上 下
13 / 36

証明

しおりを挟む

「証明?子どもの証明は顔がジョシュエルに似ていることだけでわかるでしょう?この子はとても父親似なの。
それに私たちが愛し合っているという証明が見たいと言うのなら教えてあげるわ。彼の胸の少し上あたりに赤い印があるわよ。この間彼が来た時に私が残したばかりだからまだ消えてないはずよ。
そんなところに堂々とした印があるのに知らないだなんてあなたが愛されていない証拠よ。

ふふっ、ここまで言っても信じられないだなんて、本当に可哀想な人ね。これであなたの逃げ道もなくなったでしょう?」

なんてことでしょう………
そんな決定的な不貞を教えてくれるなんて。
もしこれが本当ならば即座に離婚できますね!

私はダグラスに目で合図して、彼の身体を確認してもらいます。

「やっ、やめろ!!私に触るな!私は侯爵家の者だぞ!!
やめろ!!触るな!!」

そう騒いで服をずらせないようにしますが、見かねて護衛の方がやってきて、ダグラスが服をずらすのを手伝うようにジョシュエルを押さえてくれます。
たった一人に敵わないほど力もないくせに暴れないで欲しいものです。

「ステファニー様、確認できました。
彼女の言うように胸の少し上に赤い痕があります」

ダグラスの少し大きめのその声に周りがざわざわと騒ぎます。
「なんてこと…」「これは間違いなく不貞行為ね…」
そんな声が聞こえてきます。

でもリリアンは勝ち誇った微笑みのままです。
彼女は本当にこの国の人なのでしょうか。

もしかして不貞取締法を知らないのでしょうか……

そんなリリアンを尻目にジョシュエルは膝から崩れ落ちました。

「ステファニー、違うんだ……彼女とは一瞬の気の迷いで。5年以上も通じていたなんて嘘だ……
この間一晩だけの関係なんだ!頼む、信じてくれ…」

地面に座り込んだジョシュエルが諦め悪くそんな事をいってきます。

なんて男らしくないのかしら……こんなにも証拠が上がっているのにまだ悪あがきするだなんて。

「なっ!ジョシュ!どういうことよ!私を裏切る気?侯爵夫人にしてやるっていつも言っていたじゃない!」

リリアンが勝ち誇った笑みを崩し、ジョシュエルに向かってそういいますが、そんな痴話げんかは後にしてくださいまし。

「ジョシュエル、あなたが彼女とは一晩だけの関係だと言うのなら私がそれを信じられるように口を開かないで頂けますか?

すみません、そこの小さなレディ。あなたのお父様を教えてくださいますか?」

私はリンダに向かってできるだけ優しく問いかけます。
きっと父と母がこんな公の場でなにか言い合っているのを見ていてきっと気持ちのいいものではないでしょう。
だから早く終わらせましょう。

私の問いかけにおずおずと私を見つめるリンダ。
そして……

「おとうしゃま?おとうしゃまはジョシュエル。
ジョシュエル・トリアーノっていうのよ。カッコいいおなまえでしょ?」

先日会ったときと同じように父親の名前を紹介してくれました。
でも彼女のその一言でまた周りがざわざわと騒ぎます。先ほどよりもざわめきは大きくなるばかり。
こんな可愛い娘の前で地面に座り込んでいるだなんて父親失格ですね。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

(完)実の妹が私を嵌めようとするので義理の弟と仕返しをしてみます

青空一夏
ファンタジー
題名そのままの内容です。コメディです(多分)

(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした

青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。 この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。 私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。 そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが…… 勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。 ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後

オレンジ方解石
ファンタジー
 異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。  ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。  

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

処理中です...