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2.婚約破棄

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「ナターシャ、今この時をもってそなたと私トレアール国第1王子ダリアン・レジアールの婚約破棄を申し渡す。


そしてナターシャの双子の妹、シャーロットとダリアン・レジアールの婚約をここに発表する」

名前を呼ばれたナターシャ・シルビアノ公爵令嬢は声も上げず、ただ宣言をした第一王子の様子を見ていただけだった。そしてその様子とは対照的に、もう1人名前を呼ばれたシャーロット・シルビアノ公爵令嬢はその存在を誇示するように第一王子の腕に自身の腕を絡め、立っていた。
王子の横に見えるその容姿は、オレンジのふわふわの髪の毛が光で輝き、少し小さめの身長のせいで自然と上目遣いになるその姿は庇護欲をそそる。彼女の様子に心を奪われるものも少なくないだろう。

「ナターシャ、私が名を呼んでやったというのに、返事も返さないとはやはりそなたは無礼な令嬢だな。返事をいたせ!」

なにも反応がないことが気に障ったのか、パーティー会場にはダリアン王子の大きな声が響く。


「ダリアン王子殿下、大変失礼いたしました。発言の許可をいただいておりませんので控えておりました。婚約破棄とのこと承知いたしました。
王子殿下の御心のままに」

返事をしろと呼ばれて身を低くくし返事をするナターシャ。だが、王子との婚約破棄など気にした様子も見せず淡々とそう言い放ち、ナターシャはまた頭を下げる。

双子のはずなのに、妹とは違う金色の髪の毛はきっと磨けば綺麗なのだろう。
しかし、その髪の毛は手入れされていないことがわかるほどに、痛んでしまっている。そしてその身体も健康な女性よりも明らかにやせて見える。

「はっ!理由も聞かずに了承するのか!
そのようなしおらしい態度をこの場ですれば見逃してもらえるとでも思っているのか!
しかしそのような事で水に流せるような内容ではない!!

そなたは妖精に愛されていたことをいいことに、他人を思いやる心を持たず、他人を見下し、他人を貶める行為を行った。それを見た妖精は心を痛め、そなたから離れていった。

特に妖精が大事に思っている妹のことをいじめていることに心を痛めた妖精はそれからは誰の前にも姿を現さなくなってしまった。大事に想っているシャーロットの前にさえだ!

この国は妖精の加護を受けている。そのため、自然災害に見舞われることなく、作物も豊富に取れるのだ!!それなのにそなたの行いのせいで、そなた一人の行いのせいで妖精が消えてしまったのだ。

これは国の規律を乱す行為である!!よってそなたとの婚約を破棄するのだ!わかったな!!」

ダリアン王子はナターシャに人差し指を指しながら声高々にそう宣言した。
ナターシャは頭を低くした体勢のまま動こうともしない。
泣いて謝るか、許しを請うのを予想していた。しかし結果はまるでどうでもいいと言わんばかりの態度を見て王子は顔をゆがめていく。
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