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食事の時はリアンは調理を進んで手伝い、スレッドの家族とテーブルを囲んで普通に食べた後は普通に食器を洗う。その後も普通に風呂に入って普通にスレッドと同じベッドで寝た。
「このベッド狭くなっちゃったね」
スレッドの成長に合わせて何度か新調をしたものの、やはり二人一緒に眠ると窮屈である。
「でっかい家買ったらでっかいベッド買ってやるよ」
スレッドはそう言ってリアンの頭を撫でるが、リアンはその手をどけるように手で払った。
「そのことなんだけどね。昔、お城みたいに大きい家に住みたいっていったよね」
「ん?ああ」
リアンの言葉にスレッドは首を傾げる。
「大きい家は掃除とか管理が大変みたいだからやっぱり普通の家がいい」
「いいけどよ……」
「それとね。山のてっぺんや湖の近くがいいって言ったけどやっぱり村の中がいいな。お店が遠いと不便だし」
幼い頃に夢見た大きな家や山の上に住むというのは現実的に考えると、とても難しい話である。平凡な幸せが一番だと彼女は思った。それにスレッドと一緒にいられるのであればどんな家でもいいのだ。
そんなことを考えながら彼に寄り添ってリアンは眠りについた。
◆
スレッドがリアンの家の農作業の手伝いのために家を出ると羊飼いのコットンがスレッドの家にやってきた。彼の手には籠が握られている。その中には新鮮な羊肉が入っていた。
「やあ、スレッド。リアンを最近見かけないけど病気かい?」
「監禁してんだよ」
「え、本当に監禁しているんだ」
コットンが意外そうに目を見開くとスレッドの部屋のある二階の窓の方を見ればちょうど窓が開かれる。
「あ、コットン久しぶり」
そこからひょこっと顔を出したのはリアン本人だ。監禁されているわりには普通に元気そうに手を振っている。
「リアンが僕に話しかけてくるよ?」
「そりゃ話すだろ」
恐る恐るコットンがスレッドを見るが、スレッドは何も考えてなさそうな顔で平然としていた。
「他の男と会話をしたら嫉妬するだろ?だから監禁したんでしょ?」
「会話ぐらいなら別にいいだろ。おしゃべりなリアンがつまらないだろうが」
「ほら、他人にリアンの姿を見せたくないとか……」
「何いってんだよ。花嫁姿や産まれたガキを村中に見せなきゃいけないだろ」
「君たち、結婚する気なんだ」
「ば、馬鹿野郎!まだ先だよ!」
ニヤニヤとするコットンにスレッドは顔を赤くするとそっぽを向いてしまう。
「へぇー……あ、でも僕は諦めないからね。リアンをお嫁さんにするのはこの僕さ。覚えておいてよ」
「ふん」
「じゃあ、またね」
そう言ってコットンは羊肉をスレッドに渡すと自分の家に帰って行くと、スレッドは受け取った羊肉を持って家に一旦戻ることにした。
リアンは監禁されながらスレッドの家のパン屋の手伝いをしながら毎日を過ごしている。リアンの両親がパンを買うついでにたまに顔を出すので特に寂しい思いはしていなかった。
「おばあちゃん、スレッドは?」
リアンがパンを陳列棚に並べ終え、スレッドの祖母の所に行くと彼女は店の奥の方で掃除をしていた。
「今日は女の子達と楽しくお茶でもしているんじゃないのかね?」
「そっか」
リアンは平然とした様子で答えるとスレッドの母の元へと行き、生地を作る手伝いに向かった。
その頃スレッドは村の女達が集まるお茶会にパンを届けに行っていた。ほとんどがスレッドの祖母ぐらいの『女の子』である。
「あら、スレッド。ありがとうねぇ」
「ねぇ、スレッド、リアンちゃんを最近見かけないんだけど、どうしたの?」
「あいつは監禁してんだよ」
「監禁?」
スレッドの返答に女達は首を傾げる。
「よくわからないけど最近の若い子の流行りなのかい?」
「ああ、リアンの部屋にそんな本がめっちゃあったからな」
リアンとスレッドはお互いの部屋にはいつも許可無く出入りをしているので相手の好みや興味に関しては熟知していた。今頃リアンもスレッドの部屋で適当に本を読んでいるだろう。
スレッドは持ってきたパンと焼き菓子の入った籠を代金と引き換えに手渡すとその場を去った。
◆
「やあ、スレッド……とリアン、なんで君は外にいるんだい?」
夕方、空が夕焼けに染まる頃にコットンが道を歩いていると正面から仲良く横に並んで歩いてきた二人を見て目を丸くさせた。
「なんでって……これからリアンの家で飯を食いに行くんだ」
「監禁はどうしたの?なんで普通に外に出てるの?あれだけ監禁監禁言ってたくせに」
「リアンがたまにおばさんの手料理食べたいって言うから」
スレッドの返事にコットンは信じられないという表情をするとスレッドは面倒くさそうな表情でため息をついた。
「じゃ、じゃあせめてこれを付けなよ!ちょうど牧羊犬用に買った首輪があるから!」
そう言ってコットンは革製の首輪とリードをスレッドの手に握らせるとスレッドは自分の首に首輪を付けてリアンにはリードを持たせてやる。
「なんでスレッドが首輪を付けるのさ!!!」
「馬鹿野郎!リアンにこんなもん付けたら危ねぇだろ!」
スレッドは真剣な表情で答えた。その答えを聞いてコットンは開いた口が塞がらない。そして、彼は思った。スレッドには女性が求めるロマンスを期待できないと。
「このベッド狭くなっちゃったね」
スレッドの成長に合わせて何度か新調をしたものの、やはり二人一緒に眠ると窮屈である。
「でっかい家買ったらでっかいベッド買ってやるよ」
スレッドはそう言ってリアンの頭を撫でるが、リアンはその手をどけるように手で払った。
「そのことなんだけどね。昔、お城みたいに大きい家に住みたいっていったよね」
「ん?ああ」
リアンの言葉にスレッドは首を傾げる。
「大きい家は掃除とか管理が大変みたいだからやっぱり普通の家がいい」
「いいけどよ……」
「それとね。山のてっぺんや湖の近くがいいって言ったけどやっぱり村の中がいいな。お店が遠いと不便だし」
幼い頃に夢見た大きな家や山の上に住むというのは現実的に考えると、とても難しい話である。平凡な幸せが一番だと彼女は思った。それにスレッドと一緒にいられるのであればどんな家でもいいのだ。
そんなことを考えながら彼に寄り添ってリアンは眠りについた。
◆
スレッドがリアンの家の農作業の手伝いのために家を出ると羊飼いのコットンがスレッドの家にやってきた。彼の手には籠が握られている。その中には新鮮な羊肉が入っていた。
「やあ、スレッド。リアンを最近見かけないけど病気かい?」
「監禁してんだよ」
「え、本当に監禁しているんだ」
コットンが意外そうに目を見開くとスレッドの部屋のある二階の窓の方を見ればちょうど窓が開かれる。
「あ、コットン久しぶり」
そこからひょこっと顔を出したのはリアン本人だ。監禁されているわりには普通に元気そうに手を振っている。
「リアンが僕に話しかけてくるよ?」
「そりゃ話すだろ」
恐る恐るコットンがスレッドを見るが、スレッドは何も考えてなさそうな顔で平然としていた。
「他の男と会話をしたら嫉妬するだろ?だから監禁したんでしょ?」
「会話ぐらいなら別にいいだろ。おしゃべりなリアンがつまらないだろうが」
「ほら、他人にリアンの姿を見せたくないとか……」
「何いってんだよ。花嫁姿や産まれたガキを村中に見せなきゃいけないだろ」
「君たち、結婚する気なんだ」
「ば、馬鹿野郎!まだ先だよ!」
ニヤニヤとするコットンにスレッドは顔を赤くするとそっぽを向いてしまう。
「へぇー……あ、でも僕は諦めないからね。リアンをお嫁さんにするのはこの僕さ。覚えておいてよ」
「ふん」
「じゃあ、またね」
そう言ってコットンは羊肉をスレッドに渡すと自分の家に帰って行くと、スレッドは受け取った羊肉を持って家に一旦戻ることにした。
リアンは監禁されながらスレッドの家のパン屋の手伝いをしながら毎日を過ごしている。リアンの両親がパンを買うついでにたまに顔を出すので特に寂しい思いはしていなかった。
「おばあちゃん、スレッドは?」
リアンがパンを陳列棚に並べ終え、スレッドの祖母の所に行くと彼女は店の奥の方で掃除をしていた。
「今日は女の子達と楽しくお茶でもしているんじゃないのかね?」
「そっか」
リアンは平然とした様子で答えるとスレッドの母の元へと行き、生地を作る手伝いに向かった。
その頃スレッドは村の女達が集まるお茶会にパンを届けに行っていた。ほとんどがスレッドの祖母ぐらいの『女の子』である。
「あら、スレッド。ありがとうねぇ」
「ねぇ、スレッド、リアンちゃんを最近見かけないんだけど、どうしたの?」
「あいつは監禁してんだよ」
「監禁?」
スレッドの返答に女達は首を傾げる。
「よくわからないけど最近の若い子の流行りなのかい?」
「ああ、リアンの部屋にそんな本がめっちゃあったからな」
リアンとスレッドはお互いの部屋にはいつも許可無く出入りをしているので相手の好みや興味に関しては熟知していた。今頃リアンもスレッドの部屋で適当に本を読んでいるだろう。
スレッドは持ってきたパンと焼き菓子の入った籠を代金と引き換えに手渡すとその場を去った。
◆
「やあ、スレッド……とリアン、なんで君は外にいるんだい?」
夕方、空が夕焼けに染まる頃にコットンが道を歩いていると正面から仲良く横に並んで歩いてきた二人を見て目を丸くさせた。
「なんでって……これからリアンの家で飯を食いに行くんだ」
「監禁はどうしたの?なんで普通に外に出てるの?あれだけ監禁監禁言ってたくせに」
「リアンがたまにおばさんの手料理食べたいって言うから」
スレッドの返事にコットンは信じられないという表情をするとスレッドは面倒くさそうな表情でため息をついた。
「じゃ、じゃあせめてこれを付けなよ!ちょうど牧羊犬用に買った首輪があるから!」
そう言ってコットンは革製の首輪とリードをスレッドの手に握らせるとスレッドは自分の首に首輪を付けてリアンにはリードを持たせてやる。
「なんでスレッドが首輪を付けるのさ!!!」
「馬鹿野郎!リアンにこんなもん付けたら危ねぇだろ!」
スレッドは真剣な表情で答えた。その答えを聞いてコットンは開いた口が塞がらない。そして、彼は思った。スレッドには女性が求めるロマンスを期待できないと。
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