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精霊の加護の秘密
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グラッセが屋敷に戻るとすぐにシエルを探そうと考えていたがその必要なく、彼女はすぐに夫を出迎えた。
「おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
シエルの明るい笑顔を見るとグラッセは疲れが吹き飛ぶ気がして自然と頬を緩ませる。だが、表情はすぐに暗く変わり、彼女の両肩を掴む。
「旦那様?」
「二人だけで話がしたい」
不思議そうに見上げるシエルの目をじっと見据えると、グラッセは真剣な表情で言った。
夫婦の寝室に入り、グラッセはベッドの縁に腰かけてシエルを隣に座るように促すとシエルは大人しく従い、背筋を伸ばした。
「氷の精霊の加護について調べてきた」
「はい、お疲れ様です」
何か調べ物をしていたのは知っていたが、それが氷の精霊の加護に関するものだとは知らなかったシエルは夫をねぎらう。しかし、彼は浮かない表情のままだ。
「何がわかったのですか?」
シエルが訊ねるとグラッセは言いづらそうな表情で一度深呼吸をして覚悟を決めると重い口を開いた。
「氷の精霊の加護を持つ子を産んだ母親は死んでしまう、そうだ」
「え……?」
予想もしていなかった答えにシエルは驚きの声を上げる。
「文献によると、氷の精霊の寵愛を受けた者との間に子を成し、その子供が精霊の加護を受け継ぐ際に母親の魔力と命を奪うらしい」
「そ、んな……まさか」
グラッセの言葉にシエルは動揺を隠しきれずに震える声で否定する。それが本当ならシエルの母が死んだのは病気ではなく、シエルを産んで命を落としたことになる。
「確証は無いが可能性はある。この本を書いたのは前王に仕えている宮廷魔術師だから信憑性は高いだろう。それに……シエルの母上の死んだ日を詳しく調べたらキミが生まれた日と一致していた」
シエルは言葉を失う。母が自分のせいで死んでいたかもしれないという事実にショックを受けないわけがない。
そして今日まで生かされていたのは子供を産むため、死ぬために飼われていたということになる。
初めてグラッセの前で悲しみを含んだ涙を流す。今までなら辛い時は自分を奮い立たせる為に笑顔を浮かべていたが、今はそんな余裕などなかった。
それを見てグラッセは迂闊なことを口にしたことを後悔した。だが、今言わなければシエルの後から更に心を傷つけてしまうと思ったのだ。それに……
「解決策が見つからない内は子供は諦めよう。どうしても欲しいなら養子を貰えばいい。陛下には俺から説得する」
「……そうですね。こんなに危ない加護を赤ちゃんに受け継いではいけませんね」
グラッセの提案にシエルは力なく笑う。その顔は無理をしているのが一目瞭然で、グラッセは彼女を強く抱きしめた。
「無理しなくていい。俺の前では泣いてもいいんだ」
グラッセは子供をあやすように優しく頭を撫でる。シエルはその優しさに包まれながら夫の胸に顔を押し付けて泣き出した。
いつも明るくて前向きだった彼女がここまで弱っている姿を見てグラッセの心は痛む。シエルが泣き止み、落ち着くまでずっと抱き締め続けた。
*
それからグラッセはまだ調べることがあると言って国中を飛び回り、シエルは屋敷で本を読んだり、絵を描いたり、魔法の勉強をしたり、お菓子作りを学んだりと何事もなく過ごしていた。
朝から晩までグラッセが留守にしていても、帰ってくると必ずシエルを甘やかすように大切に扱った。
就寝前には沢山話したり、触れ合ったりする時間があるので寂しさはなく、グラッセの体温を感じ、彼の匂いに包まれながら眠りにつくととても安心できた。
子供を作る行為をしなくなっても夫婦仲は良好で二人はこのまま穏やかな日々が続くといいと思っていたが、それは叶わなかった。
「おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
シエルの明るい笑顔を見るとグラッセは疲れが吹き飛ぶ気がして自然と頬を緩ませる。だが、表情はすぐに暗く変わり、彼女の両肩を掴む。
「旦那様?」
「二人だけで話がしたい」
不思議そうに見上げるシエルの目をじっと見据えると、グラッセは真剣な表情で言った。
夫婦の寝室に入り、グラッセはベッドの縁に腰かけてシエルを隣に座るように促すとシエルは大人しく従い、背筋を伸ばした。
「氷の精霊の加護について調べてきた」
「はい、お疲れ様です」
何か調べ物をしていたのは知っていたが、それが氷の精霊の加護に関するものだとは知らなかったシエルは夫をねぎらう。しかし、彼は浮かない表情のままだ。
「何がわかったのですか?」
シエルが訊ねるとグラッセは言いづらそうな表情で一度深呼吸をして覚悟を決めると重い口を開いた。
「氷の精霊の加護を持つ子を産んだ母親は死んでしまう、そうだ」
「え……?」
予想もしていなかった答えにシエルは驚きの声を上げる。
「文献によると、氷の精霊の寵愛を受けた者との間に子を成し、その子供が精霊の加護を受け継ぐ際に母親の魔力と命を奪うらしい」
「そ、んな……まさか」
グラッセの言葉にシエルは動揺を隠しきれずに震える声で否定する。それが本当ならシエルの母が死んだのは病気ではなく、シエルを産んで命を落としたことになる。
「確証は無いが可能性はある。この本を書いたのは前王に仕えている宮廷魔術師だから信憑性は高いだろう。それに……シエルの母上の死んだ日を詳しく調べたらキミが生まれた日と一致していた」
シエルは言葉を失う。母が自分のせいで死んでいたかもしれないという事実にショックを受けないわけがない。
そして今日まで生かされていたのは子供を産むため、死ぬために飼われていたということになる。
初めてグラッセの前で悲しみを含んだ涙を流す。今までなら辛い時は自分を奮い立たせる為に笑顔を浮かべていたが、今はそんな余裕などなかった。
それを見てグラッセは迂闊なことを口にしたことを後悔した。だが、今言わなければシエルの後から更に心を傷つけてしまうと思ったのだ。それに……
「解決策が見つからない内は子供は諦めよう。どうしても欲しいなら養子を貰えばいい。陛下には俺から説得する」
「……そうですね。こんなに危ない加護を赤ちゃんに受け継いではいけませんね」
グラッセの提案にシエルは力なく笑う。その顔は無理をしているのが一目瞭然で、グラッセは彼女を強く抱きしめた。
「無理しなくていい。俺の前では泣いてもいいんだ」
グラッセは子供をあやすように優しく頭を撫でる。シエルはその優しさに包まれながら夫の胸に顔を押し付けて泣き出した。
いつも明るくて前向きだった彼女がここまで弱っている姿を見てグラッセの心は痛む。シエルが泣き止み、落ち着くまでずっと抱き締め続けた。
*
それからグラッセはまだ調べることがあると言って国中を飛び回り、シエルは屋敷で本を読んだり、絵を描いたり、魔法の勉強をしたり、お菓子作りを学んだりと何事もなく過ごしていた。
朝から晩までグラッセが留守にしていても、帰ってくると必ずシエルを甘やかすように大切に扱った。
就寝前には沢山話したり、触れ合ったりする時間があるので寂しさはなく、グラッセの体温を感じ、彼の匂いに包まれながら眠りにつくととても安心できた。
子供を作る行為をしなくなっても夫婦仲は良好で二人はこのまま穏やかな日々が続くといいと思っていたが、それは叶わなかった。
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