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ゲーム終盤

最初からイベント大渋滞で引きこもりたい!①

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「ルカ様が執務室に、シモン様は訓練所にいらっしゃるのか。じゃあまずはルカ様のところからご訪問かな」


 招待状を手に、誰がどこにいるか分かるMAPを見てとにかくラク……いや、最短でミッションクリアを目指すルートを探してみた。
 手に持った招待状は四枚。渡したい相手はルカ・シモン・ハル・ジーンの四人だ。それから、人助けイベントを出したい人はルカ・シモン・ハル・アメリアの四人。アメリアには既にガイウスが招待状を送っているので直接渡す必要はないもんね。
 誕生日までは今日を入れて残り五日しかなく、一日ひとりのイベント攻略をしたとしても失敗すれば正直言ってキツい状態って、結構ヤバくない?


 出来れば、一日二人のイベント攻略を成し遂げたいところではある……けど。


 気持ちは焦るけど、それこそラッキーでも起きないと一日ひとり攻略なんて難しいのよね。
 運の強さステータスのLUKは今のところまだ700台。これがカンスト付近だったら、思った通りにイベントを進められていたかもしれないけど、一度落ちてしまった数値がそう簡単に上がってくれる訳もないし……。とにかく今は頑張ってステータスを地道に上げていくしかないよね。


 このまま諦めずにやりきるって決めたし、がんばろう!


 心の中でふぁいおー!と気合を入れ、出来るだけガイウスとの接触を避けつつ馬車で街まで送ってもらった。
 魔法局の前に横付けしてもらい、ガイウスとはその場で別れる。ガイウスがしきりに迎えは何時がいいかと言うので、いくつか立ち寄る場所があることを伝え夕方に同じ場所まで迎えに来てもらうことにした。
 魔法局の前には王城があって、ちょっとした広場になっているから馬車を停車していても困らないくらいの広さはあるのよね。何なら割と貴族の皆様の馬車停留所みたいになってたりするし。
 お迎えミッションが嬉しかったのか、ガイウスはいつもより早く引き下がって屋敷に戻ってくれたので、時間に追われている私としては助かった。


 暗殺者だし面倒だと思ってたけど、案外チョロくて助かる、いろいろと。私、ガイウスの扱い上手くなってきたな~! 


 そんなことを考えながら魔法局に入り、一応スルーで良いとは言われているものの、受付にひとこと挨拶を入れてルカの執務室まで移動し、扉の前に立った。
 いつも通りノックをして……返事がない。受付のお姉さんは「ルカ様は執務室にいらっしゃる」って言ってたんだけどな。
 そっと大きな扉を開くと、相変わらず薄暗い執務室の中にルカを見つけることは出来なかった。


「ルカ様? いらっしゃらないのでしょうか?」


 声をかけたけど、返事がない。
 ゆっくりと執務室に入ると勝手に扉が閉まって、執務室の中はほとんど光がない状態になる。
 流石にちょっと怖いから、手のひらを上に向け火魔法で小さな火を灯してみた。薄明りが照らし出したのは、いつものルカの執務室。


 こう暗いと、探すのも一苦労ね。本ばかりで燃えやすいから火をこれ以上大きく出来ないし。
 

 足元を照らしながらゆっくり前進すると、本棚の奥の方から小さなうめき声が聞こえた気がした。気のせいかもしれないけど、念のため声が聞こえた方向に歩を進める。奥の方はもっと暗いし、正直ちょっと怖い。
 慎重に手のひらに浮かんだ火を左右に大きく振って……


「……うぅ……」


 今度ははっきりと声が聞こえた。声のする方へ明かりを向けると、本棚が崩れているのが見えた。
 慌ててその場所まで走っていくと、ルカが本棚とその中に納まっていたと思われる本にし潰された格好で倒れていた。


「嘘でしょう? ルカ様!?」


 声をかけても小さな唸り声しか聞こえてこない。
 慌ててルカを圧し潰している本棚と分厚い本の数々に、元の位置に戻るよう整列魔法をかける。元の位置に戻った本棚と本の下から出てきたルカ……どうやら意識が無いみたい。


「ルカ様!! しっかりしてください!!!」


 もう一度、火魔法を展開するとルカの足があらぬ方向に曲がっているのが見えてしまった。思わず目を逸らした私を誰が責められるだろうか。ルカは魔法のプロフェッショナルで、本来ならこんな事があったとしても簡単に切り抜けられるはずなのに。
 どうしてこんなことが起こってしまったのかは分からないけど、とにかく早くしなければルカが死んじゃう! 推しが死ぬなんて考えられない!
 急いで回復魔法をかけると苦しそうだった呼吸が穏やかになり、トラウマになりそうなくらいひしゃげた・・・・・形をした足も、何とか元の形に戻ってくれた。


「ルカ様! ルカ様!」


 回復魔法で体の傷は治したし、医術の素人の私にできる事と言えば、意識を取り戻してくれるまで根気よく呼びかけるくらいしかない。
 けれど、相当なショックを受けたみたいでルカの意識は戻ってこない。一旦、広い場所まで移動させるのが良いと思うけど……私に運べるかな?


「うう、よいしょ……と」


 風魔法で少し浮かせてルカを背中に背負う形で移動する。完全に浮かせて、もし落っことしてしまったら怖いから……念のためおんぶなら落としても私が下敷きになれるし、これで勘弁してもらいたい。


「まあ、これなら何とかなるかな」


 どこにいても暗いけど、結局一番明るいのは入口のある広間しかないのよね、この部屋。
 ゆっくり前に進んで、あと数歩と言う所まで来たところで背中のルカが意識を取り戻したみたい。
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