えと…婚約破棄？承りました。妹とのご婚約誠におめでとうございます。お二人が幸せになられますこと、心よりお祈りいたしております

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「ああ、ナディア、大丈夫かい？
アイザック殿、いくら公爵令息とは言え、人の婚約者に対して失礼ではありませんか。謝罪を要求します！」

………なんと、こんなに失礼な人もおりません。
ザックは失礼な事は言っておりません。どちらかというと失礼を働いている妹を寛容に諫めているだけ。それなのに伯爵令息が公爵令息に謝罪を要求するなどありえないことなのです。

「謝罪ね。
まずスティーブ殿、その女性はあなたを婚約者ではないと言っていましたよ。どうしてそのような他人の問題にあなたが口を挟むのですか。他人のことに口を出し、身分が上の物への謝罪要求の方がよっぽど失礼でしょう。まずはあなた方が謝罪すべきではありませんか」

この言葉に周囲はくすくすと笑い始めます。
目の前で婚約者ではないと言われ、次の言葉で私の婚約者にと言う。なんとも恥ずかしいですよね。本来ご自身でナディアに注意すべきではないかと思うのですが、そうはなさらないのですね。

「っ！！……」

でもやはり思うところはあったのか、なにも言い返せないようです。
どうしてこのような場で恥の上塗りをしようと思うのでしょうか。

「アイザック殿、私の身内が絡むこと。このような場でこのようなことになってしまったこと謝罪させてもらう。トレント公爵も申し訳なかった」

お祖父様が出てきてこのように頭を下げられました。
私も叔父様たちも同じようにザックと公爵様に頭を下げます。

「ルーク殿、あなたが謝る必要性は感じないが、その謝罪はしかと受けました。どうか皆様も頭を上げてください」

公爵様がお祖父様の名を呼び、謝罪を受けてくださいました。私とザックが仲がいいように、家族も頻繁に交流を持っていたので、割と仲がいい二人。親子ほどに離れているのに、よく仕事の話もされています。

お祖父様が頭を上げるのと同じく私たちも頭を上げます。
ふと見ますが、当たり前のように私の家族は頭を下げていませんよね。

「トレント公爵、ありがとうございます。
本来はここで一度話を切り上げ、パーティーを開始してもらった方がいいのだろうが、私からもこの場を借りて報告をさせてほしい。ご出席の皆様には証人になって頂きたい。

まず私の孫であるマリア・スターンは一月前にリアム・スターン家の養子となったことを報告いたす。そして、今回の一方的なマリアの婚約破棄。我が家はレイズ伯爵家に慰謝料を請求する。
また、我が愚息であるトーマス・スターンを廃籍し、リアム・スターンを次期伯爵家当主に任命する。以上が私からの報告になります。皆様どうぞこれからもスターン伯爵家との末長いお付き合いをよろしくお願いいたします。」

お祖父様がそう言って頭を下げるとその場から拍手が起こりました。皆様に認めてもらえた承認の拍手です。