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外してやる
しおりを挟む「ヴィクトル、なぜここに?もう仕事は終わったのか?」
シオン様の声が静かに響くとヴィクトル様の視線は私とシオン様が繋いだ手に注がれる。その視線は鋭く、どこか冷ややかで、まるで何かを見透かしているかのようだ。
「はい……早く終わったので陛下の元へ向かったのですが執務室にいらっしゃらなかったので探しに来ました」
ヴィクトル様が短く答えるとシオン様は一瞬だけ視線を合わせ、そして穏やかな声で言う。
「そうか」
シオン様は繋いだ手を離すと私の方を向く。そして私の頭をぽんぽんと優しく撫でる。それはまるで子供の頭を撫でるような仕草で久しぶりの感覚に私は少し照れながらも困惑してしまった。
「すまないが、ユミルをリディアの部屋まで送ってくれないか?」
シオン様の頼みを受けて、すぐに護衛の一人が頷いた。シオン様は最後にもう一度、私の頭を軽く撫でてから、私をその護衛に預け、行ってしまった。
その後、私はしばらくその場に立ち尽くしていたが、ふと感じた視線に我に返る。ヴィクトル様が私を見つめている。
ヴィクトル様の顔は硬く、暗い影が浮かんでいた。胸の奥で何かが震え、言葉が出ない。
皇帝陛下に馴れ馴れしく接してしまったことで不敬だと後で厳しく何かを言われる予感がしていた。
◆
リディア姫の部屋に戻ると目を覚ましたリディア姫は少し怒った様子だったが、私が謝り続けるうちにようやく落ち着きを取り戻してくれた。
彼女と一緒に過ごす時間は私にとって非常に貴重で楽しいものだ。リディア姫が心から笑ってくれるとこの仕事を受けて良かったと思う。
夕方になるとヴィクトル様が部屋に入ってきた。彼の表情は依然として険しく、私たちの会話にあまりにも冷たい空気が漂ってくるのだ。
やっぱりリディア姫への接し方に威圧感があって、なんだかこちらまで悲しく感じた。
ヴィクトル様も他の貴族や使用人達と同じでリディア姫のことを悪く思っているのではないかと思うとリディア姫が寂しくならないように遊び相手はできるだけ引き受けようと改めて決心をする。
最後に食事に誘われたがヴィクトル様が丁重に断った。本当は私はリディア姫ともう少し過ごしたかったけど、貞操帯を外すために早く屋敷に戻りたいという思いの方が強かった。
◆
馬車の中、私はヴィクトル様と二人きり。空気はどこか重く、心の中で何度も言い訳を考えるが、結局口には出せない。
その間、ヴィクトル様はずっと黙ったままで、腕を組んで私を見つめている。その表情から彼がまだ不機嫌であることがわかる。
「陛下と何をしていたんだ?」
ようやく口を開いたヴィクトル様の声は予想通りの冷たさを帯びていた。やはりシオン様に失礼を働いたのではないのかとヴィクトル様の怒りを買ってしまったようだ。
「その……庭を案内していただいて、リディア姫やミーティアお姉様の話をしていました」
私は嘘をつかず、真実を述べるがヴィクトル様の表情はさらに険しくなる。
「何故、陛下の手を取っていた?」
その質問に私は一瞬言葉を詰まらせた。どうしても言い訳がうまくできず、焦る気持ちが心の中で渦巻く。
「……あれは、その、私が転んでしまうから……」
「お前はその年にもなって転ぶのか?」
「…………」
ヴィクトル様の言葉は冷徹で私はうつむくしかなかった。何故、自分の言動をもっと慎重にしなかったのかと後悔の念が湧いてくる。皇帝陛下に逆らうのが怖くて断れなかったと言えばよかった。
「お前は俺の何だ?」
その言葉は静かに響き、私の胸に突き刺さる。
「……妻です」
私は小さな声で答え、唇を噛み締めた。誰にも求められない自分はヴィクトル様の気分一つで人生が全てが決まる。
そのことを改めて感じると、余計に不安が募る。言い訳をしたところでヴィクトル様の怒りを買うだけだ。選択を間違えれば私の未来は恐ろしいほどに危うくなる。
◆
レーゲンブルク邸に帰ると相変わらず寂しい雰囲気が漂っていた。明るいお城で過ごした後ではこの静かな屋敷の寂しさが余計に感じられる。
私はこの静かな空間で自分を取り戻すことができる。シオン様やリディア姫のことを思い出しながらもヴィクトル様との関係をどう修復するかに悩む時間に戻るのだ。
自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いているとヴィクトル様が強引に私を引きずるようにして腕を引っ張り、浴室方向へに向かっている。
「な、なんですか?」
「貞操帯を外してやる」
「は……はい?」
意味を理解できないでいるうちに脱衣所に入れられ、服を脱げと命令をされる。
「早くしろ」
「す、すみませ……あっ……」
私が手こずっているとヴィクトル様が苛立った様子で無理矢理ドレスを脱がしてしまった。無理に引っ張ったから金具が外れてしまったのか私の足元に金属の金具が落ちる音がする。
そして貞操帯以外の衣服も全部取られてしまい、自分を抱きしめるように両手で薄い胸を隠してその場に立ち尽くした。
裸を見られるのは初めてじゃない。でもこうしてヴィクトル様に見られていると思うと妙に恥ずかしい。ヴィクトル様以外の男の人ならどう感じるんだろう。
ヴィクトル様が私の足元に膝をついて、貞操帯の鍵穴へ手を伸ばす。緊張をしながらその様子を見ていたら鍵を入れる前に私の顔を見る。青色の目がしっかりと私を捉えているのがわかるとすごく恥ずかしくなった。
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