これくらいの高さなら何とか飛べる。はしたないとか気にしていたら救助なんて出来ないしね。

 倒れている二人に近付き息を確かめると……良かった~! ちゃんと息はあった。身体にも大きな外傷があるようには見えない。やっぱり一酸化炭素中毒かな? けがや病気に対しての知識は普通の人が知ってる程度しかないけど、早く治さないとマズいのでは……。回復系魔法で何とかなるものなのかな?

 一応、何か効果があるかもと回復魔法をかけてみると、二人とも荒々しい息から呼吸が一定に整ったので少し安心したんだけど、他に何かあってはいけないし早く専門家の助けが欲しいところ。

 シモンを担ぎ上げるのは風魔法で補助をしたとしても、難しいと思う。火事でボロボロの建物からがっちりした成人男性一人を担いで連れ出すというのは……自分とそう変わらない体格のルカを担ぐのとは差がありすぎる。

 うーん、どうしよう?
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