選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

24.再会

1月の中では心躍る再会もあった。
母ととても親しくしていたという女性が訪ねてきてくれたのだ。ルー伯父様が連絡したところ、すぐに会いにきてくれたそうだ。
マリアミ・ダスカート様、侯爵夫人とそのご子息様。たった1か月しか経っていないのに、もう何度も会いに来てくれている。日が空いても4日に一度、短ければ2日に一度は暇を作って会いに来てくれているのだ。

マリアミ様は母と名前が似ていることがきっかけで仲良くなり、それからはずっと仲良くしてくれていたらしい。
そういえば、母がアミと言っていたのを思い出した。あれがマリアミ様だなんて思わなかったけれど、母が生きていた時にもこうして会いに来てくれていたのだ。

アミ様は母の思い出をいろいろと話して聞かせてくれた。
刺繡はあまり得意ではなかったけれど、お菓子作りはとても上手だったこと。よく一人で、変装とは思えない恰好をして平民街へ出かけて行っていたこと。
匿名と称して教会に寄付をし、望まれない子と呼ばれる捨てられた子たちを支援していること。
そして、そんな子たちのためにも安価で手に入れやすい薬を普及させたいと思っていたこと。

私の知らなかった母のことを教えてもらえることがとても嬉しかった。

アミ様は母に共感して、ともにそんな子たちへの支援団体を立ち上げ、今でも支援を続けているのだという。
私もいつかその活動に参加したい。母が始めたことを私も引き継いでいきたい。

そんなアミ様と一緒に会いに来てくれるのが、エミリオ・ダスカート様。私の4つ上のとても綺麗な顔立ちの青色の瞳が印象的な男性。

私の生い立ちを聞いたのだろうか。いつも花やお菓子をプレゼントしてくれるとても優しい方。
でもプレゼントを頂くたびに以前の婚約者の行動が頭に浮かび、少しモヤッとした気持ちになってしまう。

こんなに綺麗でこんなに優しい男性でも、優しい言葉をかけてくれていても、裏では別な女性と繋がっていたりするのだろうか。
いや、こんなに綺麗でこんなに優しいからこそ、女性からの誘いは絶えないだろう。

そんなことすら知らなかったから私はグレン様に心を預けてしまったのだ。

男性とはそういうものだと知っていれば……

男性とは程よい距離感を忘れてはいけない。
それを知らなかった私がいけないの………