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しおりを挟む放課後、今日はバレーの練習試合があるらしくHRが終わったらすぐに美穂は部活に行った。
1人で1組に行かなきゃいけない。
そう。いつもの通り教科書は返ってきていない。
早く1組に行かなきゃ直哉も部活に行くだろう。
数学の課題も出ているから、教科書がないのはつらい。
重い体を引きずりながら1組に向かう。
1組の前に着くと直哉が座って話している姿が目に入る。直哉の隣にいるのは付き合ったばかりの由美さん。
心臓が鷲掴みにされてるみたいに痛い。ギリギリと締め付けないで。いたいよ…
課題は教科書無しでどうにかやろうと諦めて6組に戻ろうと振り返ると岸野くんが目の前にいた。
「実夏ちゃん、どうしたの?」
笑顔で声をかけてくれる。
「あっ、、、えっと、直哉に教科書を貸してたから取りに来たつもりだったんだけど…」
「あぁ!直哉呼ぼうか?」
「いえ!大丈夫です!」
直哉に会いに来た私が直哉を呼ばずに帰ろうとするのを見て不思議そうな顔で教室の方をみる。
そして納得したようにまた話しかけてきた。
「由美ちゃんと話してるんだ?
そういえばあの2人付き合ったらしいね」
「みたいですね!由美さん綺麗なのにもったいないですよね。はははっ」
自分が言ってることの意味がわからない。早くこの場を離れたかった。
「まぁ、由美ちゃん綺麗だよね。でも実夏ちゃんも綺麗だよ?」
なんて私の目を見ながら笑顔で言ってきた。
は?なに言ってるの?なんのフォローなの?
そんな言葉望んでもないけど…
「いや、そんなことはないです!」
さっきまで必死で作っていた作り笑いをなくして、普通に否定してしまった。
「そう?実夏ちゃん可愛いよ?」
「いやいやいや!私そう言うお世辞は対処がわからないのでやめてください…」
直哉や悠馬のおかげで「ブス」とか「胸が小さい」とかの悪口はさらっと流せるほど免疫がついていた。
でも私の周りにこういうことをさらっと言うタイプはいない。私の苦手人種だ!!
だから自分でもやめてください言いながら後半は顔が赤くなっていってるのがわかった。
照れているわけではない。本心だなんて一つも思ってないけど、こういうのはどうしていいかわかんない。
いやぁ、こんなことさらっと言えちゃうなんて、岸野くんってそりゃもてるわ!!
「お世辞じゃないよ?」
さらに私を見ながら続ける岸野くん。
やばい。逃げたい…
もうなんて返していいかもわからず赤くなりながら下を向いて「ありがとうございます」と呟いた。
「あはは。実夏ちゃん可愛い!!」
上からこんな言葉が聞こえたのと同時くらいに別の声が聞こえた。
「実夏!」
反射的に声のした方を振り向くと由美さんの隣で座っている直哉だった。
私と目があった直哉は机の中をゴソゴソして、数学の教科書を持って私たちの方に歩いてきた。
ふと由美さんを見ると不思議そうにこちらを見つめていた。
「実夏、数学の教科書でしょ?はい」
「あっ、ありがとう」
さっきまでは避けて帰ろうとしてた直哉が今は救世主に思えた。
直哉が何か言いたそうな顔をしていたが、やっと訪れた帰れそうなタイミング!
「じゃあね!!」
そう直哉に言って、岸野くんにペコッと頭を下げて、走って自分の教室に帰った。
二度と岸野くんと話したくない!!!
あんなことがあった後、教室で思うように課題は捗らず、苦手な数学を家に持ち帰ってしまった。
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