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粗悪品

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「ん?どうして私の前にだけ2つ皿があるんだ?」

お父様が不思議そうにその2つのお皿を眺めます。

「一つはね、今日お茶会で私が頂いたものなの。もう一つはシルヴィちゃんが作ったものよ。私たちは先に頂いちゃったけど、あなたにもぜひ召し上がっていただきたくてね。さぁ、召し上がってみて」

お母様……いたずらしようとするときの顔ですわ……
どうしよう…にやけてしまいそう……

「ほぉ、一つは売り物で一つはシルヴィアが。それはどちらも美味しそうだな。では頂こう」

お父様が先に手を伸ばしたのは私たちの前にもあるもの。お茶味のマカロンですね。

「これはなんだ?初めて食べる味だけど、美味しいな。これはお茶か?お茶なのにコーヒーが進みそうだな」


案外甘党のお父様。お茶味のマカロンは気に入ったようですわね。


「そうね。じゃあ次を食べてみて」


お母様……先にこっちを食べたのが不服でしたのね。

「あ、あぁ。では先にもう一つの皿の方を頂こうか。これは同じお菓子か?」


あぁ、お母様が手を伸ばすお父様を見てにこにこですわ……


「んっ、ん……なんだ、これ……シルヴィア、なんでこんなもの作ったんだ?」


………お父様、気持ちはわかりますが失礼です……

私に!!!


「あら、アルはそちらがシルヴィちゃんが作ったものだと思うの?」

お母様が険しい目でお父様を睨みますが仕方ありません。

あんなものが売られているとはとても思えないのです。

「ん?違うのか?じゃあ誰がこんな粗悪品を売っているんだ?」



粗悪品!?



「ぷっ……も、申し訳…ありません……んんっ、、ふふふふっ!!」

「シルヴィちゃん、笑い事じゃないのよ。でもアルの『粗悪品』はうまいわね。これは今日のお茶会で出されたお菓子なんだけどね。もうまずくってみんなお茶が進まないの。なんでもステジア男爵が御商売を始められたらしくてね。箱に入れて売り込みにいらしたそうなの。その見た目が今までにないもので、とっても美味しいって言うから買ったらしいんだけど、食べてみたらこれよ。ひどいでしょう。
でもきっとお店でも出せばその見た目に買う人はいるんじゃないかしら。
味の評価が回るまでは売れてしまいそうで恐いわよね」



私は『粗悪品』がツボに入って笑っているのにお母様は真剣にお話されています。

でも食べて粗悪品って。お菓子にそんな評価ある?ふふふっ

「知らずにこれを買ってきて、家で食べるとなると恐ろしいな…でもじゃあこのシルヴィアの方はなんだ?こんな菓子食べたこともないのにうまいぞ。」

そう言いながらココアの方に手を伸ばしています。
お父様、マカロンって結構甘いのにほんとに甘党ですよね…
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