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しおりを挟む仲睦まじい夫婦として過ごしてきた二人だが、ナティシアを腹に授ってからというもの、彼女はいつも体調が悪くなってしまった。
医者からはしばらくすれば落ち着いてくると言われたが、6か月経っても7か月経っても彼女は辛そうなままだった。食事を持って行くと吐いてしまうだけでなく、公爵が傍に寄っても吐いてしまう。メルティシアの部屋には女性しか入れないようになった。
食事の量も減り、腹は膨れてくるのに彼女の体重はほとんど増えていなかった。
医者からはそういう人も稀にいると言われた。
しかし腹の子は順調に育っているので、食事は食べれるときに食べればいいと。
公爵は妻の事が心配で仕方なかったが、医者に言われた通り彼女に近づかず、遠くから見守りながらようやくナティシアが生まれた。
しかし、メルティシアは妊娠中に食事があまりできなかったことや動けなかったため体力が落ちてしまった事が大きな原因として、産後の肥立ちがとても悪かった。
起き上がることも赤ちゃんを抱くことさえできずにいた。
しかし、看病のおかげか、歩けるようにまで回復してきたのはナティシアが3歳になった時だった。
医者から多少の運動が必要と言われたため、メルティシアは少しずつ邸の中を歩き始めた。公爵はその隣に甲斐甲斐しく寄り添った。
たまには庭を散歩したいというメルティシアの要望に応え、二人で何日も散歩をした。
このまま体調もよくなり、家族で幸せに暮らせるようになると、希望が見えてきた時だった。
少しずつ寒い風が吹くようになり、邸の中でも体調を崩すものが出てきたと思ったら、メルティシアも咳が出始め、熱が上がったのだ。
すぐに医者も呼んだが、未だ十分な食事量がとれていない彼女にとって、ただの風邪でも重症化しかねないと言われた。
それからはまたベッドの上での生活に戻ってしまった。
きっとすぐに庭の散歩ができるようになる、そう思っていた。
しかし……1か月後、メルティシアは永い眠りについてしまったのだ。
公爵は酷く悲しんだ。
妻が死んだという事実が受け入れられないまま数か月が経った時、親戚からナティシアの為にも新しい妻を迎えるように助言された。
メルティシアが亡くなってから公爵はメルティシアによく似たナティシアに会うことを避けた。ナティシアを見ると愛情よりも最愛の妻を亡くしたという現実に押し潰されてしまいそうになるのだ。
ナティシアは母を失ったと同時に父からの愛情も失ってしまったのだ。
そうして迎え入れられたのがグライアンスだった。
公爵はできることならメルティシアと似ている女を娶りたかった。だがそんな女性はいない。
それならば見目が美しいと評判の踊り子ならばいつか彼女に惹かれるのではないかと思い、彼女を娶ったのだ。
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