上 下
15 / 55

14

しおりを挟む
 

放課後、今日はバレーの練習試合があるらしくHRが終わったらすぐに美穂は部活に行った。
1人で1組に行かなきゃいけない。

そう。いつもの通り教科書は返ってきていない。
早く1組に行かなきゃ直哉も部活に行くだろう。

数学の課題も出ているから、教科書がないのはつらい。
重い体を引きずりながら1組に向かう。

1組の前に着くと直哉が座って話している姿が目に入る。直哉の隣にいるのは付き合ったばかりの由美さん。

心臓が鷲掴みにされてるみたいに痛い。ギリギリと締め付けないで。いたいよ…

課題は教科書無しでどうにかやろうと諦めて6組に戻ろうと振り返ると岸野くんが目の前にいた。

「実夏ちゃん、どうしたの?」

笑顔で声をかけてくれる。

「あっ、、、えっと、直哉に教科書を貸してたから取りに来たつもりだったんだけど…」

「あぁ!直哉呼ぼうか?」

「いえ!大丈夫です!」

直哉に会いに来た私が直哉を呼ばずに帰ろうとするのを見て不思議そうな顔で教室の方をみる。
そして納得したようにまた話しかけてきた。

「由美ちゃんと話してるんだ?
そういえばあの2人付き合ったらしいね」

「みたいですね!由美さん綺麗なのにもったいないですよね。はははっ」

自分が言ってることの意味がわからない。早くこの場を離れたかった。

「まぁ、由美ちゃん綺麗だよね。でも実夏ちゃんも綺麗だよ?」

なんて私の目を見ながら笑顔で言ってきた。
は?なに言ってるの?なんのフォローなの?
そんな言葉望んでもないけど…

「いや、そんなことはないです!」

さっきまで必死で作っていた作り笑いをなくして、普通に否定してしまった。

「そう?実夏ちゃん可愛いよ?」

「いやいやいや!私そう言うお世辞は対処がわからないのでやめてください…」

直哉や悠馬のおかげで「ブス」とか「胸が小さい」とかの悪口はさらっと流せるほど免疫がついていた。

でも私の周りにこういうことをさらっと言うタイプはいない。私の苦手人種だ!!

だから自分でもやめてください言いながら後半は顔が赤くなっていってるのがわかった。
照れているわけではない。本心だなんて一つも思ってないけど、こういうのはどうしていいかわかんない。

いやぁ、こんなことさらっと言えちゃうなんて、岸野くんってそりゃもてるわ!!

「お世辞じゃないよ?」

さらに私を見ながら続ける岸野くん。
やばい。逃げたい…

もうなんて返していいかもわからず赤くなりながら下を向いて「ありがとうございます」と呟いた。

「あはは。実夏ちゃん可愛い!!」

上からこんな言葉が聞こえたのと同時くらいに別の声が聞こえた。

「実夏!」

反射的に声のした方を振り向くと由美さんの隣で座っている直哉だった。
私と目があった直哉は机の中をゴソゴソして、数学の教科書を持って私たちの方に歩いてきた。
ふと由美さんを見ると不思議そうにこちらを見つめていた。

「実夏、数学の教科書でしょ?はい」

「あっ、ありがとう」

さっきまでは避けて帰ろうとしてた直哉が今は救世主に思えた。
直哉が何か言いたそうな顔をしていたが、やっと訪れた帰れそうなタイミング!

「じゃあね!!」

そう直哉に言って、岸野くんにペコッと頭を下げて、走って自分の教室に帰った。
二度と岸野くんと話したくない!!!


あんなことがあった後、教室で思うように課題は捗らず、苦手な数学を家に持ち帰ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【実話】高1の夏休み、海の家のアルバイトはイケメンパラダイスでした☆

Rua*°
恋愛
高校1年の夏休みに、友達の彼氏の紹介で、海の家でアルバイトをすることになった筆者の実話体験談を、当時の日記を見返しながら事細かに綴っています。 高校生活では、『特別進学コースの選抜クラス』で、毎日勉強の日々で、クラスにイケメンもひとりもいない状態。ハイスペックイケメン好きの私は、これではモチベーションを保てなかった。 つまらなすぎる毎日から脱却を図り、部活動ではバスケ部マネージャーになってみたが、意地悪な先輩と反りが合わず、夏休み前に退部することに。 夏休みこそは、楽しく、イケメンに囲まれた、充実した高校生ライフを送ろう!そう誓った筆者は、海の家でバイトをする事に。 そこには女子は私1人。逆ハーレム状態。高校のミスターコンテスト優勝者のイケメンくんや、サーフ雑誌に載ってるイケメンくん、中学時代の憧れの男子と過ごしたひと夏の思い出を綴ります…。 バスケ部時代のお話はコチラ⬇ ◇【実話】高1バスケ部マネ時代、個性的イケメンキャプテンにストーキングされたり集団で囲まれたり色々あったけどやっぱり退部を選択しました◇

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

彼氏の浮気相手が惨めだ

ヘロディア
恋愛
気づかない間に、どうやら彼氏は浮気していたらしい…

夫に離縁が切り出せません

えんどう
恋愛
 初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。  妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?

かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。 主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。 ここでの男女比は狂っている。 そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。 この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。 投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。 必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。 1話約3000文字以上くらいで書いています。 誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。

ロマンティックの欠片もない

水野七緒
恋愛
27歳にして処女の三辺菜穂(みなべ・なほ)は、派遣先で元カレ・緒形雪野(おがた・ゆきの)と再会する。 元カレといっても、彼の気まぐれで高校時代にほんの3ヶ月ほど付き合っただけ──菜穂はそう思っていたが、緒形はそうでもないようで……

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...